深夜
どんなことも、深夜にやればロマンがある。そんなことを言った馬鹿がいたらしい。その人はただ深夜に物事を行うのに憧れているだけの、午後11時には就寝する男だ。実際の話、深夜に行ったところでロマンなんかない。深夜特有の、鬱と似た高揚に身を任せてしまい、何も考えていないのがオチである。
韓国の炒め麺を棚から取り出した時に、私はそう思った。
深夜に音楽を聴くとロマンがある。実際はただ音楽に乗りながら何も考えずに変なダンスをするだけだ。深夜に電話するとロマンがある。実際は相手になれるような人は基本的に皆寝ていて、どの人にかけても音信不通か怒りの声が帰ってくるだけだ。深夜に不健康なものを食べるとロマンがある。実際は太るだけだ。
冷静になっているうちならまだ大丈夫だろう。だが私はもう間に合わなかった。リビングルームの照明も消えているこの時間に、韓国の炒め麺を食べようという発想に至る時点で、私の脳はとっくに深夜用のものに切り替えられていた。そもそも深夜に食べるだけで太るのか、もし人間が夜行性だったら苦労するのではないか、と開き直るほどだった。
炒め麺のカップを包装する透明なビニールを、カップの底面につまようじを刺して開けようとする。ビニールに小さな穴が開いて、私はそのとても小さなビニールを人差し指で広げた。その途端に、本当にこれを今食べていいのかと、頭の中の私が私に訴えかけてくる。
判断を鈍らせる。キッチンに置かれたポットの前に立ち尽くしながら、数十秒が経つ。
まぁ…今日はいいか。
私はさっきの棚にそれを戻し、この家で唯一明かりがついている自分の部屋に戻っていった。
どんなことも、深夜にやればロマンがあると言ったのは、結局誰だったか。答えはもちろん、夜更かしに憧れを抱いていた幼い頃の私である。
八回目のリハビリ、悪くない。
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