言霊
ここに一人の占い師がいた。彼女は街でも評判で、言ったことはピタリと当たると有名だった。
大事な物を失くしたと占ってもらえばすぐに見つかり、将来私は何になるかと聞けばそれも彼女の占い通りになる。仕事に恋愛に全ての悩みが彼女に占ってもらえば解決した。
それもそのはず。彼女は占い師ではなく言霊使いだったのだ。だが彼女はそれを知らない。適当に言ったことがたまたま当たっているだけだと思い込んでいたのだ。
適当な性格の彼女は私生活もズボラだ。家に帰れば何もせず、ぐだぐだと酒を飲む日々を送っていた。家事なんかする気にもなれず、ましてや結婚なんてまっぴらごめんだ。
たまに結婚のことを占って欲しいという女性がいたが、それこそ彼女は適当に答え、ひどい時は「一生結婚できませんよ」などと言ったりもした。
そんな彼女もいい歳になり、実家から結婚はまだかと催促される。これまでのらりくらりと誤魔化してきたが、とうとう見合いをさせられることになった。
その日が明日に迫った夜。彼女は溜息をつきながら一人家で飲んでいた。お見合いなんか本当に面倒くさい。なんとかしてドタキャンできないものだろうか。その時彼女はつい本音を口にする。
「あ~あ。いっそ私以外の人類が滅んでくれないかなぁ。そしたら結婚なんてしなくていいのに」
彼女の願いはきっと叶うだろう。
なぜなら明日なれば、結婚したくてもその相手がいないのだから。
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