リコンストラクション <Reconstruction>

東杜寺 鍄彁

第一章 2025年日本連邦共和国・関東州

第一話 ダグラスマッカーサースタジアム「惨劇」

2025年8月15日『日本連邦共和国・関東州東京特別行政区、ダグラスマッカーサースタジアム』


 粉塵と硝煙があたりを包む。銃声と悲鳴、状況通達の声が響く。ノース関東ラインで何回か出くわしたことのある、そのような惨劇が「東京」で、ダグラスマッカーサースタジアムで広がっている。

「少尉、弾はあるか?」

 エエ、勿論「」ならありますよ。なんとかね。

肩を叩いた藍色の礼服の男に、マガジンを手渡そうとした。

 弾帯からマガジンを取ろうとした瞬間————彼岸花が咲いた。藍の男が倒れる。

嗚呼、畜生、これだから海軍はダメなんだ。ノースにもオーバーシーにも行ったことのない、横須賀の合衆国海軍ネーヴィーの番犬どもは、後方勤務温室育ちは、これだから駄目なんだ。

 私は柱から一瞬身を乗り出す。ジャムらないでくれよ。そう願いながら、儀仗銃のM-16を撃つ。藍、灰、緑の迷彩、礼服は避けながら、代わりに私服にAKのテロリストに。

数回撃ったら柱に身を隠す。これを繰り返す。

柱に銃弾がぶつかり、コンクリートのくだける音、そして度々、甲高い飛翔音が聞こえる。

これは柱が壊されるより跳弾が怖いな。などと思いながらチャージングハンドルを引いた。

 すると、「少尉!」と私を呼ぶ声と、防弾盾を持った男、医療セットを持った女、他数名の緑の迷彩を着た陸軍の兵士が飛び込んできた。

 防弾盾を持った兵士と、M-4を持った兵士が応戦する傍ら、医療セットを持った衛生兵は、柱から半身を乗り出した赤く染まった海軍兵士の脈を測り、首を横に振る。

「要人は脱出したか!」

騒音にかき消されないよう、声を張り上げて兵士の一人に聞く。

「大統領と米大使、他文民の要人は脱出しました!国防長官と近衛師団長は負傷!他は既に市ヶ谷に……、指揮にあたってます!全員この場にはいません!」

軍曹がこれも声を張り上げながら報告した。

「了解した、HQから命令はあるか!」

「敵兵を撃破しながら、各自離脱せよと!」

「了解。各員、遮蔽物を使いながら出口を目指すぞ!遮蔽物の無い地点では互いに背後を護り合いながら進め!」

 わずか数名の分隊規模の増援、それが私の命令に従い動き出した、その直後————


前方の安全を確認した上等兵のハンドジェスチャー。防弾盾で遮蔽物と遮蔽物の隙間を埋めようとする一等兵。

 そして————天井に走る閃光。私に覆いかぶさる衛生兵の、WACの背後に見えた、ドームの崩落。

 それが私の見た、ダグラスマッカーサースタジアムの最期だった。

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