女魔王ですが、夢を見せる魔法で威厳を見せたらモブの女の子にガチ惚れされて魔王城まで押しかけられました

畳アンダーレ

第1話

「これで……人類は何もかも全て、あたしに服従するわ」


魔王城にある魔王の私室。その中であたしは得意の魔法を使っていた。

”夢見の魔法”

対象に夢を見せることができる魔法だ。正直現役で魔王をやっているあたしにはちょっと地味かもしれない……というかそれが原因で他の子に弄られることも少なくはなかった。攻撃魔法とかじゃないんだーって。しょうがないじゃない”夢見の魔法”こそがあたしの得意な魔法なんだから。


「人類よ。魔王たるあたしにひれ伏しなさい……!」


今は陽がとっくに沈んだ後の深夜。ほとんどの人は寝ているであろうこの時間は夢を見せる”夢見の魔法”を使うにはピッタリの時間だ。正直に言うとあたしもソコソコ眠くなってきている。今ベッドを見るのはやめておこう、絶対飛び込んでそのままスヤスヤかましたくなる。


「ふぁ……っっ……いくわよ!」


思わず出たあくびを噛み殺して、あたしは床に出た魔法陣に手をかざした。


「夢の中であたしの……魔王の存在を人類に知らしめる。これで人類はすべてあたしにひれ伏して、服従して、全てを捧げるはずよ!」


魔法陣が光った。今頃あたしの姿が全人類の頭に浮かび上がっているだろう。

誰であっても勝つことのできない最強の魔王。

長い髪を手でさっと優雅になびかせる美の魔王。

ペットを躾けるように片腕を前に差し出し、相手を地に伏せて服従を誓わせる絶対的な魔王。


「……決まった! 人類よ。魔王たる我を主と認めて、服従せよっ!!」


魔法陣がさらに光って、その中心から風があたしの服や、観葉植物、カーテン、その他家具もろもろを吹き付ける。

”夢見の魔法”が発動した。これであたしの姿が夢という形で人類に知れ渡った。子供も大人も老人も……全ての人が魔王たるあたしの姿を見ただろう。


「明日からの侵略が楽しみね……ふわぁああ……」


あたしは本格的に出たあくびを皮切りに、魔法陣を手早く雑に消してベッドに倒れこんだ。

明日から、いやもう今日よね。起きたらがんばろ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る