そして出産は何よりもしんどい
霊長類の出産は、他の動物よりも、圧倒的に難産です。もはや宿命。
理由は、残念ながらたくさんある!
①産道が狭い&曲がりくねってる
これは、二足歩行するために、骨盤まわりの筋肉が複雑だから。
胎児は、筋肉と骨の間の隙間をうねうねしてく出てきます。
つまり?
詰まりやすい(笑)
②分娩時の出血量が多い
これは、胎盤の作りのせい。
霊長類は、犬猫や牛馬より、胎児由来の膜と母体由来膜がガッチリくっついてるんです。
膜の内側には、血管がたくさん。それがバリバリ剥がれるもんだから、けっこう出血します。
なんでそんな作りを選んだのか。それは、流産しにくいという利点を優先したから。
母体のダメージには目をつむることにしたんだよね。とほほ……。
③脳が大きい
霊長類は、他の哺乳類に比べて脳(頭)がひときわ大きいです。なので①と合わせて、産道で詰まる確率がアップしちゃう。
しかも! 人間は霊長類の中でも特に脳が大きい。
ほとんどの動物は、産道よりも胎児の頭が小さくできている。
でも人間は違います。ヒトの産道は10センチしかないのに、胎児の頭は14センチもある。
おい、4センチどうするんだよ? というと……
胎児は頭蓋骨を重ね合わせて、頭を10センチに縮めて産道を通る戦法をとりました。
脳を保護するという、大事な頭蓋骨の役目を、一時捨てたわけです。
脳を大きくするために、そこまでするか人間!?
私は子供が産道の途中で止まって、えらいこっちゃになりました。①の罠にはまったわけです。
医者から
「赤ちゃんが斜めに降りてきてますね。赤ちゃんの位置を戻してみましょう!」
と言われたとき、頭をよぎったのは、繁殖学の教科書。
「胎児失位整復って、牛とかでよく見るアレでしょ? 産道に腕や器具を突っ込んで、胎児を回転させるやつ。
え、人間の産道って10センチしかないよ? 先生の手、入らないよ? 無理ムリ! あんぎゃー!!」
やりました……。
先生の手、親指の付け根まで入ったっぽいです。指先で胎児の頭を動かしたみたい。
痛い上に、羊水と血がびちゃびちゃ音をたてて出てくるんだけど!?
3分間隔の陣痛の合間に、整復にトライ。
つまり……
陣痛→整復痛い→陣痛→整復痛い
ずっと痛いじゃん! なんだよコレ!!
一晩陣痛に耐えてからの華々しいフィナーレに、指一本動かせないくらいまで疲労しました。
大変遺憾ながら、誇張ではありません。
霊長類の難産、体感しちゃいました……。
そして整復がんばったけど、子供は出てこず。緊急帝王切開になりました。
ざくっと10センチ腹切り!
うーん、霊長類やるのは大変だわぁ。
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