第9話 義男に異変(麻美視点)

 病院を訪れて三日目、義男の体に異変が起きていたらしい。二日間何も食べなかった義男は、緊急治療室で治療を受けたようだ。


 看護婦が栄養剤を打つ寸前に倒れたようだ。病院側は家族に電話するのを忘れていた。麻美は怒り、


「どうして、すぐに連絡をくれなかったのですか」


「本当に申し訳ございません」


「それで義男は無事なんですか」


「大丈夫です。命には別状はありません」


「そうですか、よかったです」


 自殺未遂のときもそうだったが今回もほっとする。集中治療室から点滴を打たれた状態で義男は戻っていた、


「これは何の点滴ですか」


「栄養剤です」


「ずっと打たないといけないのですか」


「村西さんの食欲次第です。どれくらい食べれるのか、分かりませんし」


「分かりました」


 そのやり取りを聞いてたのか義男は、目の前にあるご飯を食べ始める。点滴を何個もつけられると不便なのだろう。


 おそらく私のために食べているのではない。そう考えると悲しくなる。何でここまですれ違ってしまったのか分からない。 現状はどうしようもないところまで来ている。


 看護婦は、


「今は食べられてようなので外します。食べられなくなった場合は再度つけます」


 とだけいい病室を後にする。麻美は、


「義男、食べれるなら食べておくれよ。自殺未遂といい、集中治療室で治療することといい、私も気が気じゃなかったのよ。あなただって大変でしょう。でも私の身にもなってよ。あなたはいつもそう、人に迷惑ばかりかけて・・・・・」


 麻美はふと怖くなる。この状況において最も言ってはいけないことを言ってしまった。一瞬、頭が真っ白になる。それを聞いた義男は、


「あんたたちのせいでこうなったんだ」


 と聞こえないほどの小さい声で言った。麻美は聞き取れなかったので、


「なんていったの。」

 

 と聞いた。義男は再度は言わなかった。今日交わした唯一の会話となった。麻美は連日の付き添いに疲れたのと、義男に余計なことをいい、状況を一気にぶち壊してしまったので、


「明日も来るからね」


 とだけいって帰っていった。義男は夜飯を食べた後、歯を磨いてすぐ寝たようだ。

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