第一章 : 実験大好き少女とシスコン馬鹿

第2話「妹とのドキドキ同棲生活」

「え?」


 時が止まった。いや、アリアはなんと言った?

 嫌だと。そう言わなかったか。いや、聞き間違いでは無い。明らかにそう言った。そう記憶している。


「おい、何でも言うこと聞くんじゃ無いのか、?」


 それが間違いでは無いと脳内で確認したのち、エルマンノはジト目で小さく呟く。すると、何故か彼女は目を逸らし、頰を僅かに赤らめ口を尖らせる。


「...その、、それはっ、嫌なの、、だって、」

「...はぁ、分かった。じゃあ、とりあえずよろしくな!妹!」

「だから妹にはならないってばぁ!」


 声をくぐもらせながら放つアリアに、エルマンノは強制的にそう放ち話を終息させる。それに不満げに頰を膨らませるアリア。

 その様子に、エルマンノは息を吐いて低く呟いた。


「じゃあ、俺の事お兄ちゃんって呼んでくれ。それでいい」

「嫌!エルマンノさんはエルマンノさんです!いやっ、エルマンノ!」


 突然呼び捨てになった。恐ろしい速度で距離を縮めてきた。なんとも距離感がバグっている。恐らく、長年友人がいなかったんだろうな。そんな失礼極まりない事を脳内で呟きながら、エルマンノは大丈夫だ、今は友人よりも素敵で、大人で、頼りになるお兄ちゃんという存在が出来たのだ。と、どこか誇らしげに放った。


「じゃあなんならいいんだ?お兄ちゃんって呼ぶくらいなんて事ないだろ。お兄ちゃんって呼んでくれさえすれば、俺は兄だと押し通せ、、いや、待てよ」

「え?」


 エルマンノはそこまで呟いたのち、天才的な想像をする。


『エ、エルマンノッ!』

『おはよう、妹よ』

『う、、な、なんで、、エルマンノは私の事妹って呼ぶの、?』

『大切な、妹だからだ』

『...私、エルマンノの事、お兄ちゃんって、呼んだ事ないよ、?』

『確かにそうだな。それは一体何故だ?』

『だ、、だっ、だって!わ、私は、エルマンノの事っ、お兄ちゃんじゃ無くて、、それ以上にっ、、一人の男の人としてっ、好きだからっ!』


「ぐへへ、、ありだな」

「え、、キモ、何が、?」


 想像力を膨らませ、エルマンノは気色悪い笑みを浮かべる。それに率直な感想を呟かれると、エルマンノは改めて口を開く。


「じゃあ、別にそれでいい。だが、俺は兄で、アリアは妹だ。それは何と言おうと変えるつもりはない。これが助けたお礼として受け取るよ」


 それだけを告げると、手を上げ踵を返す。なんとカッコいい。颯爽と帰る主人公だ。なんかヤバい事を言ってるヤバい奴。という事を吹き飛ばすくらいにはカッコよくその場を去った。

 と、思われたが。


「待って!」

「...ん?」


 おお、またもや憧れるシチュエーション。去り際に止める妹。それに綻ぶ口元を抑えてエルマンノは振り返る。


「その、、今、エルマンノは、、何歳、?」

「え?」

「いいから!」

「なんで年齢なんか、、ハッ!?」


 そうか、そういう事かと。エルマンノは目を剥く。もしアリアよりも年下だったら、妹では無いと。そう言いたいのだろうか。それを察したエルマンノは、アリアの肩に手をやりいやいやと。首を横に振った。


「安心してくれ。俺は妹に年齢は関係ないと思っている」

「え?何言ってるの?...いいから教えて!」


 おっと。どうやらまたもや突然突き放されてしまった様だ。この人は唐突に冷たくなる傾向にある。


「あ、えと、十五歳ですけど」


 何故か敬語になってしまった。というか、いつの間にかここまでタメ口になるほど距離が近づいていたようだ。そちらに驚きだ。


「っ!...そう、、じゃあ、まだ実家なのね、」

「ん?」


 そういえば、どこかで聞いた気がする。成人はこの世界で十七と、現実世界と大して変わらない。だが、この世界では成人にならないと出来ない事が多く、一人で家に住むのは成人してからでしかしてはいけないというものもあった記憶がある。書類上では無く、実際にだ。


「ああ、、そうだな。確かに、まだ両親と共に生活してるが」

「そ、そう、、ごめんなさい」

「え、?どうしたんだ、突然」

「その、家に、お邪魔したいと思って」


 残念そうに肩を落とすアリアに、エルマンノは首を傾げ問うと、俯き小さく返した。


「あー、確かに、今週は両親共に遠征に行ってるみたいだし、俺しかいないからそれはーー」

「っ!両親っ、いないの!?」

「え?あ、ああ。今週は、、いないが、」

「じゃあ、私エルマンノの家に泊まらせてもらってもいい!?」

「はぁ!?どうしていきなり!?第一に、なんで両親いないとオッケーなんだ!?逆にそれは、」

「妹、なんでしょ?私。なら、同棲してても問題ないよね?」

「う、」


 何も言い返せなかったエルマンノは、渋々頭を縦に振るという、彼女のイタズラに微笑むその笑顔に、まるで魂を売る様な行為をした。


          ☆


「う、、く、くぅ〜っ」


 チュンチュンと、クソデカい見たことのない鳥が、窓の外で小鳥の様な歌声を響かせる。そんな、脳がバグりそうな清々しい朝、エルマンノはベッドの上で伸びをして顔を洗いに動き出す。


「っと、」


 顔を洗い終わり、ふと鏡を見据える。

 やはり、イケメンである。父もイケメンだった事から、分かりきっていた事ではあるが。

 幼少期から、その美少年ぶりは理解していたものの、どこか別人として解離しており、自分の顔とは認識していなかった。

 だが、十五となり、転生前の年齢に近づくにつれ、だんだんとその顔が自分自身だと思い始めていた。だからこそ、思ってしまう。


ー許せんー


 このイケメンは誰だ。自分がこれならば許せない。今まで散々顔だけ男に憤りを感じてきた人生。そんな人間がその憎むべきものへとなり、それを受け入れるなんて事は屈辱。というよりかはカッコ悪いだろう。故に、エルマンノは髪は整えておらずボサボサ。僅かに出来た目の隈は改善しておらず、服もこの世界で言う平民以下の様なものを選んだ。

 だがしかし、イケメンである。どうやらどう頑張ってもこのイケメンは消せない様だ。

 いやちょっと待て、この発言一番腹立つぞ。

 脳内でそんな事を考えた矢先。


「はぁ〜、、気持ち良かった、、ってぇ!何平然と入って来てるの!?」

「なっ!?」


 バチコンと打たれ、エルマンノは部屋の外に出される。

 忘れていた。昨日、妹が出来たんだった。

 あれから、平然と家に上がり込んでは、本当の妹の様に過ごし、空いた部屋を借りて眠りについていた。普通ならキレ出すところだが、相手は妹だ。思わず笑顔で受け入れてしまう。


「絶対見ないでよ!?」

「見ないよ」


 バスルームの中に洗面所がある我が家。顔を洗っていたエルマンノの背後から、タオルを巻いたアリアが現れ、追い出された彼は、ドアの向こうから放たれるそれに淡々と返した。

 うん、やはりいい。妹と早朝風呂がバッティング。そして僅かに肌を見てしまい、打たれ追い出される。理想的なシチュエーションだ。また一つ、死ぬまでに起こってほしい理想のシチュエーションを体感出来た。


「ぐへへ」


 それに思わず微笑むエルマンノ。だったが、どうやらそれがアリアに聞こえていたのか、声を低くし小さく唸る。


「何、、なんかキモい声聞こえたんだけど、、まさかっ!覗いてないよね!?」


 慌てて声を上げる彼女に、大丈夫だと息を吐きながらエルマンノは放つ。


「俺はさっきの一瞬のタオル姿、そして、この壁の向こうで着替えている妹が居るという事実だけで五杯はいけるぞ」

「五発の間違いじゃない?」

「俺は美味しいおかずには白米を添える派なんだ」

「キモ、」


 エルマンノは、妹が現在着替えている部屋を体感するべく、ドアに背中を当て、もたれかかりながら淡々と返す。

 すると、数分後突如ドアが開き、それによって背もたれの扉が無くなったエルマンノは倒れ込む。


「うおっと、」

「っ!」


 おお、いい景色だ。特等席だな。

 倒れた先は、ドアを開けたアリアの股下だった。


「妹の太ももがモロに見える。このアングルはたまらないな」

「〜〜〜〜〜っ!さいってぇ!」

「ぐごっ!?」


 男性一番の急所を踏まれたエルマンノは、青ざめた顔で蹲った。


「ふんっ!」

「がっ、がはっ!ご、ご褒美っ、、だなっ!」


 エルマンノは掠れた声で妹の脚の感触を思い返しながら現実逃避をした。


「...はぁ、」


 数分後、エルマンノは改めて顔を洗った。

 これで良かったのだろうか。確かに、一緒に住む事によって、本当の妹の様に兄妹プレイを出来ているのは至福であり幸運である。だが、彼女はこれでいいのだろうか。そもそも、何故エルマンノの家に上がり込んだのだろうか。帰らなくていいのだろうか。いや、それ以前に何処に帰るのだろうか。

 何も知らなかった。その事実にエルマンノは表情を曇らせる。


ー妹の事は、、知っておかないとな、、兄としてー


 脳内で呟き、浅い息と共に振り返る。と、そこには。


「っ!?」


 なんて事だ。浴槽に、湯が残っているでは無いか。


「...」


 湯船の前で、エルマンノは顎に手をやり悩む。と。


「ねぇエルマンノ?朝は何食べーーって、何やってるの?」

「ん?」


 唸りながら眺める事数十秒。遠くから足音が近づき、アリアが顔を出し問う。するとそれに、エルマンノは体勢は変えずに顔だけで一度振り返ると、そのまままたもや湯船へと戻す。


「いや、妹浴槽に入るべきか、これで顔を洗うべきか、考えていただけだ」

「殺すよ?」

「よし、両方やるか」

「きっしょい!」

「ああっ!?」


 アリアはエルマンノの決意と同時に暴言を呟き、浴槽の湯を抜いた。


「...おい、俺の家系はお金持ちじゃないんだぞ?朝風呂に入るならその後俺にも入れさせてくれ。勿体ない」

「真っ当な事言ってる様に聞こえるけど、エルマンノが言うと全部下心がある様にしか思えないんだけど、」


 心底残念そうに肩を落とし、エルマンノは渋々バスルームを後にする。それを追いかける様にしてアリアが前に出ると、先程言いかけた話題を口にする。


「ねぇ、今日のご飯は何?何コース?」

「なんだコースって、、それに、随分と図々しいな。家に居座っている自覚はあるのか?」

「え、、あ、ある、、けど、、その、ごめん、」

「はぁ、妹のお願いだ。俺が美味いもの作ってやる」


 昨晩は図々しかったものの、ここまででは無かった様に思える。晩御飯も、何を言うでも無く食していた。勿論、その際もエルマンノが調理を担当した。

 ワクワクと、リビングのテーブルの前にある椅子に座りながら、アリアは鼻歌を歌っている。それを横目に、エルマンノは調理を始める。今回は昨日撃退した魔物の肉を使った肉料理だ。

 この世界に来る前から、エルマンノは調理に関心があった。現世でも両親が共働きだったエルマンノは、冷凍食品やインスタント食品では足りなくなり、時期に軽いものを作る様になった。それからというもの、やはり兄は妹に美味い料理を作ってなんぼだと思い、料理の研究もしていた。

 この世界の料理法は色々と異なる点があったものの、これもまた幼少期からの訓練で会得する事に成功した。その甲斐あってか、現在本当に妹に食事を提供している。やはり何でもやってみるものだ。


「はい。こちらドワーフの肉をステーキにしたなんとかでございます」

「え、?これ、、だけ、?」

「ん?ああ、ご飯ならここに」

「いや、、そうじゃ無くて、、その、おかず、」

「ああ、アリアがおかずになってくれてもいいが」

「そういう事じゃない!」


 なんと、予想通り彼女には足りない様子だ。普段どれ程食しているのだ。それでこの小柄な容姿は犯罪にあたるぞ。


「要らないなら、俺がもらうぞ?あーあ、せっかく妹に作ってあげたのになぁ」

「たっ、食べるっ!その、ごめんなさい、」

「何がだ?」

「だって、、その、生意気な事、言ったから」

「俺は何も言ってないだろ。それに、妹は多少生意気の方が唆る」

「...ふ、ふふふっ、何それっ」


 元気に笑うアリアに、エルマンノもまた僅かに微笑む。すると、笑ったのち、アリアは静かに微笑み、僅かに俯く。


「私も、、料理、勉強していい?」

「シェフにでもなるのか?」

「違う!その、、いつも、作ってもらっちゃ悪いし、」

「いつまで居座る気だ、?」


 エルマンノはアリアの言葉に苦笑を浮かべながら返す。だが、兄のために料理を勉強する妹。これもまた最高の展開故に、エルマンノは微笑み「なら、今日の夜ご飯、一緒に作るか」と優しく放った。


「っ!うん!」


 それに笑顔で頷くアリアに、家事の出来る妹もありだとニヤけた。


          ☆


「よし、じゃあ俺は昨日の森に行ってくる」

「えっ、ど、どうして?食料調達、?」

「いや、食べられる奴を狩ったのは久しぶりだ。俺は普段からあの森で魔物相手に魔力の特訓をしてるんだ。妹を守れる兄になるためにな」

「あー、それで昨日もあそこに居たんだ」


 支度をしながら放つエルマンノに、アリアはそう返すと、少し間を開け彼の前に出て微笑む。


「でもっ、凄い努力家なんだね。エルマンノって、動機は不純だけど!」

「不純だと?おい、妹を貶したか?」

「妹が妹の事言ってもいいでしょ〜」

「それもそれでありだな」


 謎の会話を繰り出しながら、エルマンノは家を後にし森へと向かう。と。


「ん?どうしてついて来てるんだ?」


 背後に、アリアがついて歩いていた。


「えっ、だって家に居ても暇だし」

「そうは言っても昨日危なかっただろ。妹を危険な目に遭わせるのは勘弁してくれ」

「でも、その時はエルマンノが守ってくれるんでしょ?」

「それ、エルマンノのとこお兄ちゃんに変えてもう一回言ってくれない?」

「いや!エルマンノはエルマンノだもん!」

「なんでだよ」


 森を緊張感の無い会話を紡ぎながら歩く。アリアの返しに、エルマンノが僅かに悲しそうにジト目を向けて放つと、早速という様に奥から咆哮が聞こえた。


「おっと、やっぱり居るな。この声はミノタウロスか?」


 ガサガサと。伸びきった草を退けながらその声の主の元へと足を進める。すると、そこに居たのは。


「ビンゴ。やっぱミノタウロスか」

「どっ、どうすんの!?まさかっ、あれと戦うわけじゃ無いよね!?」


 アリアは驚愕に、小さく声を上げる。驚くのも無理はない。昨日戦ったドワーフの三倍はある大きさと迫力。この世界にレベル概念があるならばエルマンノの二倍はありそうだった。だが。


「あれには炎の魔法でやれるか、」

「ちょっ!普通に戦いに行こうとしないでよ!」

「大丈夫だ。どこぞの白髪冒険者も、炎でミノタウロスを倒してる。きっとこの世界のやつも炎でやれる!」

「意味が分からないよ!だからっ、そういう意味じゃなくて、あんなやつと戦う理由なんか、」

「俺は妹を持って、その妹を守り抜きたい。それだけだ。自分の欲望のために無謀に立ち向かって何が悪い!」

「っ」


 大した事ない話を、随分と強く言ってしまった様だ。エルマンノは脳内で今更黒歴史を覚悟しながら、飛び出す。それを見つめるアリアの瞳は、先程よりも見開いており、何故か輝いていた。


「喰らえっ!ファイアバースト!」

「グゥゥゥゥゥゥ!」


 隙を突いた一撃。それに叫び声を上げながらこちらに体を向ける。だが、もう遅い。エルマンノは目つきを変えて手を地面につける。


「ロックノック」

「ガウっ!?」

「っ!」


 エルマンノの一言と同時。ミノタウロスの真下の地面から、突如尖った岩が飛び出し、それを突き刺す。少々グロテスクだ。アリアも僅かに引いている。


「よしっ、なんとかなったな、」

「エ、エルマンノって、思ったより凄いんだね、」

「それ褒めてます?」

「褒めてるよ!悪かったですね!褒めるの慣れてなくて!」

「慣れてないにしてはいい褒め方だったよ。褒めるのに慣れている俺が保証しよう」

「そんな保証いらないから!」


 ミノタウロスに近づきながらエルマンノが放つと、アリアはそう対抗する。と、そののち、少し間を開けたのち、アリアは息を吐いて目を逸らした。


「こんな危険な事、、いつもしてたの?」

「まあ、強いやつを相手にしないと魔力の強弱も分かりづらいしなぁ、、まあ、俺は妹のためなら、それくらいは出来るって事だ」

「もぉ、、またそうやってふざけて、」

「断じてふざけてない。保証しよう」

「エルマンノの保証は当てにならないんですけど。貴方の保険には加入しません」

「グォォォォォ!」

「「っ」」


 ミノタウロスの状態を確認する中、ふと遠くからまたもや咆哮が飛び交い、エルマンノとアリアは目を見開く。


「近いな。まだ仲間が居たか、」

「ちょっ!待って!もうやめておこっ、ねっ?次は本当に死んじゃうかもしれないからっ」

「ミノタウロスは群れで行動する生き物じゃ無いと思ってたが、俺の間違いだったか、?」

「ちょっと聞いてる!?」


 アリアが叫ぶ中、エルマンノはその方向へと一心不乱に突き進む。すると、そこにはーー


「っ!」

「えっ、どうしーーっ!?」


 エルマンノは怪訝な顔で前に出ようとするアリアを止める。そこには先程のミノタウロス。そして。

 隣にはフードを被った女性らしき人物が居た。


「どうしてこの世界の女性はフード付きマント被ってる人ばっかりなんだ、?」

「私だって、、好きでマント被ってたわけじゃ無いもん、」

「よし!だが、ここで彼女を助ける事で、またもや妹を増やせるな!」

「えっ!?そういうあれなの!?」

「待ってろアリア。今姉妹を増やしてやる!妹が増えるぞ。やったなアリア!」


 エルマンノはそう放つと、木の陰から飛び出し、手のひらをミノタウロスに構えた。と、それに続けて。


「次はこれだ。サンダーストライク」


 そう放つと共に、指を鳴らした。すると。


「ガゥっ!?」

「キャッ!?」

「っ!」


 ミノタウロスに向かって、大きな落雷が起こり、それはその場で倒れ込んだ。


「...よしっ。危なかったね。怪我はないかい?」


 動かない事を確認したのち、エルマンノは笑みを浮かべてそのフードを被り、マントを羽織った女性へと向かう。そんなエルマンノの分かりやすい変化に、背後のアリアはジト目を向けると、その女性はふと、フードを取ってーー


「っ」


 ーーエルマンノを睨みつけた。


「なんでっ、、なんでこんな事した!?」

「...え〜、、なんか、いつも上手くいかねぇ、」


 思った通りの反応をとことん見れないエルマンノは、息を吐く様にそう零した。

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