北条 VS 武田 其ノ三

 北条氏康



 倅が無事に初陣を済ませたか、勤めとはいえやはり心配してしまうの。龍司も初手で武田に大ダメージを与えてくれた。状況はこちらが有利、警戒は怠らんがな。


「火急にて報告!美濃の斎藤が武田への援軍のため、兵一万を連れて信濃に入りました!」


「なぜ美濃から?誼を通じていたか!」


「大殿様、ここで焦れば武田の思う壷です。信濃に入っているとは言え、武蔵まではだいぶ距離がありまする、じっくり攻めましょう」


 倅と共に戻ってきた光秀か、こやつは儂や幻庵以上に頭がキレよる。


「うむ、助かった。お陰で冷静になれた」


「しかしこの援軍、間違いなく龍司への報復じゃな」


「そう言うてやるな幻庵、龍司の手助けが無ければ倅の婚儀を汚されたのだぞ?」





 坂本龍司



 俺は今、焔神衆の八千を本陣に残して三千で相手の伏兵へ奇襲をかけるために移動している。


「そうか、若様は無事に初陣を終わらせたか。光秀と信綱に大儀であったと伝えて」


「御意、それと殿の予想通り動きました」


「やっぱりか、手筈通り頼むよ」


 さて、撒菱に火薬を混ぜた投石はどれほど相手にダメージを与えられるか。俺が奇襲する伏兵の指揮はあの馬場信春だ、確実に討ち取って相手に大ダメージを与えるぞ


「じゃあ、ここには五百だけ残してあとは指示した場所に待機してて」


「はっ」






 馬場信春



 伏兵に三千も使うとはの。殿の本気度が伺えるわい、儂ももう歳じゃ。いつまでこの体が言うことを聞くかわからん、必ず武蔵を崩壊させるぞ!


「敵襲!その数五百!!」


「そのまま突き進む、伏兵を撃破し本陣を奇襲するぞ!!」


「「「おぉーー!」」」


 その時、頭上を何かが舞った。その直後・・・


 ばばぁーん、ばん、ばぁーーーーん!


 大筒かと思ったが音は小さい。火縄銃か?そんな事を考えておったら兵達が次々倒れておる。いかなる状況じゃ?大筒でもないのになぜこんなにも兵が倒れる!?


 兵の状態を確認する時間もない。仕方ない・・・


「撤退じゃ、引けい!!」


 ・・・囲まれたか!あそこに見えるのはこの隊の指揮をしておる奴か。


「儂は武田家家臣の馬場信春と申す!」


「生憎私には一騎打ちをする趣味はないので、焔神衆、やっていいよ」


「な、卑怯なやつめ!お主、もしや坂本龍司じゃな!?ふざけおって、この様な事で儂は終わらな・・・」





 坂本龍司



 なぜこの時代の人は一騎打ちをしたがるんだ?勝敗は決まってるんだし、時間の無駄だと思うのは俺だけなのか。そもそも戦争なんだから卑怯もくそもないだろう。


「馬場信春が討たれた噂を流して、あと大殿に報告もね」


「御意」


 これで史実の四天王の三人を討った。例え北条に巨従しても武田家は何をするか分からない、出来るだけ敵将を削いでいかないと。


「降伏する兵は武装を外して武器も取り上げて、抵抗する者は遠慮なく討ち取って構わない」


「はっ」


 伏兵とは言え今回は三千もいた、馬場信春を討った事で千もの兵が降伏したけど油断は出来ない。我を失って襲われる可能性もある。こういった訓練も焔神衆にさせといて良かった。

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