第6話 問題児対策会議
「で、今年はどうなりますか?」
九月に学校が始まり、七不思議くらい信憑性の無い会合に来るように置手紙で言われた。本当に人がいない隙に置くんだ。
夏休み明けに高等部ではこうした対策会議があるという噂は聞いていたが、本当にあるんだと不思議な気持ちである。
議長は三年吉田先輩。
宗先輩はありとあらゆる人間の前でパンチラをして、誘惑しないとストレスが溜まる特異体質で、その度に反省文六回と親呼び出し二回、停学一回。
親を呼んでも停学中に街で問題を起こすので学校に置いてくれと涙ながらに両親は学校にお願いをしたらしい。
吉田先輩は学校内でパンチラをする度に宗先輩をデジカメで撮影し、こっそり削除しているらしい。
会議机に足を乗せて、パイプ椅子の上で気だるげに座っているのは三年中川先輩。山足担だ。
山足先輩は一見真面目だ。それ以上に天才過ぎるのだ。
まず自分の歩いた道の交通量や人の顔の一画面を記憶して、それをホームルームから下校時刻になるまでスケッチブックに書くという珍しい体質で完全記憶能力の持ち主だ。
ただし、自分が歩いて振り帰った風景しか興味が無い。中川先輩は五日あれば一日は授業を受けさせるまでに持ってきた。それは雨の日らしい。
会議室の中でちょこちょこ動くのは二年の安達先輩。大城担だ。気遣いの天才らしい。
大城さんはめちゃくちゃ優秀だけど、『あー』と『うん』でコミュニケーションを取る人だ。
それで会話出来るのは安達先輩くらいで、安達先輩は通訳して周りに伝える。そんな状態でも寝ていても耳に入る情報は聞き逃さない。
英会話だけはめちゃくちゃ流暢に話しているらしい。安達先輩は大城先輩に今、『いいえ』を仕込んでいるらしい。
そして、私。
二年前は一学年に二人は問題児がいたらしいが、二学年連続一人は今までに無かったとか。
「中川どうだ?」
「卒業までに五日に一日を二日にする。大学には絵かAOで通るだろ」
「文化祭は山足どうする」
「あれじゃ、似顔絵は無理だろうな。スケッチ展示くらいだろ。アイツ人の顔は描かないからな」
「了解。大城は?」
「大城さんは首を振るまで進化しました。結構お金の処理にはシビアなので、会計補佐くらいでは使えるかもしれません。暗算めちゃくちゃ得意です」
「試用期間が必要かもな。中田はどうだ?」
「ゴリラは失恋したので、もっとゴリラになると思います」
この問題会議に大した問題を持たないゴリラが選出されたかと言うと、どれだけ言っても教師の言う事を聞かない。
担当をつけても実績をどんどんつけていくゴリラに教師陣が吉田先輩に。
「頼むから、そっちで世話してくれ」
と、お願いしたとか。
「もう少しゴリラ具合をどうにか出来ないか?」
「工科高校に好みの男がいれば、テンションも違ってくるとか」
「前田の兄貴は普通科だしな。分かった。こっちのツテで工科高校にアテをつける。好みは?」
「しょうゆ顔がいいですね」
「了解、リストアップする。二週間以内にどうにかしよう。それではまた次の機会に集合だ。三ヶ月後の文化祭まで何とか人間に近づけるぞ」
「吉田のとこの宗はどうする?」
中川先輩は吉田先輩に尋ねた。
「コスプレをさせて撮影会でパンチラをさせる。注意喚起をしても撮るアホはいるから、ウィンウィンだ」
「癖になってこじらせても知らないぞ」
そう全ては合法的に男が入ってくる文化祭の対策会議なのだ。
「それにしても蒸し暑い文化祭に何を楽しみに男どもは来るのだか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます