第12話 帰宅

「ただいま。」

玄関をあけた。チャチャチャチャと音を立てながら、チイが駆け寄ってきた。尻尾はぶんぶん。

その後をタケルが追って出てくる。

「お姉ちゃんが帰ってきた!」

耳が千切れるほどの声で言った。その声に促されるように、父さんと母さん、おばあちゃんが出てくる。

「どこ行っちょったと!」

「いや、よくわからないんだけどカリフォルニア。」

私が答える。

「そい、どこ。」

「アメリカかい。」

タケルが言う。

「そう。アメリカ。」

「よく一人で帰って来れたね。」

一人?思わず後ろを振り返る。誰もいない。

「そう、大変やった。パスポートもないし、大使館行って。お金だいぶ借りちゃたけど。なんとか。」

「ああ、それは知らせがあった。迎えに行こうと思ったけど、もう今夜の便で立つからって。」父さんが言う。

「知らせ?誰から。」

「さあ、大使館の人じゃない。感じ良さそうな女の人やった。」

誰だろう。

「まあ、どげんでよかけん。はよ上がり。ご飯できとっど。」

ばあちゃんが言った。

私は、もう一度。

「ただいま!」

といって玄関を上がった。

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