第26話 教わるんだもの
さてオンライン上でパスワードを示し合わせて、同じ部屋に入る。
オンラインでゲームをプレイするのは日常茶飯事だが、リアルの知り合いとオンラインでゲームをするのは生まれて初めての経験だ。
そのまましばらくゲームをプレイしてみる。
同じ色が4つ揃うと消えるパズルゲーム。連続して消えると連鎖して……って細かいルールはどうでもいい。お互いに把握していることだ。
しばらくプレイして、
『難しい』苦悩のチャットが飛んできた。『上達する気がしない』
『わかります』そう思ってしまう気持ちがよく分かる。何なら僕も同じことを思っている。『シンプルすぎて難しいんですよね』
オセロとか将棋とかチェスとか……ルールはシンプルだけど極めることに時間がかかるタイプなのだ。しかも成長が実感しづらいという難しさも兼ね備えている。
かなりの長寿ゲームで知名度も高いのだが……あまりにもオンライン対戦で勝つハードルが高いのだ。じゃあルールをもっと変えてしまえば……本来の面白みである戦略性が失われることになる。
なんとも難しい話だ。ゲームとしてのポテンシャルは高いだけに、もっと評価されても良いと思うんだが……
それにしても
『かなり調べてきたみたいですね』
『そりゃ教わるんだもの。できる限り調べてくるよ』
それができない人が多いのだ。どうせ教わるのだからと思って、操作方法すら調べてこない人がいる。まぁそれも仕方がないことなのだが……できることなら自分でできる最高の状態になってから人に教わってほしい。そっちのほうが効率が良いのだ。たぶん。
まぁ僕としては……どっちでも良いけれど。操作方法も調べてこないことを前提に教えるけれど。
『いろいろ上達法とかも調べてきたんだけど、難しい……』
『連鎖するだけなら、結構早くできますけどね』
『そうなの?』
『基本的には形を覚えるだけなので』
連鎖しやすい形があって、それに当てはめていくだけである。意外と覚えゲーという側面が強かったりする。
というわけなので効率の良い形をいくつか提示して、その中から好みのものを選んでもらった。そのまま何度か練習しているうちに、
『なるほど。5連鎖までなら簡単なんだね』
『それに気づいたら、あとは慣れるだけです』
初心者の壁である5連鎖。それ以降はフィールドとの関係で、また違ったテクニックが必要になってくるのだ。そこを乗り越えてしまえば……連鎖数だけならいくらでも伸ばせる。
何度もいうが……そこに行き着くまでが大変なのだ。5連鎖までなら結構簡単だったりする。そして5連鎖が結構な速さで組めたら、友達の間では無敵だろう。それくらいまでは練習しても良いと思う。
そして意気揚々とオンライン対戦に乗り込んで……ボコボコにされるわけだ。そこからがスタートライン。
本当に上級者への道というのは遠い。このゲームに限らず、中級者と上級者の間には異常なほどに差がある。まぁ初心者と初級者の差もなかなか大きいけれど……まだ埋められる差である。
超上級者になろうと思ったら、努力だけでは行き着けないかもしれない。才能も必要かもしれない。案外努力だけでなんとかなるのかもしれない。
わからない。わからないから怖い。怖いから挑戦したくない。自分は才能がないのだと思いたい。そんな人は多いのかもしれない。
最初から夢見なければ、諦めずに済むから。傷つきたくないのなら最初から諦めれば良い。そうして成功している人を羨むか妬むかしていれば、心の平穏は守られるのかもしれない。
僕は……どうだろう。オンラインだけに引きこもって自分の力を試そうとはしていなかった。大会とかに出て傷つくのも嫌だったし……最初から諦めるタイプの人種だったのかもしれない。
……
それでも手を伸ばしたいと思ってしまう。
……もう遅いとか思わずに、大会とか出てみようかな。ゲームでお金とか稼げたら嬉しいだろうな……
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。