第11話 一緒に遊ぼ

 家に帰って、そのまま布団にダイブする。一人暮らしの高校生の部屋に色気なんてものがあるわけもなく、窓際においてあるサボテンが唯一の癒やしだった。。


 狭い部屋だけれど、別に不便はしていない。最近はゲームもダウンロードしてデータでおいておけるし、そこまでのスペースは必要ないのだ。


 それにしても今日はとんでもない日だった。改めて思い返すと、夢としか思えない。


 雨霖うりんすずは……要するにクラスのアイドルの1人だ。学校全体から考えたって人気が高い。そんな美少女と一緒に帰ったなんて……本当に夢としか思えないのだ。


 しかも、なぜか友達になってしまった。向こうからすれば些細なことなのだろうけど、僕からすれば驚きの事実だ。


 しかし……どうやら夢ではないようだ。それはスマホのチャットアプリを見ればわかる。


 そのチャットアプリには……僕たちの会話の履歴が残っていた。改めて見返すと僕がかなり恥ずかしいことを言っているが……まぁ過去は取り消せないからしょうがない。

 

 本当に僕は雨霖うりんすずと会話をしたいたらしい。何度も言うが男子なんてのは単純なもので、美少女と会話しただけでテンションが上ってしまう。


 まぁ……これ以降、彼女と関わることもないだろう。雨霖うりんさんの社交辞令もこれで終わりだ。


 なんてことを思っていると、手に持ったスマホが突然振動した。


『キミがやってる格闘ゲームって、なんていうゲーム?』


 どうやら雨霖うりんさんからチャットが来たらしい。


 ……僕のやっている格闘ゲーム……


『実は最近、プレイをサボっていたりします』


 とある理由で、あんまりプレイしなくなってしまった。


『そうなんだ。一緒にやろうと思ったのに』そのゲームを買う気だったのか……『今までの私の友達にゲームに詳しい人がいなかったから、いろいろ教えてほしいんだ』


 つまりオススメのゲームを知りたいわけだ。


『僕がやってた格闘ゲームは割と上級者向けな気がします。PCスペックも必要ですし……高いですし』頑張ってバイトして購入したのだ。『雨霖うりんさんが今までやって、楽しいと思ったゲームはなんですか?』

『そもそも、あんまりゲームをしたことがないんだ。ゲームセンターでクレーンゲームをやるくらい?』かなりの初心者らしい。『キミが夢中になってるものを体験してみたいんだけどなぁ……』


 そんなことを言われても……


 しかし、その思いを無下にするのも忍びない。いろいろと考えてみよう。


『落ちものパズルとか得意そうに思えます。頭の回転が早そうですから』

『落ちものパズルって何?』

『フィールドの上からブロックとかが降ってきて、横にラインを揃えたりするやつです』


 他にも同じ色を4つ揃えたら消えるやつとかが有名である。そして僕の苦手なジャンルのゲームだったりする。


『キミはパズルゲームが苦手だって言ってなかった?』

『他のゲームと比べて苦手、というだけで……』一般の素人よりはうまい自信がある。『はじめてやる人に教えられるくらいには、できると思います』


 それに……同じ色を4つ揃えるゲームは、かなりお安く売っていたりする。ネット対戦さえしなければカジュアルなゲームだし、初心者入門には悪くないかもしれない。セール中なら300円くらいで買えたりする。


 そのゲームタイトルを伝えると、


『なるほど……やってみようかな、て言ったら教えてくれる?』

『オンラインでのチャットでなら……』

『よーし。じゃあ、今日調べて買ってみるから明日にでも一緒に遊ぼ』


 コミュ力おばけ……雨霖うりんさんと話してるとすぐに物事が進んでいく。1つのゲームを買うのに数ヶ月悩むような僕とは人種が違うな……


 ……とりあえず、あれだ……


 ちょっと、練習しておこう。

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