第3話 イライラするよ
別に僕が嫌われるのは理解できる。とくに長所もないしかっこいいわけでもない。成績だって良くはないし……好かれる要素はあんまりないと思っている。
だったら僕に関わらなければ良い話だ。どうしてこうやって……わざわざ僕に突っかかってくるのだろう。お互いに得をしないと思うのだけれど……
わざとらしく僕の机にぶつかってきたのは……隣の席の女子グループの1人だ。さっきプリントを取り替えてもらっていたグループ。
机に体当りされた拍子に、僕のノートが地面に落ちる。
そして開かれたページには運悪く……
「なにこれ?」女子が僕のノートを拾って、「うわ……なんか落書きしてあんじゃん」
よりにもよって、僕がイラストを描いていたページである。
いや……まぁ勉強用のノートに落書きをしていた僕が悪い。おとなしく家の中でだけお絵かきをしていればよかったのだ。ついインスピレーションが湧いてしまって……
「アニメのキャラクター? 気持ち悪」勝手に見るな。そしてゲームのキャラクターだ。「こういうの好きなんだ……見た目通りだね。オタクっぽいというか……」
それは僕もそう思う。アニメとかマンガが好きそうな見た目をしているとは思う。
一番好きなのはゲームだ。アニメやらマンガも好きだけれど……それらはオタクと呼べる領域にはいない。
「見てよこれ」女子グループは勝手に僕のノートで盛り上がる。「うわ……やっぱこういうの好きなんだ……やっぱり頭の中も気持ち悪いというか……にじみ出てるよね」
そんなに言われないといけないか? 人様に迷惑はかけてないだろう。その範囲で僕が何をしていようが、僕の勝手だ。
さっさと返してほしい。だけれど……声が出ない。
いつもそうだ。会話をしようとすると声が出なくなって、パクパクと口を動かすだけになってしまう。
「なに?」睨みつけられて、さらに硬直してしまう。「言いたいことがあるなら言ってみなよ。そうやっていつも黙ってて……イライラするよ」
それはすいません……でも、イライラするなら絡まないでほしい。ほっといてほしい。
休み時間の教室は騒がしくて、誰も僕たちのいざこざになんて興味を示さない。いや……大注目されても困るけどさ。
ともあれ女子たちはさらに僕のノートで大盛りあがりだ。そんなにイラストを見るのが好きか。それとも……人をバカにするのが好きなのか?
「高校生にもなってアニメキャラ描いてるんだ……恥ずかしくないのかな……」
「オタクにそんな感性を求めるのが間違ってるんだよ。ほら……犯罪者はよくアニメを見てるって言うじゃん」
どこ情報だよ。だったら僕も犯罪者は多くの場合が高校生だったことがあるって聞くけどね。
「そうだ」なにか妙案を思いついたようだった。「これ、クラスのみんなにも見せてあげようよ」
なんでそんなことするの? どんなメリットがあるの?
……僕が嫌な顔をするというメリットがあるんだろうな。だからやるんだろうな。それだけなんだろうな。
そうしてその女子グループが僕のノートをクラスに向けて掲げる……
その直前だった。
とある人物が、ノートを奪い取った。
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