【完結】実は有能ポーターだった僕、アホなリーダーの平手打ちでチートスキル【ツッコミ】に目覚めて世界最強に。美少女たちにもモテまくりで、トントン拍子に成り上がる。あとアホ冒険者たちは瞬殺ざまぁします
第二十八話 そのポーター、仲間たちと牢屋に入れられる
第二十八話 そのポーター、仲間たちと牢屋に入れられる
「どうしてこうなったのかな?」
僕は通路と繋がっている、頑丈な鉄格子を見つめながらつぶやいた。
ピチョン……ピチョン……と、部屋の隅に天井から水滴が落ちている。
部屋中に充満している空気も最悪だ。
鼻で息をするより口で呼吸をしたほうがマシ、というような嫌な臭いが部屋の奥の簡易トイレからずっとしている。
現在、僕たちは牢屋に入れられていた。
天井近くに設置されていた窓の役目の四角い穴からは、部屋の中をそれなりに照らしてくれる月明かりが入り込んでいる。
そして牢屋の壁の中には魔法封じの特別な鉱石が含まれているらしく、牢屋の中に入れられると魔法使いは魔法の類は一切使えなくなるという。
「本当にどうしてこうなったんでしょうね」
魔法を封じられたローラさんは両膝をきちんと立てて揃え、その両膝を両手で抱えるような姿勢で座りながら言う。
「はてさて、これからどうすべきか」
そう言ったカーミちゃんは、両腕を組んで仁王立ちしていた。
この牢屋に入れられてから約30分もの間ずっとである。
うん、立ちっぱなしだと疲れるから座ったら?
「おのれ、あの門番兵どもめ。よくも私たちを――いや、カンサイさまをこんな薄汚い場所に入れおって!」
一方、我慢の限界を迎えたクラリスさまが石材の壁を殴りつける。
当たり前だけど、分厚い石材の壁は素手ではビクともしない。
クラリスさま、物に八つ当たりしたい気持ちはわかるよ。
でも掌底打ちや裏拳当て、肘打ちや飛び蹴りなんて対人間用の攻撃をひたすら繰り出すのはこっちが痛い気持ちになるからやめてくれません?
「うるせえぞ、この新領主さまの名を語った凶悪犯罪者どもが! いいから首をはねられるときまで大人しくぶち込まれてろ!」
ちょうどこの辺を巡回していたのだろう。
クラリスさまの攻撃の音を聞いた1人の門番兵さんがやってくると、そんな怒声とともに鉄格子を強く蹴って再び巡回に戻っていく。
「もう、無実の私たちに対して何ですかあの態度は」とローラさん。
「きっとあのイラつきかたは童貞じゃな。うむ、間違いない」とカーミちゃん。
「くっ、剣があれば鉄格子ごと叩き斬ってやるものを」とクラリスさま。
僕は「はあ~」と大きなため息を吐く。
この牢屋に入れられる際、僕たちは武器になりそうなものはすべて没収された。
まあ、没収されたのはローラさんの杖とクラリスさまの長剣ぐらいだったけど。
そして僕以外の3人は物凄く苛立っている。
当たり前だよね。
天国のような豪華な馬車の車体に乗っていたのに、気づけば「新領主の名前を語った犯罪者」にされて地獄のような環境の牢屋に放り込まれたんだから。
そしてどうやら門番兵さんの話によると、僕たちは裁判もなしに夜明けを待たずして処刑されることが決まったらしい。
つまり、僕は【神のツッコミ】の力を発揮できずに殺されるということだ。
いや、今の僕はそれなりの筋力はあるよ。
それこそ、門番兵さんたちの5~6人くらいは素手で倒せると思う。
しかし、この牢屋がある堅牢な建物の中にはおそらく2~30人の完全武装した門番兵さんたちが詰めている。
この牢屋に連行されるとき、広々とした詰め所にいる門番兵さんたちの姿を目撃しているからね。
え? ようするにどういうことかって?
くそったれなほどヤバいってことだよ!
ああそうさ、メチャクチャなレベルでヤバいってことさ!
四面楚歌とはこういうことを言うんだって実感するほどにね!
とはいえ、ひたすら心中でツッコミをしていても仕方がない。
何とか【神のツッコミ】の力以外で牢屋から脱出する手段を考えなくては……。
そう思った僕は牢屋にいる仲間たちを見回した。
牢屋の中にはローラさん、カーミちゃん、クラリスさまの純然たる3人の仲間たちがいる。
この3人と上手い知恵を絞り出し、処刑が執行される前に脱走するのだ。
うん、それしかない。
え? それよりもハルミはどこにいるかだって?
…………知らんがな。
僕たちが捕まったときハルミも一緒に捕まったのだが、なぜかハルミ1人だけ牢屋とは違う別室へと連れて行かれたのだ。
うん、プロテインの街の冒険者だったから拷問か何かされているんじゃない?
それこそ知らないけど。
とにかく、今は赤の他人であるハルミのことよりも僕たちのことだ。
正直なところ牢屋からの脱出も重要なことだが、それ以上に僕の代わりに領主の屋敷にいるという〝カントウ・ウメダ〟なる謎の人物のことのほうも気になる。
「勇者さま」
一体、カントウ・ウメダとは何者なのだろう。
「勇者さま、お助けに参りましたよ」
くそっ、マジでカントウ・ウメダとは誰なんだ?
「ゆーうーしゃーさーまー、おーたーすーけーにーまーいーりーまーしーたー」
「うるっさい! 誰だか知らないけど、そんな大声を出すな! 見張りの人がまた来るだろ!」
僕は声が聞こえたほうに顔を向けて叫ぶ。
三メートルほどの高さの壁には、窓の役目をした格子つきの四角い穴が1つだけ空いている。
僕はその穴から牢屋を覗き込んでいる人物と目が合った。
「やっとボクに気づいてくれましたか」
ハルミである。
別室に連れて行かれたはずのハルミが、格子越しに外から僕たちを見下ろしていたのだ。
そんなハルミは満面の笑みを浮かべる。
「さあ、ボクのサポートでここからオサラバしましょう」
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