第十七話  そのポーター、騎士団たちに強大な力を与える

 僕ことカンサイは、伝説の大賢者さまをはるかに超える実力者。


 などと言ったところで誰も信じるはずがなかった。


 でも、そういった口から出まかせを言う必要があったのだ。


 なぜならそういったことを言うことで、騎士団たちに僕の【神のツッコミ】スキルの力を与えることができたからである。


 そして騎士団たちからは案の定、一斉に僕が望んだが返ってきた。


「嘘つけええええええええええええええええええええええええ――――ッ!」


 ツッコミだ。


 僕は力を発動させるキーワード――「ナンデヤネン」と口にすると、騎士団たちに向かって盛大に右手を振った。


 するとどうだろう。


 僕の右手から噴出した黄金色の力の奔流は、僕にツッコんだ4つの騎士団の騎士さんたちの全身にまとわりついた。


「な、何だ! この全身にまとわりついている黄金の光は!」


「ち、力だ……すげえ力が腹の底から湧いてくる!」


「まさか、あの男は本当にチンチン・カイカイさまを超える存在なのか!」


「そ、そんなはずあるか! チンチン・カイカイさまは伝説の大賢者だぞ!」


「じゃあ、このとてつもない力はどう説明するんだよ!」


 半ばパニックになっている騎士団たちに、僕はもう一度だけ大声を出した。


「すみません、皆さん! 僕は嘘をつきました! 僕ことカンサイはチンチン・カイカイさまを超える実力者ではありません!」


 僕は言葉を続ける。


「訳あって皆さんの身体能力を通常の100倍に向上させるため、チンチン・カイカイさまの名前を使わせていただきました! 本当に申し訳ありません!」


「100倍だとおおおおおおおおおおおおおおおお――――ッ!」


 驚きの声を上げた騎士団たちに、クラリスさまは「どうだ!」と胸を張った。


「カンサイ殿から与えられた人知を超えた力を実感しているだろう! さあ、グラハラム王国が誇る騎士団たちよ! カンサイ殿から与えられた力を使い、魔物どもの襲来をここで食い止めるのだ!」


 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッ


 大地を震わすほどの雄叫びを上げた騎士団たち。


 そんな騎士団たちは両目を血走らせ、呼吸を獣のように荒げながら魔物たちがいる方向へ突進していく。


「え~と、カーミちゃん。騎士団の人たちは大丈夫だよね? 何か前もって聞かされていた状態と少し違うんだけど……狂戦士みたいな状態になってない?」


 うむ、とカーミちゃんは両腕を組む。


「お主の【神のツッコミ】によって脳のリミッターが解除されたばかりか、あらゆる脳内物質がドパドパ出ておるからの。じゃが、そのおかげで今のあやつらなら魔物の群れなど簡単に蹴散らせるじゃろう」


 僕がカーミちゃんから聞かされていた秘策――それは【神のツッコミ】スキルの力を騎士団の人たちにも一時的に使うというものだった。


 そうすることで、騎士団たちは一時的に超人状態になる。


 しかし、そうなるにはある条件があった。


 所有者である僕は代償なしに【神のツッコミ】スキルの超人的な力を何度でも使えるが、逆に僕以外の誰かに【神のツッコミ】スキルの力を使わせる場合には僕に必要がある。


 僕自身もよくわからないが、カーミちゃんが言うにはそうする必要があるからそうなのだという。


「まあ、結果がよければOKではないか……ただ、無理やり本人から力を引き出すので多少の副作用は出てくるがの」


 カーミちゃんがつぶやいた副作用という言葉を僕は聞き逃さなかった。


「ふ、副作用って?」


「う~む、それはな……」


 カーミちゃん曰く、一度でも【神のツッコミ】スキルの恩恵をもらった相手は二度とその恩恵をもらえなくなる。


 加えて力の効果が切れたときには、恐ろしい健康障害が待ち受けているらしい。


 頭痛、耳鳴り、めまい、嘔吐、筋肉痛、嫌悪感、不眠、下痢、便秘などに2週間は悩まされるという。


 僕は「ごめんなさい、騎士団の皆さん」と心から謝った。


 でも、狂戦士となったのは五天騎士団の中で4つの騎士団だけだった。


 現にこの場には1つの騎士団の人たちが残っている。


 理由はカーミちゃんから聞かされたけど、そこまで信じられると少し気恥ずかしかった。


 なんてことを思っていると、カーミちゃんは僕の背中をパンパンと叩く。


「ではカンサイ、魔物の群れは騎士団に任せてわしらは本命の元へ行こうぞ」


 僕は目をぱちくりとさせた。


「本命って?」


 カーミちゃんはずばり言った。


「こたびの騒動の原因である魔人を倒しにじゃよ」

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