【完結】実は有能ポーターだった僕、アホなリーダーの平手打ちでチートスキル【ツッコミ】に目覚めて世界最強に。美少女たちにもモテまくりで、トントン拍子に成り上がる。あとアホ冒険者たちは瞬殺ざまぁします
第十三話 そのポーター、ピンチを救う英雄に祭り上げられる
第十三話 そのポーター、ピンチを救う英雄に祭り上げられる
せ、1000体の〈
僕はあまりの脅威に目が点になった。
だ、ダメだ……数が凄すぎて理解が追いつかない。
それはクラリスさんも同じだったらしい。
「そんな馬鹿な……〈天魔の森〉の魔物たちが〈
「で、ですが事実です」
王都騎士団たちはかしこまって答える。
「斥候をしている仲間の情報によると魔物たちの進行は牛歩のように遅くはあるものの、確実にこの王都へ向かっているそうです。しかも、どうやらその魔物たちを率いているのは魔人とのことで……」
「ま、魔人だと!」
クラリスさまは落雷に打たれたように全身を震わせた。
「それはまことか!」
はい、と王都騎士団たちはうなずく。
「見た目は男で人間の姿をしているらしいのですが、背中には漆黒の翼が生えているとの情報です。そのような者は魔人以外に考えられません」
魔人。
はるか海の向こうにある大陸は魔界と呼ばれており、その魔界に住んでいるという魔族という種族の中で強力な魔法が使える生物のことを魔人という。
そ、そんな魔人がどうしてこの人間界に?
ましてや、どうして1000体の魔物を率いて王都に向かっているのだろう?
しばらく考えたあと、僕はある結論に達した。
うん、これは絶対に逃げないといけないやつだね。
周囲の野次馬たちも僕と同じ心境に至ったらしい。
「ひいいいいいっ、早く逃げないと!」
「1000の魔物なんてどうすればいいんだよ! しかも魔人までいるだと!」
「と、とにかく城へ避難だ! それしかない!」
「でも1000体の魔物と魔人よ! お城にこもっても助かるとは限らないわ!」
「ばあさん……わしの朝飯はまだかいの?」
などと野次馬たちはパニックの極みに達していた。
中には我先にと城へ向かう人たちも出てきている。
よし、僕もとりあえず城へ逃げよう。
1000体の魔物と魔人なんて普通に闘って勝てるわけがない。
それに伝令に来た王都騎士団を始め、この国には他にも屈強で超精鋭な騎士団たちが揃っている。
朱雀騎士団。
青龍騎士団。
白虎騎士団。
玄武騎士団。
そしてこの4つの騎士団に聖乙女騎士団を加えた5つの騎士団のことを、五天騎士団と言って近隣諸国の騎士団たちに大変恐れられているというのは有名な話だ。
だったら話は簡単すぎてあくびが出る。
僕たち一般人は早々にこの場から退避し、五天騎士団たちに魔人の討伐と〈
うん、やっぱりこれしかない。
などと僕が思っていると、クラリスさまは野次馬たちに「静まれ、皆の者!」と一喝した。
全員の視線がクラリスさまに集中する。
「皆の不安は私にも痛いほどわかる。1000体の魔物と魔人の襲来など常識から考えても異常だ。そんな魔人と魔物の群れが押し寄せてくれば、いくら防衛に優れているこの王都といえども多大な犠牲者が出るのは免れないだろう」
しん、と静寂が訪れる。
クラリスさまの言葉は的を射ていた。
僕も〈
確か数年前に別の国で原因不明の〈
この話は五天騎士団の存在よりも有名だったため、この場にいる野次馬たちも想像したに違いない。
下手をすればこの王都も二の舞になるかもしれない、と。
だが、僕たち一般人にはどうすることもできない。
それこそ、五天騎士団の人たちに頑張ってもらうしか対抗策はないだろう。
「案ずるな皆の者!」
通夜のような静けさが広がっていた中、クラリスさまは高らかに言った。
「確かに魔人と〈
うん、僕も知っている。
この国の武力の象徴でもある五天騎士団のことだね。
「ここにおられるカンサイ殿だ!」
………………………………………………………………はい?
僕は自分の耳を疑った。
あのう、クラリスさま……今、何と仰いました?
「間違いなくお主の名前を口にしたのう」とカーミちゃん。
「私にもそう聞こえました」とローラさん。
つまり、僕の耳が――ひいては脳みそが狂ったわけではないらしい。
クラリスさまの言葉は依然として続く。
「カンサイ殿は極悪非道集団のアーノルド一家の者どもを1人で倒してのけたばかりか、聖乙女騎士団の副団長2人を凄まじい力で瞬殺してみせた! その力はもはや神の領域である! そして、ここにきて魔人が率いる〈
否だ、とクラリスさまは喉が裂けんばかりの声量で叫んだ。
「カンサイ殿は魔人の討伐と〈
「あいにくとわしにそんな意図はない!」
カーミちゃんはふんぞり返りながらクラリスさまに言う。
ごめん、カーミちゃん……ややこしくなるから少し大人しくしていてね。
一方、自分の言葉で悦に浸ってしまったのか、クラリスさまはカーミちゃんを無視して野次馬たちを変な方向に扇動していく。
「さあ、皆でカンサイ殿を応援しよう! カンサイ殿ならばこのピンチを何とかしてくれる!」
野次馬たちは一斉に表情をパッと明らめた。
「そ、そうだ! カンサイさんならやってくれる!」
「カンサイさんこそ神様に選ばれた人間だ!」
「助かる! カンサイさんさえいれば私たちは助かるわ!」
「ばあさん……わしの昼飯はまだかいの?」
僕は呆然となった。
勝手に僕を英雄か何かに祭り上げていく野次馬たち。
そんな野次馬たちを見回しながら、クラリスさまは固めた右拳を天に向かって突きつける。
「カンサイ殿の名を呼べ! カンサイ殿の名を呼ぶことで
オオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッ!
空気が振動するほどの雄叫びが、野次馬たちから沸き起こる。
「カ・ン・サ・イ! カ・ン・サ・イ! カ・ン・サ・イ! カ・ン・サ・イ!」
案山子のように立ち尽くす僕の耳には、周囲から聞こえてくる「カンサイ」という自分の名前が呪いの言葉のようにずっと聞こえていた。
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