修学旅行編
第9話 修学旅行前の美優のミス
僕たちは朝早くから学校近くのバスの前に来ている。
そう、とうとう今日は修学旅行当日である。
去年までの僕ならそんなに楽しみではなかったかもしれないが、今は違う。なぜなら、好きな人に近づけるチャンスである。
それに、今回の修学旅行で目標を掲げようと思う。
それは三日月さんとの連絡先の交換!だ。
いきなりやりすぎ!?と言う意見もあると思う。だが、今回、たまたま美優さんと同じ班になることができた。だから、ある程度は喋れる前提で連絡先交換と言うミッションで進もうと思う。
まぁ、失敗するかもしれないけどね。
今はさておき、今は班員メンバー待ちである。ちなみに、メンバーは4人である。僕、颯太、三日月さん、クラスメイトの女子である。
「よぉ〜! おはようなるっち! 今日はよろしくなぁ〜!」
いつもの調子で喋りかけてくるのはいつも一緒、親友の颯太である。
今日も、の間違えだろ?
「おう、こっちこそよろしく」
そこに見慣れない人が。
「ちょっと、同じ班なんだから勝手に2人で盛り上がらないでよね??」
そこから混ざって来たのは今回の班で同じ班になった、ロングで黒髪の女子、
「ごめんごめん、桜田さんもよろしくな」
そう言って颯太が手を出す。
「うん、よろしくね!」
桜田さんは颯太の手を握り返す。
「鳴釜君もよろしく〜!」
そうして、僕にも手を出してくる。
「ぅ……」
声に出そうとしたが、やっぱりダメだった。
なので、頷いて手を取る。
彼女は僕が手を取るのを見てニコニコ笑っていたので、おそらく対人が苦手なことを知っていたのだろう。
それから数分後、そろそろ出発の時間になったのに三日月さんは現れなかった。
「三日月さん、遅いわね?」
楠木先生が僕たちの班のところに来て言う。
「美優ちゃん今日欠席じゃないですよね?」
桜田さんが心配そうに言う。
「うん、そう言う連絡は貰ってないけど…」
「大丈夫ですかね?」
颯太がいう。
まさか、ドタキャンで三日月さん休みなのか!? それはそれで萎えるぞ? でも、そうではないとすると、ここが集合場所だと知らないとか? そうだとまずいな…。念には念をと言うことで、
「ごめん、颯太。ちょっと三日月さん探してくるわ」
「おっけー、俺も行くぜ、なるっち!」
「じゃあ私も!」
「いや、桜田さんはここで待っといてくれ、入れ違いになるのだけは避けたいから! もし来たら俺にメッセージ飛ばしてくれ!」
いつのまにお前ら繋がってるんだよ! さっき、初めましてーって言ったばっかりだよね??
とか内心で突っ込みながら駆け出していく。
「分かった!」
「あと5分ぐらいしかないから急ぎなさいよー!」
楠木先生が珍しく大声で言う。
まぁ、距離が遠いから当然か。
「はーい!」
「よし、なるっちは校内を回ってみてくれ。俺は校外を探す!」
「分かった」
と言う感じの分担で探しにいくのだった。
※
〜美優視点〜
私は学校の自分のクラスに来ている。今日の集合場所は教室のはずだ。
あれ? 何で誰もいないんだ?
私は金曜日にちゃんと先生の話を聞くべきだったと後悔していた。おそらく、もうみんな集合して行ってしまったのだろう。
頑張って友達を作ろうと思ってたのに…、最悪だ。
そう1人で俯いていると、
「……三日月さーん!」
遠くから声が聞こえて来た。おそらく外であろう。
この声、鳴釜くん。
「鳴釜くんー!」
私は普通に声を出すことができた。
やっぱりこの人とは馬が合うんだ。
「あ、三日月さん! 何で教室に?」
「え? 今日って教室集合じゃないの?」
「違うよ? まぁ、いいから降りておいでよ!集合場所は学校前の道路!」
「え! そうだったの!」
そう言った後、急いで鳴釜くんの所に行き、急いで道路の方に向かったのだった。
着いたところには、輝星くんと、桜田さんと先生とバスが居た。
いや、バスが居たっておかしいか。
「美優ちゃーん!」
そうして、ハグをしてくる桜田さん。
その後、
「心配したよ? 大丈夫?」
そう言って来た。
そうか、私にはこうやって心配してくれるような人がいたんだ。知らなかった。この子となら友達になれるかも…。よし、ちょっと頑張ってみよう。
「う…、うん。ありがとう」
「美優ちゃんが喋った!」
「へへ、私を何だと思ってるの? もうー」
この子となら普通に喋れそう!
私の中で同級生の中で喋れる人、2番目になったのだった。
「はいはい、もう出発の時間だからバスに乗りなさいよー」
「はーい」
そう言って、桜田さんはバスに乗車する。すでに鳴釜くんと輝星くんはバスに乗っていた。
先生とは喋れるのはだいぶ先になりそう…。
「三日月さん、大丈夫だった?」
私は全力で頷く。
「そう。それは良かったわ。これからは気をつけるのよ」
私は首がもげそうなぐらい頷く。
「あなたの反省はわかったから、さあ、バスに乗ってね。頑張って喋れるようになるのよ。先生、あなたと喋ってみたいわ」
その言葉に私の胸は打たれたのだった。
この先生はめちゃくちゃいい人だ。
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