第8話 蒼の功績
あれから数日経過し、来週の月曜日から修学旅行に差し掛かった週末の土曜日、姉さんと近くのイ◯ンショッピングモールに買い物に来ていた。僕は全身黒と言う、自分でもわかる超ダサファッションだが、姉は黒のロングスカートに赤のトップスである。
姉曰く、「好きな子出来たならその子に見せても恥ずかしく無い格好をしていけ!」とのことで、服選びに付き合ってくれた。姉の推薦により服を着てみると、割といいなと思える服もあり、わりといい服を買えたと思う。
だが、一変、今は何故かフードコートにいる。
「蒼! これ奢りでよろ!」
姉さんはたこ焼きの店を指差して言う。
あぁ、分かったぞ、姉さんの狙いはこれだな? こうなったらもう無理だな…
とか思いながらも駄々を捏ねてみることに。
「なんで僕が姉さんに奢らないといけないのさ?」
「なんでって、私が服選んであげたお礼ないの? 私の可愛い弟よ」
まあそうだろうな。実際姉さんが居なかったらどんなのが良いのか分からないので、適当に買って帰りそうだったな…
「確かにそうだね。で、何個食べるのさ?」
「そうだね、8個入りを5パックぐらいお願いします!」
え、いや馬鹿なの?って、流石にネタか。ここは一つ、乗ってやろうじゃ無いか。
「分かったよ」
『あれ? すぐにネタバラシされるかと思ったんだけど、来ないぞ?』
とりあえず、一つは買わないといけないだろうし、僕は列に並んで姉さんが「冗談冗談!」と、言いに来るのを待っているが全然来なかった。
そして、え? と考えている間に
「らっしゃい!」
「ぁ……」
ここで異常コミュ障発動で、ジェスチャーでの会話を試みる。
『何故かネタバラシに来なかったけど、流石に1つでいいだろう』と言うことで、まず、人差し指を立て、1つの意味を指す。
「あ…、にいちゃん、1つってことでいいのかい?」
たこ焼き屋の店員さんはちょっと困った顔をして聞いてくる。
僕は必死に頷く。
「ソースとマヨネーズはどうします?」
僕はさっきより激しく首を縦に振る。
「いるんだね」
僕も首を振るのに疲れたので、ゆっくりと首を縦に振って、何とか購入することができたのだった。
『なんだか、子供が既に初めてのおつかいしたぐらい疲れてるような…』
それから、姉のところへ戻る。
「え、8個入りを5バックって言ったのに、なんで1パックしか買ってきてないの!?」
姉さんはガチトーンで言ってくる。
「え!? あれってガチだったの?」
「違うよ? ただ買ってきてくれたらラッキーみたいに思ってたよ」
びっくりさせるのが上手な姉である。
っと、その後ろの方に少し前に見た影を見る。
「あ、三日月さんだ」
無意識に声を漏らす。
「え? どれどれ?」
姉さんは興味津々で僕に寄ってくる。
そこには美優さんと美優さんのお母さんがいた。
「ほら、今席に座ろうとしている2人」
そう言うと、普段の姉さんからはとてもじゃ無いが聞けないようなことを言ってくる。
「あー! この状況ができてるのは蒼、あなたのおかげだね」
『え!?……って、これはカッコつけなければ!』と、即興で出したのが、
「ふっ、僕は何もして無いさ。頑張ったのはあの2人さ」
『決まったぜ』自信満々に言うが、
「え、きもー」
引き気味に姉さんが言う。
「あ…、僕の決め台詞が……」
1人落ち込む。
でも、まあ、そんなことはどうでもいい。今ぼくの目線の先にいる美優さんと美優さんのお母さんは前の旅館の時とは似ても似つかないく、とても楽しそうなのだから。
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