新世界へようこそ。

ふぁる

第1話 地球の管理者と。

ある晩いつもの様に眠るとふと目が覚めてしまった。辺りを見渡すとどうやら草原のような場所にいる。


どこだここは?地平線の彼方まで草原しかない。昨日はいつも通り寝ていたはず。もしかして夢でも見ているのか?


「おーっとごめんごめん!待たせたかな?」


キョロキョロしていたらいつの間にか5メートルも離れていないところにテーブルがあり、椅子に座り優雅に何やら飲んでいるパッと見中学生くらいの男が居た。


「え、いつのまに、誰……?」

「ははは、戸惑うのは無理もないよね!まあ気にしないでさ、ほら!君も椅子に座りなよ!」


いつの間にか現れていた奴にいきなり椅子を勧められてもと思っていると。またもやいきなり気がつくと僕は男に勧められていた椅子に座っていた。


「さてさて悪いけど椅子に座ってもらったよ!さてね、寝ていた所を悪いけど今日は僕のためにここに来てもらったよ!」

「僕のために?いや寝ていたところをって、これ夢だよね?」

「んー、夢と言えば夢だけど現実でもあるよ!ほら、頬をつねっても痛いでしょ!ほら君も自分の頬をつねってごらん!」


そう言いつねった頬を少し赤くした僕がポカんとしているのを見かねて僕の頬をつねって来た。


「いたっ」

「ほら、痛いでしょ!」


何だこの中学生男子は。何で僕はいきなり頬をつねられているんだ。びっくりしていると男がまた意味の分からない事を言いだした。


「実はね、地球に飽きちゃったんだよね!」

「はい???」


地球に飽きた?何言ってんだこいつは?えぇ…。


「でね、そこでね!いっそ地球に今までに無いような事をしようと思ってるんだよね!」

「は、はあ……」

「ほら地球で最近よくあるじゃない!ファンタジーだのなんだの!あれを取り入れようと思ってるんだよね!まあつまりパクっちゃおってことね!」


ファンタジー?取り入れる?さっきから何を言ってるんだこいつは?いやそれよりも夢だよなこれ。なんなんだ。


僕が戸惑っている間にも男は矢継ぎ早にどんどん話を進めていた。ファンタジーと言ったと思ったら魔法だのスキルだの。この男は漫画やアニメの見過ぎじゃないだろうか。僕も好きだけど地球に取り入れるとは意味がわからない。


「あの。それで……」

「うんうん!なにかな?!」

「貴方は一体なんなの?」

「なんなの?なんなのとは?ああ!そうか!言ってなかったね!僕はこの星、地球の管理者さ!」


地球の管理者??へ?ますますコイツは頭がおかしいのかもしれない。管理者って何だよ一体。


「この星を造ったは良いけどさ、ほら、人間はいつまでたっても戦争戦争だろう?人の営み観るのも楽しいけどね!他の動物も植物もあるってのにもうさ!まいっちゃうよね!」

「は、はあ……あの、それで管理者っていうのは?」

「うんうん?えっとね今言った通りこの地球を造ったの僕なんだよね!まあいきなりじゃ信じられないだろうけども!」

「まあいきなりはちょっと」

「うんうん!素直でよろしい!それでね、君にやってもらいたいのはほら、さっき言った通り最近のアニメやら漫画やらでダンジョンだとか迷宮だとか言うのあるじゃない!?冒険してモンスター倒したり!」

「ありますね」

「それを地球の皆にもやってもらおうと思ってるんだよね!」


駄目だますます意味がわからなくなってきた。魔法やスキルと言ったことからゲームの話かと思ったらダンジョン、迷宮を地球の皆にやってもらおうと思ってる?地球にそんなものはないのに。


にこにこしながら目の前の男が自分を見ているけれど何と答えて良いのかわからない。でも仕方ないと思う。いきなりそんなこと言われて「そうですね!魔法やスキルやら迷宮?ダンジョン?造りましょう!」とはならないしそもそも出来ないし。


「できるよー!あ、さては僕がこの地球の管理者って信じてないね?!ま、いきなり言われてもそうだよね!じゃあちょっと待ってて!今から信じられるかわからないけれどちょっとしたものを君に見せるよ!」


え、この男僕の考えていることを当てた……?そんなことできるのか?それに僕に見せるって一体何だろう?


「えっとねー何処が良いかなー。」


男が何やらブツブツ言いながら唸っている。何処が良いって、何処かに何かあるんだろうか。


「あ!ここが良いね!この国未だに核兵器なんてバカみたいなもの持ってオラオラしてるし!うん!ここにしよう!」


核兵器持ってオラオラしてる?核兵器を持った国はいくつかあるけど、オラオラって。


「よし、そうと決まったらヨイショっと」


男がそう言うと僕と男のすぐそばに、いきなりモニターが現れていた。地球のどこか、軍事施設のようなものが映っていた。


「ここはね、地球のとある国の軍事施設なんだよ!今からここを破壊しちゃうから観ててねー!」


は?!軍事施設を破壊する?何冗談みたいなことを?それに今からって何を言ってんだ?


「ふふふ、まあ良いから良いから!あ、安心してよ!周りの動植物にはできる限り被害出ないように威力抑えるからさ!軍事施設にいる人達はまあ仕方ないよね!さ、いっくよー!」


男がそう言うとモニターに映る軍事施設がいきなり空から降る光に飲まれ、爆発し炎上していた。


「ふふふー、今観て貰った軍事施設は一般人が住む所のすぐそばにあるからね!さ、スマホとやらでニュースやらSNSを観てごらんよ!今はスマホ持っている者皆が好きに情報広めているからね!」


男はそう言って僕にスマホで観ることを勧めてきた。だけども僕は寝ていていきなりここに居た。当然持っていなかった。


「あ!そうだね!ごめんごめん!はい君のスマホだよー!」


地球の管理者と名乗る男はそう言うと僕の使っているスマホと同じものをさしだしてきた。


「うんうん!なんたって君のだからね!」


信じられず受けとって見ると、普段僕が使っている物だった。入っているアプリも同じだし。待ち受けも僕が設定している物だ。


適当にSNSを開き男が言っていたように誰かが今目の前で見せられた事をどのワードで探そうかと思って居るとトレンドなにやら軍事施設やら炎上やら戦争やらとある。


「えっ、まさか……」


目の前の男を見ると男は相変わらずにこにことしていた。視線をスマホに移すと先ほど僕が観ていた軍事施設と同じ場所が映り、同じように炎上していた。


「これは、さっきの?ちょっと待ってよ、君は一体これってどういうことなの?!」

「ふふふーさっき言った通り僕は地球の管理者さ!」

「神様、ってこと……あ、神様ですか?」

「別に敬語じゃなくて良いよー!君無神論者でしょー!それに地球の皆が信奉する神とは違うかなー!ま、皆が信じる神ってのがいるのかは僕も知らないけどねー!」

「は、はあ……」

「僕はまあさっきも言ったようにこの地球を造ったただの管理者さ!ま、大したことはしてないよー!暇つぶしに地球造って暇つぶしに地球を眺めていただけさ!」


「……暇つぶし」

「そ、暇つぶし!」

「あの、それで自分に何をして欲しいのですか?」

「あらら、最初と違って畏まっちゃったね!もっと楽にしてくれて良いのにー!」


そうは言われてもさっきの映像を見せられるとどうしようもなかった。目の前に居る管理者を名乗る存在はあの軍事施設をにこにこしながら破壊できる存在なのだ。自分1人造作もないだろう。


「まあ良いや!それでねー君にやってもらいたいのはズバリ!迷宮?ダンジョン?まあダンジョンで良いや!そのダンジョンとやらを造って好きにしてもらいたいんだよねー!」

「えっと僕にそんな力はないのですが」

「大丈夫大丈夫!なんたって僕は地球の管理者だからね!地球に存在する君にその力を与えるなんて事は朝飯前さ!ということでさっそくだけど君にはその力を与えるよー!ちょちょいのちょいっとー!」


管理者が気の抜けるような事を言うと僕の中に何かが入って来た。今まではこの世にはアニメや漫画の中にしか存在しないダンジョンと言う物の造り方が分かったのだ。


例えば地球にある何とか塔だとか、何とかタワーの様に、地上から上へ上へと登るように中で出てくるモンスターを倒していくような物。例えば洞窟のように地上から地下へと進みモンスターを倒していくような物。はたまた今のゲームに多くなってきたような、オープンワールドと言うなゲームのようにモンスターを倒していくような物。そんな物の造り方が分かった。ただ、どうしても気になる事があった。


「僕にダンジョンを造って、どうしろって言うんですか?」

「うんうん。エンタメって言うのかな?僕を楽しませて欲しいかなー!あ!そうそう!別にその力を使って気に入らない人間を殺せとか、気に入らない国を破壊しろとか、それこそファンタジーに良くあるように君に他の星の奴らと殺しあいしろとか言うわけじゃないからねー?まあできるけどね!」

「できるんだ……」

「できるできる!何たってそういう力だからね!あ!ただし地球を破壊するとかはダメだよー?!僕の暇つぶしに造った星で僕の暇つぶしで君に与えた力で地球壊されたら元も子もないからね!」

「さ、さすがにそんなことしませんよ!」

「良かった良かったー!ふふふ!」


いやまあ気に入らない国だとか人だかは知らないけれども。もしもこの力を使ってこれからする事を僕がやっていると知られたらそれには対処しないといけないだろうから。


「そうだねー。その時は君に任せるよ!あ、そうそう!何故君が選ばれたかと言うとねー、まあ深い意味はないよ!」

「そ、そうですか。それはなんとも……はは。」

「強いて言うなら若くて独り身で身軽ってことかなー!それに友達も少なそうだし!これからやろうとしている事を考えたらその方が良いでしょー!」

「まあそうですね。確かに僕には親ももう事故で無くして居ないですし、生きていくために必死だったので友達もろくにいまそんからね……。」

「うんうん。そうそう!数少ない友達にどう言うかとかは君に任せるよー!秘密にするも良し!秘密を明かして協力するも良し!適当にやっちゃってー!」


僕が反応に困っていると管理者が相変わらずにこにこしながらこう言ってきた。


「さて!君はもうダンジョンの造り方がわかるだろう?

「はい、先程ので分かりますよし」

「うんうん良かった良かった!それじゃあさ!ダンジョン造り始めるに当たって、君のダンジョン運営をサポートする者が必要だと言うのはわかるだろう?」

「勿論です。従者と言うか騎士というか、そんな感じのですよね」

「そうそう!それをね、今ここで造ってよー!どんなの造るか見たいんだ!」

「え、今ですか?」

「ダメかい?」


さっきまでにこにこしていたのに眉尻を下げ残念そうに管理者は呟いた。何だか申し訳なくなり思わず「やります!」と言ってしまった。


「やったー!じゃあやってみてー!」

「わかりました。それでは……。」


僕はそう言って、先程軍事施設を破壊された事を確認するために使用していたスマホに目をやった。なんと管理者の力によってこのスマホを使うことでダンジョン運営出来るようになっていた。


そして今から僕がするのは、そんなダンジョン運営を僕1人でするのはとても大変で、しかもこの先地球の国のお偉いさんとも関わることになるだろうから、それを手伝う者を造らなければならない。


ん?待てよ?地球のお偉いさんとも会うとなると、人型の方が良いか?よしそうしよう。化け物じみたりしたら怖がらせるかもしれないから。まあ、ダンジョン造れる存在と言うだけで怖がられるかもしれないけど。


スマホにいつの間にかインストールされていた【ダンジョン】というアプリを開いた。そこには僕がダンジョンを運営するに必須の物が全て揃っているようだ。しかもこのスマホ、管理者パワーによって僕にしか仕えず、破壊されず、手元から離れても意識さえすれば瞬時に手元に戻るようだ。管理者パワーすごい。


さて、そんなスマホに入ったダンジョンアプリを開いて僕は今から初めての仲間を作らなければならない。僕が地球の人間とやり取りする際、もしかしたら、いやたぶんほぼ確実にお偉いさんとも関わるし一般人とも会うかもしれないときのために人型の存在を造ろう。


そう思いスマホを操作すると僕の目の前に管理者以外の存在が現れた。身長は僕より少し高いくらい、170cmほどかな。目は青く透き通り、髪はプラチナでショート。服はキトンのようなもの。そして何より背中に翼がある。そして胸に目をやると巨乳と言う程でも無いが胸がある。そう、僕がダンジョンを造るに当たってサポートしてもらう者は、男か女かで考えて女の人にした。理由は単純、僕に従いサポートしてもらうにしてもこの先男に世話してもらうと言うのは何かむさ苦しい。それだけ。いや、本当に。やましい気持ちはありませんよ?たぶん。


その時視界の隅に映った管理者がにこにこと言うか、にやにやしていることに気がつき思わず真顔になってしまった。そうだ、管理者には僕の考えがわかるんだった。


するとすぐ側から「あの」と声が聞こえた。彼女からだ。


「あ、や、そのどうも初めてまして。貴女を造った、いや、えっと召喚した者です。」

「ふふ。私を造っていただきありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「あ!そ、そうだね。えーっとユキ、君の名前はユキにしよう!」

「ユキ、分かりました。私はこれからユキと名乗ります。」


そう言って彼女は微笑んだ。また視界の隅で管理者がにやにやしている。自分で造っておきながらあまりの綺麗さにてんぱっていたのを見られていたのだ。ちくしょう。


「あの、それで貴方様のお名前は」

「あ、そ、そうだ言ってなかったね。僕の名前は樹、橘樹だよ。これからよろしくね。」

「橘樹様ですね。素敵なお名前ですね。わかりました。」


っとここでそれまでにやにやしていた管理者が今度はにこにこしながら「やー青春だね!素晴らしいねー!」と言いだした。照れくさくなっているとユキが管理者に「あまり樹様をイジメないでくださいませ」と言い何だか情けなくなってしまった。


「いやー失敬失敬!ごめんね樹君!やー、地球を眺めていると同じように美人に話しかけられてんぱってしまう人見たことあったけど、実際に見ると新鮮だね!なんだか若くなった気分だよ!」

「勘弁してください。あまり慣れてないんですよ……。」

「そうだよね!君両親亡くしてから独り身で、18歳だよね?!大変そうだもんね!」

「そうです。高校入ってすぐに両親亡くしてからはバイト漬けだったので」

「年頃だもんねー!」

「は、はあ」

「それじゃ、ユキちゃんもこれからは樹君をよろしくね!」


ユキはそう言われると微笑みを浮かべながら「はい」と答えていた。


「じゃ樹君をサポートするユキちゃんも出来たし長くなっちゃったけどここらへんでお話はおわりにしようかな!あ!言い忘れてたけど君の他にもダンジョン運営する人いるけど仲良くね!」


爆弾発言である。たしかに僕だけとは言われて居なかったが。しかし仲良く出来るだろうか。不安だ。喧嘩売られたらどうしよう……。


「勿論その人と戦えなんて言わないからねー!というかダンジョン運営する人どうしで争ってたら地球壊れちゃうからね!仲良くが一番さ!」


良かった!どうやら争いにはならないようだ。もしもそんな事になったら負ける自信しかないから助かった。


「じゃそろそろ本当にお別れさー!この先も樹君ユキちゃんとは会うこともあるかもしれないけれど、とりあえずばいばーい!」


管理者がそう言うと次の瞬間には樹はユキと一緒に樹の住むに居た。

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