悠々自適な幽閉生活のはじまり 1

 そこから先は、ほとんどがアドリアーナの予想通りの展開で進んだ。


 プロムから早々に帰宅したアドリアーナに驚いた両親や兄のグラートは、アドリアーナの話を聞いて激高し、その日のうちに城へ抗議へ向かった。

 そしてヴァルフレードが帰城し対策を練る前に国王に謁見の時間を取る約束を取り付けて戻ると、ジラルドも巻き込んで、アドリアーナがクレーリアに危害を加えていないという証拠を集め、ついでにヴァルフレードの王太子の資質を問う署名を同派閥の貴族たちから集めて回ると、それを持って謁見の場に赴いた。


 もちろん、顔を青くしたのは国王夫妻とヴァルフレードである。

 ヴァルフレードなどはまさかここまでの問題に発展すると思っていなかったのか、蒼白になって言葉もないようだった。プロムのときの威勢はどこへ消えたという感じである。


(お父様とお兄様はこういう時容赦ないからね)


 父とグラートは徹底してヴァルフレードの非を追求し、反論一つ許さなかった。

 ジラルドもその場に同行してくれて、証拠不十分どころか、アドリアーナがクレーリアに危害を加えていない証拠があることを追求。さらにアドリアーナと言う婚約者がありながら男爵令嬢にうつつを抜かしたヴァルフレードの不義理を持ち出して、非は王家にあることを明言してくれた。


 国王の甥と言う立場で王位継承順も上位のジラルドの発言は、ブランカ公爵家以上に重くなる。

 その場に同席していた宰相も王妃もヴァルフレードをかばわず、ヴァルフレードは話し合いの席で完全に孤立した。


 ヴァルフレードはその場にいながらいないものとして扱われ、彼を抜きにして話し合いは進められた。

 国王も今回の件では全面的にヴァルフレードに非があると認めたが、しかしながらプロムという公式な場で、大勢の貴族の前で王太子が発言してしまった言葉の撤回は、そう簡単にできるものではない。

 そのことはアドリアーナも、父や兄たちもわかっていた。


 婚約が白紙になるのは確実で、さらにはアドリアーナの幽閉まで宣言してしまっている。

 王太子が自身の発言を簡単に撤回しては王家の威信が傷つく。

 何時間もの話し合いの末、やはりアドリアーナは表向き幽閉されるという形になると結論が出た。


 どこかの折を見て幽閉を解く形で動くと国王は約束してくれたが、半年や一年で解くわけにもいかないので、しばらくはアドリアーナは幽閉先で過ごすことになる。

 そのうえでアドリアーナの幽閉先をどうするかという話になり、王都から少し離れ、他の貴族の監視も少ない東の国境付近の王家直轄地にある離宮が妥当だろうと言うことで落ち着いたのである。


 幽閉先にはブランカ公爵家から使用人を連れていくことも許され、不自由しないように王家からも使用人を出し、さらには莫大な生活費も王家から支給されることになった。


 さらにブランカ公爵家には多額の慰謝料も支払われ、アドリアーナがヴァルフレードの婚約者から外れることへの補填として、ブランカ公爵家の縁者を大勢文官や武官として重用してもらえる運びとなった。

 これが、王家が出せる最大限で、父や兄はここまで引き出してようやく納得を見せた。


 そうして、国王や王妃から何度も何度も詫びられながら、アドリアーナは東の王家直轄地にある離宮へと旅立ったのだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る