あなたが覚醒する物語
@hikarukawa61
第1話 カイの物語
カイは光の国の王子であった。光の国では全てが光で創造されている。人間の肉体から、大
地の砂から、果物から、海から、空から、何かから何まで、全てが光で出来ている。
だから、排泄物もすぐに光になるから、残ることはない。
光の国は基本的には平和ではあった。
ただし、それはとあるルールによって成立している話ではあった。そのルールとは、神の眼と 呼ばれる存在の事である。神の眼とは光の国における絶対的な法律である。 現代の私たちでいうところの人工知能のような存在で、姿は巨大な光の球体をしている。 光の国の城の、地下で管理されており、神の眼が全ての光の国の住人の動きを管理しているの だ。神の眼の判断はAIよりも正しく、正確で、全ての住人の生涯を数値化する事ができるので あった。例えば、ある人物が誕生した時、その人物がどれほどの才能をもち、どれほどの影響 を世の中に与えるか数値化することできる。 それは完璧に当たる。例えば、芸術の才能が100点満点中80点の人間は間違いなく、世の中で 活躍する。ただし、その道を選択しなくてもいい。 だが、全ての人間が何の疑問も所有することなどもなく、神の眼が決断する生き方を選ん だ。皆、自分が納得する生き方もするから、犯罪も起きないし、もし起きたとしても、その脳
波から送られてくる犯罪の信号のようなものを神の眼が瞬時に見抜いて、テレパシーで直接、 慰める。 別段、洗脳というわけではない。強制はしないが、未だかつて、この慰めに逆らったものは いない。皆、心が癒されるから疑問はなかった。 全て、神の眼による生き方を国民は選んだ。
たった一人を除いては。
カイは疑問をもっていた。 人の生き方とは、自由であるものであり、成功する自由もあるならば、失敗する自由もあると 感じていたからだ。いや、彼からすると、何が失敗で、何が成功かすら分からなかった。 どれも、成功にみえた。彼からすると、すべてが明るい可能性に溢れており、神の眼など必要 はなかったのだ。
「父さん、僕は本当の光を求めます。」そう言って、カイは王国を単身で去ることにした。 国王と武術と芸術の才能が、それぞれ95点というとてつもない数値をあらわしていた彼ではあ ったのだが、彼はこの国を離れることを決めたのである。 だが、誰も止めはしない。この国では基本的には本人の意思を否定したり、止めてはならない というルールがあり、国を離れるものがいた場合、引き止めてはならないという掟がある。 だが、今までの歴史の中でそれを実行したものはいないし、発想すらなかった。 そうして、カイが光の国から離れようとしても、皆、戸惑いすらなかった。実の父や母であっ てもだ。彼らの心は神の眼と共にあるからだ。神の眼の意思に従うから不安などない。 カイは神の眼ではなく、自分の心に従っていた。ただそれだけだ。だが、自分の心に従う 時、なにかとてつもない真実に触れているような気がした。彼はその真実に触れた感覚を至福 の炎に触れると、表現していた。 何か熱いものが胸の奥から込み上げてくる感覚があり、彼の中ではそのような形容詞で落ち 着いていた。 カイは何の恐れを抱くこともなく、光の国の彼方へ進んだ。ただ、ひたすらに走った。光の ような速さで。光の国の先はただの真っ白な光だけが続いていたのだった。ずっと光だった。 自分が進んでいるのか、静止しているかすらわからない。 けれども、彼の心ははじめて生を授かった赤ん坊のように、新鮮な心持ちで、ワクワクしてい た。微笑みながら、走った。前へ、前へ。白い光の向こう側にある何かを信じて、求めてい た。
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