あの日地球にダンジョンが出現した ~ニート×ファンタジーは最強です~

笠鳴小雨

第1章 第一ダンジョン攻略編

第1話 あの日



 あの日、突然俺はダンジョンに落ちた。


 これがすべての物語の始まりだったのだ。



******************************



 その日俺はいつも通りランニングを終えて、コンビニで朝ご飯を買った。

 この後の予定は、高校へは行かずに自宅を警備するのが俺の仕事だ。

 俺の仕事は世間一般では、ニートとか呼ばれているらしい。


 そういえばこの前、画面越しの友達にニートがなんで体なんて鍛えてるんだって言われたこともあった。

 それは、単純なことだ。

 自宅を警備することが仕事なんだ、お腹がブヨブヨだったら警備なんかできないじゃないか。


 そんなことを考え、地平線まで続く畑のそのさらに先にある顔を出し始めた朝日をぼーっと見ながら家に向かってスキップしていた。


 世界が薄っすらと光を灯し始めたその時、俺の見ている世界だけが一瞬で暗くなった。

 ただし、それだけではなかった。


「うわあぁぁぁーーー!!」


 そう俺はただいま絶賛フォーリング中アンド絶叫中。

 完全にこれは命綱なしのバンジージャンプしているようだ。

 こんな感じで状況を説明しているが、実際は怖すぎてちびりそうだ。

 視界も真っ暗。

 てか、このままこの速度で落ちたら確実に死にますけど。

 てことで、パラシュートなしのスカイダイビングとか様々な体勢を試みるが………………。

 まあ、分かってましたよ、こんなんで減速なんて全然しませんでした。


 すると。

 急に視界と思考がゆっくりと流れ始めた。

 あっこれ走馬灯ってやつかな。

 死んだわ、お疲れ俺、そしてさようなら……ポチ。


 …………って、あれ??

 よく見るとこれ物理的に減速してるかも。

 なんか重力が軽くなってきたし。

 いや、そうだわこれ、確実に減速してますね。


 まじか。

 これ完全に物理法則的なの無視してない?

 えっ何魔法とか??


 すると、途端に足が衝撃もなく地面に着いた。


「無事到着したけど、真っ暗すぎて何も見えない」

 そう呟くと視界が徐々に明るくなった。

 朝日の色とは違う暖色の光がその部屋全体を照らした。


「部屋? 簡素な部屋だな」


 そこには8畳ほどの部屋があった。

 壁や天井、床は一面固められた土でできていた。

 家具は机と椅子だけがあり、壁一面には様々な種類の武器が飾られていた。

 そして一番目についたのは重そうな石扉であった。


 俺は上を見上げた。

 そこには落ちてきた穴がある。


「うわっ、あそこから落ちたのかな? 米粒じゃん」

 穴をよく見ると米粒よりも小さな白い光が見える。


「本当によく無事に生きてたな、しかも無傷って」

 そして、俺はつい涙が出そうになってしまった。

 そう、俺の頭上からはコンビニで買ったお弁当とスポーツドリンクがふわふわと落ちてきたのだ。

 それをキャッチして、再度部屋へと向き直る。


「この部屋って完全に人の手が入ってるよな。よくこんなところに作ろうと思ったな」

 そして弁当の入った袋を机の上に置き、壁に飾ってある一本の剣を手に取ってみる。


 あれ?

 これ銃刀法違反で逮捕される?

 てか、ここ本当に日本かな。

 こんなに落下してきたんだからもしかしたらブラジルの可能性もあるよな。

 いや、ロンドンって可能性もあるな。

 さっきの魔法みたいな力って完全にホグ◯ーツ魔法学校へようこそ的な感じっぽいし。


 って、おいおいおい現実逃避するんじゃないよ俺。

 しっかりと現実見ないと。


 ということで、一番怪しそうな扉をよく観察してみる。


 が、特になんの変哲も無い巨乳の全裸お姉さんが描かれているだけの石でできた扉だった。

 つい、ほんの出来心でお姉さんを触ってみると扉よりわずかに浮いて光る文字が今まさに書いているかのようにスラスラと浮かび上がってきた。


 ふむふむ、なるほど、ほー、そういうことですか。


 って、全然何書いてあるのかわかりませんでした。


 なんか今書いてるかのように文字が浮かび上がってきたので誰か見てるのかなっーて思って天井に向かって話しかけてみた。

「あのー、どなたか存じませんが全然何書いてるのか読めないんですけど。何ですかこれ、古代文字がなんかですか?」


 すると、文字よりさらに浮いて人のホログラムのようなものが映し出された。

 そこに映っているのは昔の神が着ているようなシワシワの白い服を身に纏った白髭ダンディなおじさんだった。


「あっども、こんにちは」

『――――』

「えっ言葉通じないかな?」

『やあ、こんにちは。急にこんなことになって戸惑っているとは思うが落ち着いて聞いてほしい』

「言葉わかるじゃん。てか、もうだいぶ落ち着いてるよ俺。で、ここどこ?」

『私はルイというものじゃ。君たちの世界とは異なる世界の一国で王をしている。その話からまずしようと思うので聞いてほしい。少し長くなるのでそこの椅子に座ると良い』

「いや、だからまずここどこか教えて? 日本なの? ブラジルなの? ロンドンなの? それとも異世界かなんか?」

『――――』


 あっわかりましたわ、さっきから微妙に噛み合ってないと思ったら、これ録画かよ。


 ということで、おじさんの言う通りにイスに座りおじさんに向かい合う。

 あっお腹空いたから少しだけお弁当食べようかな。

 食料はこれだけだから少しずつだけど。


『さて、そろそろよいかの。まず今から話すことはその扉に書いてあることと同じじゃ。その文字を読めないことも考えてこの映像を残しておるので、読めない場合は聞いてほしい』


 はい、遅めの答え合わせありがとうございます。

 ただ、もう少しだけ早く教えてほしかったな。


『まず私は先にも言った通り君たちとは異なる世界の王じゃ。そして、我々の世界には魔獣と呼ばれる普通の動物とは異なる存在がいる。それらは、強大な力を持ち普通の人など簡単に殺されてしまう。そこで我々人類は遥か昔に神々に祈りを捧げて力を手に入れ、魔獣に対抗できるようになったのじゃ。その力とは、スキルと魔法と呼ばれるものじゃ。そうして、対抗すること800年、人類が攻勢に出始めたところで魔獣たちもスキルや魔法を使えるように進化をしてしまったのじゃ。さらにはダンジョンなる洞窟をも作り出し始めたのだ。それが我々の世界そして君の今置かれている状況に繋がっていくのだ。一旦、ここまでの話の流れを整理してほしい』


 ふむふむ、なるほど要するにホグ◯ーツ魔法学校は関係ないと。

 どちらかというと異世界ファンタジー関係なのか。

 ダンジョンか。

 ……てことは、この扉の先はもしかしてダンジョンとかなのかな。


『さて、そろそろ続きを話そう。そのダンジョンと呼ばれる洞窟では普通ではありえないほど強大な魔獣たちが誕生するようになったのだ。そして、魔獣たちはダンジョンで生まれ日が経つとダンジョンの外に出てくるようになった。我らはそれを阻止しようと数あるダンジョンを攻略しようとしたが、ダンジョンは我らの戦力よりも遥かに多く、このままだと数十年後には人類は絶滅してしまう。そんなところまで切羽詰まっていたのじゃ。そこで、我ら人類の至宝でもある大賢者様の案によりダンジョンの入り口のみを異世界に繋げて異世界の者たちに手伝ってもらおうということになったのじゃ。そして、そこがダンジョンの入り口というわけじゃ』


 おう、まじか、当たってしまったよ。


『そこで君たちの力が我らの世界の危機を救えるということなので、ダンジョンの攻略をお願いしたい。もちろんそのままの人間では簡単に死んでしまうので、神々の力によりダンジョン攻略に挑んでくれる君たちの世界の住人には我らと同じスキルや魔法の力が個人の能力に合わせて付与される。それらを駆使してどうか我らを救ってほしい。お願いする、我らの世界を救ってほしい』


 そう言って、おじさんは深く頭を下げた。


 ということは、ここはダンジョンの中ではあるが一応まだ日本にいるということだな!

 良かった良かった。

 だが、上には到底登れそうにないからな、ダンジョンに挑むしかないか!

 スキルや魔法ってのもやっぱり男ならば興味があるしな。


 あーでも死にたくはないな。

 あと、痛いのとかも嫌だな。


『あっ最後に言い忘れておった』

 とぼけた顔でおじさんが再び話し始めた。


『これから話すことはこのメッセージを最初に聞いたものだけが聞くことができる。君には本当に感謝している。君がこのダンジョンの扉を叩かなければ何も始めることができなかったのじゃ。そんな君には感謝の意を表してスキルと魔法を私から一つずつプレゼントするので受け取ってほしい。それでは君の冒険に幸あらんことを』

 そして、ホログラムが消えた。


 なんか貰えたみたいだけどどうやってそれを確認するんだか。

 地味にこのおじさん重要な情報を教えてくれなかったな。

 話の内容も背景的なことしか教えてくれなかったし、さあ頑張ってくれと崖から放り投げられた気分だ。


 と、まあこの場におじさんがいたならごねていたのだが一人だしね。


 とりあえずこの大量にある武器貰ってもいいよね?

 じゃなきゃ素手で戦えとか無理だし、痛いし。


 俺は壁に立てかけてある日本刀のようなものを手に取る。

「うわっ、俺これ使えなさそう。重心がだいぶ体から離れてて扱いづらいわ」


 それを壁に戻して、隣にあった脇差のような小さい刀を手に取る。

「おっこれなら使えそう。この大きさならもう一本欲しいな」


 ということで、周りを見渡すが同じような武器はなかった。

 うっ、夢の二刀流が…………。


 武器が一つだけじゃ心もとなかったので、次はリーチの長い槍を手にした。

「長いけど、洞窟じゃ振り回せないだろう剣よりはましかな」


 ということで、脇差・槍・お弁当袋を持ち扉に前に立つ。


 そこでふと気づいた。

 あっこれ弁当がめちゃくちゃ邪魔だ。

 収納できるバッグとか欲しいな。


 そう思った瞬間、手に持っていた弁当とスポーツドリンクが消えうせた。


「えっ、ちょっと待ってよ。どこ行った? ねえ、返してよ、俺の貴重な食料が…………。こっ、こんなことなら全部食べておくんだった!!」

 つい俺は綺麗なorzを繰り出してしまった。


 すると、目の前に


 【contents】

   コンビニ弁当「鮭」×1

   スポーツドリンク500ml×1


 と現れた。


「うわっ、びっくりした。ナニコレ オレガ イマ ウシナッタ ショクリョウ デハナイカ」

 ふっふっふっ、俺は気づいてしまったのだよ。

 俺は鈍感系主人公ではないのだよ!

 これは確実にアイテムボックスがあるに違いない!!


「さあ、現れよ!! 『アイテムボックスオープン!!』」

 すると、予想通り目の前にメニュー画面のようなものが現れた。

 そこに書いてある弁当×1を押してみると目の前に急に弁当が現れた。


「食料復活!!」

 いやー、素敵な発見ができました。

 これってどれくらいの容量が入るのだろうか。


 まあ、わかんないけど、どうせならここにある武器とか全部貰っちゃおっかな。

 ここでずっと飾られてても錆びるだけだろ、君たちは、俺が貰ってあげようではないか。

 そうして次々と武器をしまい込んだが、普通に全部収納できた。

 なので、ついでに椅子と机も頂いといた。


 さあ、俺の華麗なダンジョンライフの始まりだね!

 あっ、ちょっと待って。

 アイテムボックスがあることはわかった。

 どうにかしてスキルと魔法もわからないかな?


『スキルオープン!』

『スキル教えてっ!』


 全然何も起こらなかった。

 あとは…………。


『ステータスオープン!』


 すると目の前にアイテムボックスとは違う画面が現れた。


 【status】

   名前 ≫雨川 蛍あめかわ ほたる

   称号 ≫Number 1

   スキル≫異世界鑑定Lv.1

       アイテムボックスLv.max

   魔法 ≫水魔法Lv.4

   装備 ≫はじめての脇差


 あれ、分かったのは嬉しいけど思ってたのと違う…………。

 もっとこうステータスパラメーターとか種族レベルとか職業とかないの??


 おしっ、切り替えないとな。

 まず分かったのは水魔法が使えることだ。

 ついに魔法が使えてしまうのか!!


 水魔法の欄をさらに押してみると使用可能な魔法名が並んでいた。


 【水魔法】

   ウォーターソーサース

   ウォータージェット

   ウォーターフロア

   ウォーターバレット

   ウォーターバインド


 とりあえず一通り使ってみたが、MPか何かがマスクデータであるのか最初の2つしか使えなかった。

 ウォーターソーサースは水が少しだけ出てきた魔法で戦闘では使えないだろうが、飲み水としてはとても美味しかった。これで水には困らないだろう。

 ウォータージェットはホースから水を出す感じで勢いよく1Lくらいの水が噴射される魔法だった。

 他の3つは使おうとしても何も反応がなかった。


 おし、これで決まったな。

 俺の武器は水魔法のウォータジェットと大量の武器たちだけだ。

 これで頑張ってみよう。


 そして俺は重い石扉に手を掛けた。


「うおぉぉぉーー!!」

 はぁ、想像はしていたがこの扉重くて開く気がしない。

 この後、梃子の原理でめっちゃ頑張ったら開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る