タバコとロマン

ねもまる

ロマンを求めて


 俺には彼女がいた。

 身長が150センチ程度しかなく、髪の毛が腰まで伸びていて、やんちゃで、世間の分類に分けるのなら愛が重いと言われる少しメンヘラチックの彼女だが、決して束縛がひどいとかはなかった。

 俺も一途な性格なので困っていなかったが、タバコを彼女は嫌っていた。

 元カレがセブンスターを吸っていたらしく、その元カレに酷い仕打ちを受けたからだそうだ。

 だが俺は辞める気はなかった。

「タバコやめる気ないの?」

「それは申し訳ないがねえんだな。お前さんの元カレと違って品のないタバコは興味ないし吸わないから、許してくれ」

「あーなんか言ってたね。一途なタバコなんだっけ?」

「ああ。その通りだ。俺もこいつも一途なんだよ」

 そう。彼女が言う通り俺の吸ってるタバコは一途なタバコだった。俺がそのタバコに一途なのもあるが、タバコの名前の由来からその意味はきていた。

〈keep only one love〉

 一途な恋を貫き通す。

 この頭文字をとった名前のタバコを吸っていた。

 俺の性格にぴったりだったのと初めて吸ったタバコということで三年間吸ってきた。

「まあ意味は聞いたし悪い気はしないけど、じゃあせめて目の前では吸わないでね!」

「善処している」

 

 懐かしい会話を思い出した。

 天国でも元気にやっているのかな。

 と、タバコの煙を吐きながら考えていた。懐かしい思い出と、味と共に。

「今でもお前さんを吸うと思い出しちまうな」

 久しぶりに買った懐かしい緑のボックスに向かって声をかけた。

「だが、今の俺にはお前と恋はからすぎる」

 メンソールが喉に当たり辛かった。


 俺はもう新しい道を歩み始めていた。

 彼女との記憶は普段なるべく思い出さないようにしていた。だがこの恋のタバコを吸うと思い出す。

 今はもうだいぶ時は経った。彼女は今や俺の体の一部だ。彼女との別れが俺を強くしてくれた。そう言っても過言ではないだろう。

 思い出したい時や記念日には、緑の箱をかうようにしている。

 そして俺は新しい愛を探すために恋をしようと、タバコを変えた。

〈Man always remember love because of romance only〉

 と言う意味を持つ、マルボロに。








 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

タバコとロマン ねもまる @nemomaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ