第55話 告白された姉
~姉視点~
「お姉さま、私はあなたが好きです。家族としてだけでなく、恋愛対象として好きなんです。私はあなたに恋をしてしまいました。」
目の前の美優はツーっと涙をこぼし、微笑みながらそう言ってきた。
「なっ…あっ…えっ???」
私は直前の唇の感触と告白の衝撃で固まってしまった。心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。
「お姉さま、好きです。大好きなんです。好きという気持ちが溢れて止まりません。」
「うそ……そんな…。」
美優が…私を好き…?そんな…そんな都合の良いことって…。
「本当は花火の下で告白したかったのですが、どうしても気持ちが抑えきれませんでした。」
そう言って涙をぬぐい、ふふっと笑う美優。
「お姉さま、私はあなたに出会ってから二度も救われました。事故の時は命を、そして今は心を。最初の事故で私を救ってくれた時、私は恋に落ちました。」
「…で、でも、そんなの当たり前じゃん!私は美優のお姉ちゃんなんだもん…。なのに…それだけで好きになるって…。」
そうだ、私は美優のお姉ちゃんだ。だから助けるなんて普通だ。当たり前のことをやっただけなのに、なんでそれだけで好きになるんだ。
視界がぼやける。色々な感情がぐちゃぐちゃになり、涙としてあふれだしてきた。
「ふふっ、その当たり前の行動のお陰で、私は今生きているんですよ?それに、当たり前と言いながら自分の命をかけてまで私を救ってくれたのに、好きにならない訳がないじゃないですか。」
「あぅ……。」
「お姉さま、私はあなたの笑顔が好きです。優しさが好きです。少し天然なところが好きです。私のために怒ってくれるところが好きです。私をいつも守ってくれるところが好きです。好きなところはまだまだあります。言葉では言い尽くせません。そのくらい好きなんです。」
一呼吸置いた美優は両手を胸の前で重ね、まっすぐとこちらを見つめてくる。
「お姉さま……私と、お付き合いしてくれませんか?」
「う…うぁ…。」
涙がボロボロこぼれてくる。
「わたしも…わたしも、みゆのことがすきなの…。いつからだったか分からないけど…きづいたらすきになってて…。」
「…はい。」
「さいきん、はずかしくてちかづけなくて…それにいもうとをそんなめでみるなんてとなやんだりもして…。そんなわたしはだめだめなおねえちゃんで…たくさんみゆにめいわくかけてきて…これからもめいわくかけて…。でも…。」
美優に頭を下げる。
「こんなわたしでもいいなら…よろしくおねがいします…。」
「お姉さまはだめだめではないですし、迷惑と思ったことなんて一度もありませんでしたよ。…お姉さま、顔を上げてください。」
美優に言われて顔を上げると、綺麗な顔が再び目の前にあった。
「んむっ…。」
目を閉じ、二度目の口づけを受け入れる。二人して涙を流していた。
どのくらいそうしていたのだろうか。美優が離れていく。その時、上空からまばゆい光が降り注ぎ、続いて大きな音が聞こえてきた。そう、花火だ。二人で空を見上げる。
「わぁ…綺麗だね…。」
「えぇ、本当に綺麗ですね。」
「…ちょっと、私の顔見ながら言わないでよ。恥ずかしいじゃん…。」
「ふふっ、お顔がボロボロになってしまっていますよ。それでも綺麗ですが。」
「それはお互い様だよ。えへへ。」
二人で笑い合う。ちーちゃんと萌ちゃんに合流する前にメイク直さなきゃね。
………はっ!!
「あっ!!やばっ!!二人のこと忘れてた!!どうしよう!!」
「……お姉さま。丁度、萌から電話がかかってきました…。」
そう言って差し出された美優のスマホの画面には、萌ちゃんからの着信画面が表示されていた。
「あわわ…。と、とりあえず出て!」
「は、はい。」
美優はスピーカーモードにして通話に出る。
「……もしもし。」
『あっ!やっと出た!!も~、美優達おそ~い!!花火始まっちゃったじゃん!!』
「ご、ごめんなさい。」
『二人に何回電話しても繋がんなかったから心配したよ〜!!……で、成功した?』
「は、はい…無事に成功しました…。」
『わ〜!!!!おめでとう!!!!千咲先輩千咲先輩!!成功したって!!ほら代わって代わって!!』
『ちょっ、分かった。分かったから落ち着きなさい!』
電話の向こうがわちゃわちゃと騒がしい。
『あ、あ〜、もしもし美優?アタシよ。その…おめでとう。良かったわね。』
「ありがとうございます。」
『ええ。…ああ、それと色々あるでしょうし、今日はもう二人でいなさい。アタシ達もある程度したら解散するから。』
「分かりました。すみません。」
『良いのよ。じゃあまた大学でね。』
その言葉を最後に通話が切れた。
「ということで、今日はもうこのまま二人きりです。」
「そうみたいだね。じゃあ二人で花火を楽しもうか。」
そう言って空を見上げる。
「そうですね。」
美優も空を見上げる。どちらからともなく手を繋ぐ。
私たちは二人並んで花火を見ながら過ごした。
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