第23話 再び妹と出かける姉
~姉視点~
六月に入り梅雨の時期となった。この時期はジメジメしていて嫌だ。髪の毛のうねりもひどくなる。頭の上でドラゴンを飼ってるみたいだ。
洗面台の前に立ち、どう対処しようかと考える。
朝の用意も時間かかるし………いっそのこと坊主にするか??そしたらもう少しゆっくり寝れるだろう。
「この時期は髪がまとまらなくてやだねぇ…。ってことで坊主にするのはどうかな?」
隣に立つ美優に向けて冗談交じりに話す。
「絶対に止めてくださいね。」
目が笑ってない。怖い。
「もちろん冗談だよ。」
割と真剣に考えたが、美優が嫌らしいので止めておこう。
「…それで今日雨だけど、本当に行くの?」
実は今日、美優と駅前のスイーツ屋に行く約束をしていた。何でも期間限定で数量限定のスイーツが販売されるのだとか。毎年販売後すぐに売り切れるらしい。そんなに人気ならずっと売ってればいいのに。
「はい、出来れば今日が良いのですが」
「まぁそうだよねぇ。今度にしても売り切れてるだろうし。」
バレンタインデート(未遂)以来のお出かけだし、珍しく美優がわがまま言ってきたのだ。お姉ちゃんとして一肌脱がなければいけないだろう。
「じゃあ用意したら出ようか。まだ時間は大丈夫?」
「開店時間までまだ余裕があります。そんなに急がなくてもいいですよ。」
「りょ~かい。じゃあ用意出来たら呼びに行くね。」
「分かりました。待っていますね。」
美優は自分の部屋に戻っていった。
さて、この頭のドラゴンどうしようか…。
………いや頭のドラゴンってなんだよ。流石にパワーワード過ぎないか?
―――――
ポツポツと雨が降る中、二人並んで駅への道を進んでいく。なぜか傘が一本しか無かったので、肩を寄せ合って二人で一本の傘を使う。
ただ、それだと手を繋ぐことが出来なかったため、今日は腕を組んで歩いている。美優曰く、これも普通の姉妹がやることらしい。
姉妹って距離近いんだなぁ…。まるで恋人同士みたいな距離感だけど、女同士だからこの距離感でも大丈夫って事なのかな?
………ほんとに大丈夫なの??ドキドキするのは変わらないんだけど??
「…それにしても、こうして二人で出かけるのも久しぶりだね。」
「そうですね。前回は…その……。」
美優が申し訳なさそうな顔をしている。やべっ、話題ミスった。
「ああ、ごめんごめん。あの日のことを思い出させるつもりは無かったんだ。ただ、色んな事があったなぁって思ってさ。」
新しい出会いや入院生活、親の結婚式など、この数か月で色々なことがあった。
「そうですね。出会ってからまだ半年も経っていないなんて驚きです。」
「ほんとにね。ずっと前から姉妹だった気がしてきちゃうよ。」
出会って数か月後にこんな距離感にまでなる姉妹なんて普通いないでしょ。ってことは、なんだかんだお姉ちゃんとしてやっていけてるってことかな。
正直、自信はあんまりない。いっつも美優に迷惑掛けてる気がする。
「そうだったら良かったんですがね。本当はもっと前にお姉さまとお会いしたかったです。」
「おっと、嬉しい事言ってくれるじゃん。ちょっと照れる。」
なんてことを話しながら駅への道を二人で進んでいく。
出会った当時と比べて、美優との関係は大分変化したと思う。初めはツンツンしてて誰も寄せ付けない雰囲気だった美優が、今ではお姉さまって慕ってくれるようにまでなった。
こんな感じに会話しながら横並びに歩く仲になるなんて、出会った当時は想像も出来なかった。
何がきっかけで美優が変わったのかは今でもよくわからないが、それでも前よりはずっといい姉妹関係が築けているのだろう。
……まぁ何かと距離が近すぎる気はするけども。そこはご愛敬だ。
「そういえば、今日はどんなスイーツが目的なの?」
「一言で言ってしまえばケーキです。2月、6月、11月の特定の日しか売っていないので今日行きたかったんです。」
「なるほどね~。今日逃すと11月になっちゃうわけだ。そりゃ今日行きたいって思うよね。」
「はい。ですからお姉さまには無理をお願いする形になってしまいました。ごめんなさい。」
「ん~ん、謝らないで。私だって限定スイーツ食べてみたいし、一緒にお出かけもしたかったから丁度良いでしょ。」
「……ありがとうございます。やはりお姉さまは優しいですね。」
「ふふっ、そう?まぁなんてったって私はお姉ちゃんだからね。……あっ、そうだ!スイーツの後はついでにどこか行こうよ。前回行けなかったデパートとかはどう?」
「いいですね。是非行きましょう。」
「うんうん。ますます楽しみになってきたね!」
今日は前回遊べなかった分まで遊びつくすぞ!!
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