第7話 恥をさらす姉
~姉視点~
美優は頬から手を離し、再び私の手に重ねる。
…本当にどうしちゃったのこの子。お姉ちゃんわからない、なにもわからないよ…。この子に何があったの…?
「お姉さまどうしましたか?まさか、私に触れられるのが嫌でしたか?」
美優は上目遣いで目を潤ませながら聞いてくる。あざとい…あざとすぎるよこの子…。
「い、いや、まさかそんなわけないじゃん!ただ、ちょっと驚いただけだよ。」
「そうでしたか。それなら良かったです。」
そう言ってニッコリ笑う美優。
そもそもお姉さまってなんだ。お姉ちゃん呼び…はしてくれるイメージないけど、普通は姉さんとかじゃないのか?美優はお嬢様学校にでも通っているのか…?
「み、美優、ちょっと聞いていいかな?」
「はい、何でもおっしゃってくださいお姉さま。全てお答えしますよ。」
「…美優って、実はお嬢様学校に通ってたりする?」
「いいえ、普通の高校に通っていますよ。どうしてですか?」
「うーんと…その…お姉さま呼びはなんでなのかなーって。」
どうやらお嬢様学校ってわけでもないみたい。じゃあ、まじでなんでお姉さま呼びなんだ?
「ああ、そういうことでしたか。それはですね、私が人生で一番尊敬している方がお姉さまだからですよ。」
「なる…ほど?」
答えのようなそうでないような…。正直よくわからない。突っ込んではいけないところかもしれない。
というか、尊敬される要素なんて今まであったか?ずっと迷惑かけていたと思うんだけど…。なんなら今も美優の手助けが無ければ移動も出来ない。大丈夫?お姉ちゃんとしての威厳ある?
「そういえばお姉さま、私も1つだけとっても重要なことをお聞きしたいのですが、よろしいですか?」
美優の顔が少し強張る。な、何を聞こうとしているんだ…?まぁでも―――
「もちろんだよ!お姉ちゃんに何でも聞いて。」
数少ないお互いを知るチャンスだ。私はここでビシッと答えて、お互いの精神的な距離を少しずつでも縮めよう。さてさて、何を聞かれるのかな。
「お姉さまは彼氏いらっしゃいますか?」
「え…。」
え……まじ?そんなこと聞いちゃう?急に距離感バグったか?実は精神的な距離めっちゃ近かったりする?いやいやそんなわけないだろうけども。まぁ物理的な距離は今めちゃくちゃ近いんですけどね!!!…本当にどうしちゃったんだ美優。
「か、彼氏ってアレだよね。いわゆる男女の仲のやつ。」
いや他の彼氏は知らんけども。
「ええ、その彼氏です。」
そりゃそうだろう。
「……い、いるし~。それはもう1人や2人くらいいるし~。私モテモテだし~。あ、あたりまえじゃ~ん…。」
冷や汗を流しながら美優の顔から目を逸らす。わ、私モテモテなので。
「なるほどなるほど…。では、お姉さま。バレンタインの日に私とお出かけしたのは何故ですか?普通は彼氏と過ごすと思うのですが。」
うっ、痛いところをついてくる。
「そ、それは、彼氏が体調不良でまた今度にしようって…。」
いや~、あれは残念だったな~。私は彼氏と過ごす気だったんだけどな~。体調不良はしょうがないな~。いや~、残念残念。
「…お姉さま、ちゃんと私の目を見て言って下さい。それとも、私の顔など見る価値が無いという事でしょうか…。」
美優が俯いて肩を震わせている。やっちまった。
「彼氏いません!!嘘ついてすみませんでした!!あと美優の顔はいつまでも見ていられるよ!!!とっても可愛いよ!!!」
「いないのですね。それは良かったです。」
どうしてそこで微笑むのだ美優よ。死体蹴りして楽しいか???ってかハメられた。くやしい…。私がお姉ちゃんなのに…。
「…では、恋人はいらっしゃいますか?」
……?恋人?いないって言ったよね?美優はドSなの??そんなにお姉ちゃんをいじめて楽しい??お姉ちゃんは心の涙があふれて止まらないんだけど。
「…どういうこと?」
「…なるほど。すみません、間違えました。気にしないでください。」
なんだか腑に落ちないけど、よくわからないからいいや。それよりも早く他の話題に移ってほしい。
「ごめんなさい。最後に1つだけお聞きします。今まで彼氏がいたことはありますか?」
「ありません…。もう許して…。」
「ふふっ、分かりました。ありがとうございます。」
会話はそれっきりで、それ以降美優は何かを考え込んでいるようだった。…相変わらず手は重ねられているが。
さて、どうして私は妹に恥をさらしているのだろうか…。
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