寒くなってきたが、走れ!謎の男が、俺の勝利にかけているらしいぞ。あんた、だれ?

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 「走れ!」家にやってきた謎のおじさん客がくれたのは、「SFの扉を開ける鍵」でした。…何、これ?魔法に、かけられていませんか?

 楽しい競争って、ないものか?

 がんばってがんばって走り抜けて、良いことある?悩みどころな、日本。

 「走れ!」

 「寒さなんか、ふき飛ばせ!」

 そうは、いうけれど…。

 「ああ、寒い」

 「寒いものは、寒い」

 「急に、寒くなった?」

 きっと、暑すぎた夏の、リバウンド。

 「夏と冬の競争なんか、かんべんしてくれよな」

 ホント、競争って、何?

 いろいろな意味で、寒くなった日本。

 こんな競争って、何?生き方ギャップを、笑われている気もしてくるし。

 競争やレースと、いえば…。

 そうだ。

 競馬場とかを走り続けるウマたちは、寒くないんだろうか?

 「走る」

 「競争」

 「レース」

 厳しく、寒い社会を走り続けなければならない人たちがいて。

 かと、思えば…。

 楽に生きていけるような、勝ち組バブルの人たちがいて。

 日本は、いつから、こんなにも不公平なレースをする土地になってしまったんだろう?

 「納得できる、気持ち良い競争なら、したいんだけれどなあ。今は、無理。羽が、ほしいよ。この、俺の名前のように」

 今日もツバサは、ぼやいていた。

 そしてそのぼやきが、叫びにも変わる。

 「こい!俺の名前よ、こい!ツバサよ、こい!俺たち世代にとっての、気持ち良く走れるSF世界よ、こい!」

 が…。

 待て、待て。

 SFを、甘く考えるな。

 「こら!多元的な扉を開くために必要な蓄積エネルギーは、走り続ける努力にこそ、生まれるものなんだぞ!」

 ほら。

 だれかに、怒られた気がした。

 そしてまた、一声。

 「走れ!」

 先ほど怒ってきた声の主、なのか?

 その言葉に応える、真面目な彼。

 「言われたくても、走りたいよ!本当に気持ちの良いSF的なツバサをもてたらな!」

 すると、今度は、やさしい声がきたぞ。

 「そうか!良く、言った!その気持ちが芽生えていれば、素晴らしいレースが期待できそうだ。きっと君は、あらゆるものの軸、起点、終点、その過程までも流動化するSF時空の風を、感じさせていけるだろう!」

 何だか、むずかしい言い方だ。

 キッチンの天井を、見上げる。

 と、そのときだ。

 「こんにちは」

 サングラスをかけた、頭のはげたおっさんが、家にやってきた。

 …え、え?

 これは、驚き。玄関のチャイムが鳴ることなく、客がやってきたのだから。

 「ツバサがほしい競争のSF空間協会から、きました」

 はあ?

 やばい客、か?

 「ツバサがほしい…か。言うねえ、この客は」

 名前を呼ばれているようで、気恥ずかしくもなる。

 すると、おじさんは、怖いことを言う。

 「俺は、未来の君だ」

 「え、え?」

 「ツバサ君?」

 「はい」

 「君は、素晴らしい!」

 「え、あ、はい?」

 「競争、つまりはレースにあこがれることのできる君は、素晴らしいよ!」

 見知らぬおじさんに、ほめられてもなあ。

 「競争ができるというのは、強いウマ…。失礼。強い人間だと、いうことだ」

 「…そ、そうですか」

 「だからね。君には、SFの扉を開ける鍵をあげようと思う」

え、え?

 おじさんが彼に渡してきたのは、どう見ても、玄関や小屋を開けるようなフツーの鍵にしか見えなかったが。

 「…俺、ディスられているんですか?」

 この鍵には、どんな意味があるんだ?

 実は、競争に関わる魔法がかけられているとか?

 次回、競争的なこの謎に決着がつくぞ!

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