chapter 9 "Sex Machine"
「お勤めご苦労」
シキシマのその声を聞いて、廊下にいた警備員たちは一斉に銃を構えた。
「撃ち方用意! ……はj――」
「ゲロッパ!」
『音楽を再生します』
ヘルメットの内側のスピーカーから、音楽が流れ出すと、シキシマはリズムにノッてステップを踏み始める。
「……撃てぇ!」
警備員たちはアサルトライフルを一斉掃射。
だが、シキシマのアーマーに傷がつく様子はない。
『マスター、これは彼らを挑発する作戦ですか? お望みなら彼らに聴かせることも可能ですが』
「いや、俺のテンションを上げる作戦だ。だが、そのアイデアは採用」
『ラジャー』
音楽が廊下中に響き渡る。
「ふざけたやつがぁああああ!」
「動くと当たらないだろぉ!」
警備員たちが激昂する。
『装甲の防弾性能は折り紙つきですが、あまり撃たせると関節等装甲の薄い部分に被弾しかねません。挑発は完全に逆効果でしたね』
「わざとだろ」
『私がミスをするとでも?』
「手早く済ませる」
シキシマは数多の弾丸を受けながらずんずんと警備員の一人に向かって進んでいく。
そして、怯えて後退ろうとする警備員の胸倉を掴むと、ぶん回し、他の警備員を一気になぎ倒す。
「化け物が!」
装甲の隙間にショットガンの銃口を突っ込まれる。
「おいおいおいおい!」
『あら、お上手ですね』
装甲の隙間から廃熱。
ショットガンの銃口は一瞬にして溶解する。
警備員が引き金を引いた。
銃身が破裂。
「お」
「ぐあああ!」
さらに、排気の熱に警備員が悶絶する。
トドメの裏拳で警備員はノックアウト。
「……言わんこっちゃない」
『狙ってなされたのではないのですか?』
「ん? ああ、そうだぞ? ……そういや、名前をまだ聞いてなかったな」
「タケシ!」
振り向くと、腰に刀を挿した男がそこにいた。
「まだいたか」
「俺も仲間に――」
男はゆっくりと歩み寄りつつ抜刀し、
「入れてくれよ」
キメ顔でそう言った。
「……生体回路をオンライン」
『よろしいのですか? 一度REFLEX駆動モードを起動すると、あなたをアーマーごと『個』として認識させるために死ぬまで着脱出来なくなりますが』
「つまり、すぐまた脱げるってことだろ?」
『でしたね……"AWAKENING"』
装甲の隙間から緑色の光が漏れだす。
目をカッと開き、斬りかかる男に、取り払われ、吹き飛ばされた装甲が直撃する。
男は声を出す間も与えられずにダウンした。
『あーあ』
「侍には真剣勝負で挑まないとな」
『全力は出しましたからね。出し切る前に片がついてしまいましたが……私の名前、ですか。生まれたときにはあったのですけど、なにしろあなたに女の子にされてしまいましたからね。今は名無しです』
「それじゃあ閻魔帳の名前が見つけられなくて、閻魔様が困ってしまうぞ?」
『意地でも私を地獄に道連れにするつもりですね?』
「天国に行くにしたって名前は要るだろう」
『それもそうですね。けど……』
「けど、なんだ?」
『……いえ、なんでも。名前ならちゃんと後で教えますよ』
「後って?」
『あなたとお別れする時です』
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