chapter 8

「あの……」


 浅倉サトルは早乙女、ハルカとともに所長室にいた。


「なぜ私たちの持ち場が急に変更になったんです?」


「君と丸山君の能力を見込んでだ。シキシマ秀典の襲撃に備えて、君たちはここと下の中央研究室、つまりはアシュロンの警備をしてもらう」


「はぁ……」


「ハルカさんは分かります。けど僕は……」


「君の身体能力は人並み外れている。まさか私がそれを知らないとでも?」


「いえ、あの、それは……けど……」


「たしかに、昨日あのことを知らされたばかりの君には荷が重いと感じるかもしれない。だが、ならばなおのこと、君はここにいるべきなのではないかな?」


「サクラちゃんの傍で、気持ちを固めろと? ……それで僕が彼女に同情して、シキシマに協力するとは思わないんですか?」


「それはないな」


「なぜ」


「君が私の確信の理由を分かったとき、その時君は、ここの警備の最適任者になる」


「唯心論かなにかですか?」


「そうでもない」


「……よくわからないですけど、シキシマが今日また来たら?」


「そうだな。たしかにシキシマが来るのは今日かもしれないし、明日かもしれない。しかし、しばらくは来ないのかもしれない」


「確率の話ですか?」


「いや」


 早乙女はニヤリとした。


 警報が鳴った。


「おや、どうやら来てしまったようだな。噂をすればなんとやらだ」


「そんな……」


「そこの階段から研究室に降りろ」


 早乙女は背後を親指で指し示して言った。


「ハッ」


 ハルカに少し遅れてサトルも敬礼した。

 早乙女は階段に向かうサトルの肩をポンと叩き、動揺するサトルにやさしく微笑みかけた。

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