第18話 結婚式

「こんにちは。結婚するんだってえ?」


「広い屋敷だな。」


「広いわねぇ。」


屋敷にミレイユさんの仲間がやってきた。

一階の大広間に通す。

アリルにミンティが寄り添って歩く。

ヤジロはきょろきょろ屋敷を見まわしていた。


善は急げとは言うけれど、本当に良かったのだろうか?


「本当にぼくで良かったの?」

気が付いたら気持ちが言葉に出てきてしまった。


「私は、最初は弟のように思ってた。・・でも、助けられてから・・ね。」


ミンティに捕まりそうになった時、もうダメだって思ったんだ。

ふわっと空中に浮いている感じがして、ツカサに抱きかかえられていた。

いつも頼りなさそうな感じだったのに、その時はカッコよくて。

しばらく気持ちが夢見心地で、思えばあれから好きになったのかもしれない。


「私はツカサが好きだから・・・。」


ミレイユさんがぼくをぎゅっと抱きしめた。




小さい教会で結婚式は行われた。

式も簡易的にしてもらった。

大がかりだと時間もかかってしまうし、小規模で良いと言ったのもあって。

実はあまり面識のない親戚しんせきも居たりするのだが・・・。

貴族の付き合いって面倒くさい。

ぼくとミレイユさんは、にこにこと笑顔を振りまいていればいい。

後は執事のトステルに任せっきりである。


ぼくはキッチリとした白いタキシードで、ミレイユさんは純白のウエディングドレスである。

ミレイユさんは元々綺麗な人なのだけど、今日は一段と輝いて見える。

ドレスが白だからだろうか。

笑顔がまぶしい。


「ご立派に成られまして、天国のご両親もさぞかしお悦びでございましょう。」


「美しい花嫁さんですね。」


「私たちも結婚したくなっちゃった。ね?アリル」


「綺麗だな・・・。」

アリルは綺麗になったミレイユを見つめていた。


「・・・。」

ヤジロは隅っこで料理を食べていた。


何だか夢を見ているみたいだ。

だって、ミレイユさんが花嫁さんだなんて。

少し前までは考えられなかったよ。

外に出ると雲一つない晴天だった。

青い空がどこまでも広がっている。


例えあの王子から守るためとはいえ、結婚できたんだから感謝しないとな。

この国では結婚している相手を無理やりに奪うことは出来ない。

神の教えに反すると言われる為だ。

ぼくは信仰心が無いから分からないけど。

王族は神に一番近い一族・・と言われているから何も出来ないと思う。


「誓いのキスを。」


ぼくとミレイユさんはそっと唇を重ねた。


歓声が沸き起こる。

きっと大丈夫。

これから何があっても乗り越えていける・・そう思ったのだった。

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