元貴族のぼくは森で勇者を拾いました。

月城 夕実

第1話 出会い

ぼくは村で一人暮らしをしている。

みやこ喧騒けんそうを離れ静かに暮らす。

ここは良いところだ。

空気は美味しいし、自然も豊かだ。

何も考えたくないときにはもってこいの場所。


ぼくはキノコを採りに森に入った。

森にはイノシシとか住んでいるので、長居は禁物だ。

襲われた人もいるらしいから。


ぼくの名前はオトベ・ツカサ16歳。

容姿は先祖様の影響と言われている。

父と母は二人とも金髪だったし。

黒い髪と、黒い目で注目を浴びてしまうのはいつもの事だ。

ここにいればそんなことも無いし、のんびりできる。


「あれ?何だろう?」


遠くからよく見えないが、森の入口あたりで何か見つけた。

近づいてみると、ここらへんで見ない服装の女性が倒れている。


「王都から来る人ってこんな格好だよな。」


お洒落で高そうな服に、防具らしいものを身に着けていた。

剣も持っている。


「剣士なのかもしれない。だけどどうしてこんな山奥で?」


倒れているという事は、具合が悪いのかもしれない。

とにかく休ませてあげた方がいいだろうと思ったのだ。

ここに倒れていると、けものに襲われて危険だろうし・・。


「知らない人だけど・・放ってはおけない。」


風魔法で女性を浮かせて家に運び込んだ。

取り合えず、ベッドに寝かせる。

防具類が重そうだったので、外して置いておく。

鎧と、剣と盾。


「よくこんな重い物持てるな。」

初めて持ったけど、かなりの重量だった。


外したら少し顔色が良くなったようだった。

目を覚ますまで待つしかないか・・・。


医者を呼んだ方がいいだろうか。

ここは田舎過ぎて医者はいない。

呼ぶにしても3日くらいかかる距離だったりする。

しばらく様子を見ることにした。

熱は無さそうだし、ただ眠っているように見える。


半日、一日経っても女性は目を覚まさなかった。

やっぱり医者をというか、回復魔法を使える人を探した方が良かったか?



「ん・・・。」

彼女は手を伸ばした。


「良く寝た…。あれ?ここどこ?」


金色の髪が揺れた。

澄んだ青い瞳がゆっくりと開かれる。


「あ!」


ようやく目を覚ましたみたいだ。

寝ている時も人形のようで美しかったけど、今の彼女にはどこか強い意志が感じられる。


「私は・・・倒れてしまったのか。」


きょろきょろと視線を動かす彼女。

見知らぬ場所で驚いていると思う・・のだけど、意外に冷静だった。

女の人ってこんな感じだったっけ?

ぼくの知ってる女の人はもっときゃーとか、わーとかすぐ喚き散らすイメージなのだけど。

目の前の女性は考え事をしていて、冷静な人のようだ。

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