道場訓 六十三 武士団ギルドのギルド長
俺を含め、他の人間たちも声が聞こえてきたほうへ顔を向ける。
年齢は50代半ばほどだろうか。
着流しの上から腕を通していない
「師匠、お止めになられますな!」
しんと静まり返っていた中、取り乱した声を上げたのはゲンノスケだった。
「こやつは
「仕留める? その
「こ、これは……少し油断しただけでござる」
「まあ、どちらでも構わん。とにかくお前らは刀を仕舞え。どのみち、お前らには手に負えん相手だ」
師匠と呼ばれた
「
このとき、俺はピンときた。
サムライたちの態度から
ならば、まさにこの
俺は闘気を静めると、
「どなたかは存じませんが、俺たちは決して怪しい者ではありません。俺の名前はケンシン・オオガミ。商業街のギルド長から頼まれ、
「俺に?」
俺だと? じゃあ、この
そう思ったとき、コジローは「紹介状はあるのか?」と
「はい、ここに」
俺は紹介状を持っているキキョウに視線を向けた。
するとキキョウも俺の考えていたことに気づいたのだろう。
「これを」とキキョウは紹介状をコジローに差し出す。
するとコジローはゲンノスケにアゴをしゃくった。
ゲンノスケは1度だけ
コジローは紹介状の中身を確認していく。
どのぐらいの時間が
「なるほど……よく分かった。確かにお前さんらは
コジローは紹介状を
「このたびは手前の弟子たちが無礼を働き申し訳なかった。
そう言うとコジローは、俺たちに
どうやらコジローが直々に部屋まで案内してくれるらしい。
俺たちは断る理由がなかったので、大人しくコジローの誘いを受けようとした。
しかしコジローの
ゲンノスケである。
「師匠、そやつら――特にそのケンシンという男は危険です。その者は普通の人間ではありません。このまま
「黙れ、ゲンノスケ。この方々は間違いなく俺の客人だ。それにケンシン
「くっ……」
コジローに言い
その際にゲンノスケの鋭い視線が俺の背中に突き刺さってきたが、俺は特に気にすることなくエミリアとキキョウを連れて
コジローの案内で長い廊下を進み、やがて広い部屋へと通される。
そこは立派な
先に部屋へ入ったコジローは
「お前さんらも好きに座りな。それとも座布団がなければ座れないかい?」
「俺たちは別に構いません」
そう言うと俺は、コジローとそれなりの距離を保った場所に正座した。
エミリアとキキョウも俺に続いて正座する。
「ほう……ヤマト人であるお前さんとそこのタッパ(身長)のある
「
本当はもう1人いるのだが、わざわざここで説明するまでもないだろう。
「はっ、その若さですでに弟子持ちとは驚きだ。さすがは〈魔の
「ギルド長――ゲイルさんからの紹介状に書いてありましたか?」
「バッチリとな。しかも何でもお前さんは
コジローは健康そうな白い歯を
「けれどもゲイルからの紹介状によると、半年前に起こった
「……それをここであなたに答える必要がありますか?」
俺は鋭い視線でコジローを
「
そう言うとコジローは頭を下げて謝罪してきた。
「分かりました。今のは聞かなかったことにします。ただ、その件に限っては余計な
コジローは頭を上げると「そのことなんだが」と口を開いた。
そのときだ。
俺たちは一斉にある1点に顔を向けた。
ドタドタと地鳴りのような足音がこちらに近づいてくる。
やがて俺たちが視線を向けていた出入り口の
続いてヤマトタウンの役人たちが
「何だアンタらは! いきなり土足で
役人たちは怒声を上げたコジローに構わず、俺たちのほうに視線を向ける。
いや、厳密にはキキョウのほうにである。
「お主がキキョウ・フウゲツだな?」
役人の1人が大声で言った。
「キキョウ・フウゲツ! 非合法な
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます