道場訓 七 少女の過去と師弟関係
「何だと? この子の
国王である父上は驚いた表情で魔法鑑定士に
「はい……残念ながらクラリア第二王女に魔法の才はございません」
王宮直属の魔法鑑定士は小声で父上に告げる。
一方の私は落胆した父上を見つめるしか出来なかった。
今日は私の10歳の誕生日であり、王宮の大広間には側近の
すべては私の魔法使いとしての才能をお
〈世界魔法政府〉の直轄国家であったリザイアル王国の王家には、10歳の誕生日に一流の魔法鑑定士による魔法の素質を鑑定されるという儀式がある。
だが、これは一種の形式的なものだ。
王家には常人をはるかに超える
それでもこうして大勢の人間を集めて儀式を開くのは、自分たち王家がいかに特別な存在であるかを改めて周囲に知らしめるために他ならない。
今日の私の誕生日パーティーの本質もそうだった。
リザイアル王国の第二王女――私ことクラリア・リザイアルの魔法の才能をお
それでも私はよかった。
たとえ自分の誕生日パーティーが王家の
でも、今の父上は違う。
私の
「
私がおどおどしていると、父上は両目を血走らせながら
「いかがされました、
「いかがも何もないわ。今日のパーティーをすぐに中止しろ。こんな恥さらしを祝う必要などこれ以上はない」
「ですが、まだ始まったばかりですぞ。それに集まった
「そんなもの何か適当な理由と
その後、私のためのパーティーはすぐにお開きになった。
理由は私の体調不良のためだったが、もちろん私の体調に異常はない。
そして――。
「この王家の恥さらしが。今日から私とお前は親子ではない。
「大いに賛成です、
私と血の
「まったく、まさか腹違いとはいえ
「もちろんですわ、シャインお兄さま。はっきり
私は第一王子の兄と第一王女の姉の言葉を無視して、大好きだった父上の元に駆け寄った。
「父上、嘘ですよね? 私と親子の縁を切るだなんて」
私は血相を変えながら父上の身体を
「離せ……王家に何の
そう言うと父上は開いた右手をこれみよがしに上げた。
私は
次の瞬間、父上の強烈な平手打ちが私の左頬に放たれた――。
「――――ごめんなさい、父上ッ!」
私は大声を上げながら跳ね起きた。
思わず左頬をかばうように両手でガードする。
しかし、いくら待っても父上の平手打ちはやってこない。
私はハッと我に返り、何度か
そこでようやく私は6年前の夢を見ていたことに気がついた。
だからといって疑問が
むしろ余計に私の頭は混乱してしまった。
「ここは?」
私の目の前には異様な空間が広がっている。
100人は入れるほどの広々とした部屋だ。
そしてリザイアル王国では珍しい
そんな
私は頭上に大きな疑問符を浮かべた。
どうして私はこんな場所にいるのだろう?
確か私は路地裏で〈
「……あ!」
ようやく思い出してきた。
〈
名前は……。
「もう傷の具合は大丈夫か?」
「――――ッ!」
すぐに顔だけを振り向かせると、そこには一人の人間が
私よりも少し年上の17歳か18歳ほどの少年だ。
黒髪黒瞳に
珍しい形の白服の
直後、おぼろげだった私の意識と記憶は完全に正常に戻った。
「ケンシン師匠!」
私はこれから
「いや、頼むから師匠は止めてくれ」
ケンシン師匠は困った顔でこめかみをポリポリと
そんな可愛らしい一面があったケンシン師匠を見て、私は鬼神のような強さとの
やはり、私のこれからの武の師匠はこの人しかいない。
このとき、私は何としてもこの人と師弟関係を結ぼうと決心した。
そのためにはどんなことでもする。
たとえ肉体関係を求められようと何だろうと。
それほどケンシン師匠と師弟の
すべては
そのために私は強くならなければならない。
第二王女のクラリアではなく、冒険者のエミリアとして生きていくために――。
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