道場訓 四 路地裏での遭遇
「一人になるのも久しぶりだな」
俺は誰に言うでもなく
中央街にあった冒険者ギルドを後にした俺は、そのまま大通りを突き抜けて東にある商業街へと向かっている。
目的は商業街にあるもう一つの冒険者ギルドに行くためだ。
このリザイアル王国には各地区において冒険者ギルドが存在している。
先ほどキースたちといた冒険者ギルドは、この国の冒険者ギルドを
中でも冒険者ギルド本部は貴族や大商人たちからの依頼が多い。
それこそ依頼ランクもほぼBランクからという、初心者や
そうなると必然的に、冒険者の本部ギルドには上位ランクの冒険者しか立ち寄らなくなる。
大金目当ての上位ランクの冒険者たちには使いやすいのだろうが、半端な腕前の冒険者が身の
「あいつら……本当にこれから大丈夫なのか?」
今までクエスト内容の精査やアイテムの管理などは俺が引き受けており、特に魔物の
何をしていたのかなんて一つしかない。
キースたちでも上位の魔物を
それでもキースたちが負けそうになったことなど一度や二度ではなかった。
魔物だって馬鹿じゃない。
単純な攻撃ばかりを繰り返していたら、パターンを読んで思いがけない攻撃をしてくるものだ。
そのときは俺も空手とは
確かに俺は
だが、俺には
そしてこの
しかしこの【神の武道場】という〈スキル〉は、
なぜかは俺も分からない。
何せ【神の武道場】は俺のご先祖さまが数百年前に闘神から空手の技とともに授かった特別な〈スキル〉なのだ。
おそらくご先祖さまはそのときに、
というのが俺の師匠であった祖父の見解だった。
まあ、それでも
しかし、以前にその条件を常人よりも
「あいつらも俺の【神の武道場】で修行すれば、半年も経たずにこの大陸で最強クラスの実力者になっていただろうにな。だが、今のあいつらの本当の実力だと俺のサポートなしでBランクの迷宮に潜るのすら危ういぞ……」
俺は独りごちると、すぐに頭を左右に振った。
いや、もうそんなことを考えるのも止めよう。
それにキースたちも決して間抜けじゃない。
俺のサポートがなくても、きっと三人で上手くやっていけるはずだ。
それこそ迷宮などに潜るさいには俺が今までしてきたように、きちんとマップの確認や予備も含めたアイテムを持って慎重に向かうはず……だよな?
などと俺が
どこからか女の叫び声が聞こえてきた。
俺はすぐに全力で集中力を高めて声の発生源を探る。
どうやら叫び声はすぐそこの路地裏を抜けた先から聞こえてきたようだ。
物取りか? それとも
どちらにせよ、早く行かないと手遅れになってしまうかもしれない。
俺は地面を蹴って目的の場所へ駆け出した。
本気で
路地裏の中の開けた場所には、数人の黒ずくめの男たちに囲まれていた二人の少女たちがいた。
「クソッ、この外道どもが!」
少女の一人が黒ずくめの男たちに向かって荒げた声を上げる。
年の頃は16歳ほどだろうか。
一本一本が価値のありそうな金色の髪をしており、透き通るようなきめ細やかな肌をしている。
顔立ちも恐ろしく整っていた。
ただ、何というか
まるで貴族か王族を
けれども、弱々しい感じはあまりなかった。
それなりに肉体は鍛えられ、何かしらの武術の心得があるに違いない。
そして動きやすそうな服の上から革鎧を着ているところを見ると、金髪の少女は十中八九だが冒険者なのだろう。
一方、もう一人の少女は10歳にも満たないただの子供だった。
姉妹だろうか? いや、髪の色や顔立ちからして違うな。
10歳にも満たない少女の髪の色は
なるほど、そういうことか。
おそらく、最初に狙われたのは子供のほうなのだろう。
そこを金髪の少女が通りかかり、冒険者の正義感を
だが、明らかに多勢に無勢だ。
これでは金髪の少女は子供を連れて逃げることもできない。
しかもよく見ると、金髪の少女の右肩には大きな切り傷があった。
血のにじみ具合からしてナイフの類で斬られたのだろう。
俺がおおよその事情を飲み込めたとき、少女たちを囲んでいた黒ずくめの男たちに動きがあった。
「おい、さっさとそのガキを渡せ。それとも痛い目に
「ひひひ、いいじゃねえか。どっちとも
「俺も賛成だ。なあ、リーダー。この際だから二人とも連れて行こうや」
黒ずくめの男たちは、リーダー格と思しき頭までフードを被った長身の男に話しかける。
「ガキのほうは
その言葉を聞いた俺は眉間に強くしわを寄せた。
間に抜けるで間抜けではなく、魔が抜けるで
それはこのリザイアル王国で魔法が使えない――すなわち
「ええー、マジですか! あの女が
「ああ、間違いない。俺の〈
長身の男は吐き捨てるように答える。
「じゃあ、さっき言ったことは
「ひひひ、案外と楽しめるかもしれないぜ。おい、お前が試してみろよ」
「はあ? そんなもん嫌に決まってんだろ。
おいおい、そこまで言うか。
この瞬間、俺は黒ずくめの男たちに対する罪悪感がすべて消えた。
最初は軽く
そう判断した俺は、おもむろに足元に転がっていた小石を拾った。
続いてへそから約9センチ下の
次の瞬間、
すかさず俺は全身に満ちた
直後、俺は黒ずくめの男の一人に小石を思いっきり投げつけた。
空気を切り裂いて飛んだ小石が、一人の黒ずくめの男の頭部に直撃する。
バガァンッ!
頭部に小石を食らった黒ずくめの男は、鮮血と
「うおっ!」
「な、何だ!」
黒ずくめの男たちは慌てふためき、そして俺のほうに顔を向けて怒声を上げた。
「て、てめえがやりやがったのか!」
「よくも俺たちの仲間を……何の魔法を使ったんだ!」
俺は黒ずくめの男たちの言葉を無視して少女たちに歩み寄った。
「大体の事情は
俺の言葉に金髪の少女は
「あ、あなたは一体……」
「俺か? 俺の名前はケンシン――ケンシン・オオガミ」
そして俺は羽織っていた
「追放された
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