第6話

▫︎◇▫︎


 星って何で綺麗なんだろ………。


 窓の外にある星空を見上げながらベッドに腰据えていると、背中にしっとりと柔らかく温かいものが触れた。


「ただいま、アート」


 愛おしくて、ずっと聴きたくて仕方がなかった声。


「………おそいよ、ラテ」


 溢れ始めた涙はやがて大洪水になり、アフォガートの顔中を濡らし、止まるところを知らずに流れ続ける。

 こんなに情けない姿モカには見せたくないはずなのに、涙を止める方法をアフォガートは知らない。


 ゆっくりとモカの方を向き、力強く抱きしめると、ふわりと優しい香りが鼻腔をくすぐった。

 愛おしくて大好きで、もう絶対に離したくない香り。


 長い時間、それこそお星様の場所が大きく変わるぐらいに抱き合って泣き続けた2人は、やがて向かい合って微笑み合う。


 先程までは表情を変えることすらも億劫でできなかったのに、モカと再開してからアフォガートの表情筋は実に優秀に働き始めた。


「俺、頑張ったよ」


 彼女に甘えるようにして擦り寄ると、彼女はアフォガートの全てを受け入れてくれる。


「知ってる」

「俺、耐え抜いたよ」


 ぐりぐりと額を押し付けると、彼女の声は先程よりも震えていた。


「知ってる」


 モカに頬を包まれたアフォガートは、その手に自らの手を重ね、


「迎えにきたよ、アート」


 悪戯っ子のような笑みを浮かべたモカのくちびるに、ちゅっと優しい口付けを落とした。


 ぽふっと顔中が、耳まで赤くなったモカを、アフォガートは横抱きにしてこの世で1番繊細で大切なものに触れるように抱きしめる。


「ありがとう、モカ」


 星空に見守られる中、2人のくちびるがもう1度接近し、離れる。

 甘い甘いくちびるの味に酔いしれる。


「愛してる」

「わたしの方が愛してる」


 涙に濡れた顔で微笑みあった弱虫の2人は、たたかい抜いた末の幸せを噛み締めるように、お互いを確かめるように、ぎゅうっと抱きしめあったのだった。

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