第5話
「待ちっ、」
「えぇ、いいわよ」
「あぁ!よかった。ありがとうございます、モカ嬢。いいえ、お義姉さん」
「エスプレッソ様、どうか、どうか私の可愛い妹を幸せにしてください」
勝ち誇ったような笑みを浮かべているラテは気がついているのだろうか。
モカが初めてラテの事を『義妹』ではなく『妹』と呼んだ事に。
———ターキッシュ伯は貴族主義で有名。つまり、彼女が平民であるとしてた時点で計画が崩れ去るということか。………平民は人間だと思っていない人間に元平民が嫁ぐとは碌な未来にならないだろうな………………。
「ラテっ!あなたは既婚者です!!そんな事許されるわけがッ、」
「許さるわ、お母様。だって、わたくしとアフォガート様は白い結婚だもの。ちょうど昨日、結婚の白紙撤廃が成立しているわ」
「うふふっ、昨日お姉様のお手紙を読んで、わたくし思ったの。お姉様みたいな可愛くなくてつまんない女性よりも、わたくしみたいに可愛くて可憐な乙女の方が伯爵であらせられるエスプレッソ様にはピッタリだって。だからね、ものすっごく急いで白紙撤廃したのよ。お母様、ちゃんと褒めて。わたくし、これでお母様のお言い付け通りにずぅーっとお姉様よりも上に立っていられるわ。ね、わたくしとぉーっても良い子でしょ?」
蒼白な表情をしたカプチーノの耳元に、モカはくちびるが寄せられる。
「———、—————————、」
「あらまあ、では“あの噂”は嘘だったのね。あらまあ、よかったわ。ふふふっ、あはははっ!!」
………何を話したんだろう。
「私、娘のことがとても心配で………。ラテはずっと甘やかして育ててきたのでできれば王都まで一緒に向かいたいのですが………、」
「構いませんよ、お義母様。是非ともいらしてください」
あっという間にまとまって行く話を遠くから見つめていたアフォガートは、半数の使用人があっという間に解雇されて行くのを見守ってから自室へと戻ったのだった———。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます