02 目覚めてポンッ!

 目を覚ます。

 殺風景な部屋だった。

 壁にロッカーのようなものがあるだけで他はなにもない。

 天井で輝く蛍光灯の光が白い壁を照らす。

 反射した光がまぶしい。


 この部屋にいるのは、俺だけではない。俺の他にも五人の男女が無造作に転がされていた。

 死んでいるわけではないようだ。

 もぞもぞと動きはじめている。

 全員、眠らされていたようだ。


 お互いに顔を見合わす。

 怪訝な顔、不機嫌な顔、心配そうな顔。いい表情を浮かべているものは一人もいない。俺だって、ろくな顔をしていないにちがいない。

 予備校をサボってバイトに出かけていたことがバレて昨日はちょっとした修羅場だった。そのせいもあって、俺はたとえ自分のベッドで目が覚めたとしても不機嫌だったろう。ましてや、こんなわけのわからない場所に転がされていていい気分なはずがない。

 そのうえ、首に妙な違和感があるのだ。

 原因はすぐにわかった。


 全員が妙な首輪をつけている。

 俺の首にも当然ついているようだ。

 首輪からはコードのようなものが出ており、そいつは首筋に繋がっている。恐る恐る首筋をなでてみる。俺の首にもコードは接続されているらしいことがわかる。

 コードに気がついた俺の指摘に皆が首筋をなでようとする。そのとき、ケタケタと笑う声が聞こえた。


 どこから現れたのだろう。

 不気味な笑い声を発しながら、滑るように進んできた茶運び人形は俺たちの目の前で止まった。


 「皆さんは勇者として、この怪物のはびこるダンジョンを脱してもらいます。あなたたちを見守るのに必要だから、その首輪やコードはけっして、けっして外してはいけませんよ。ボクとの約束だよ!」


 ガラの悪そうな大男が茶運び人形を蹴り飛ばした。

 からからと音を立てて転がった茶運び人形からくぐもった笑い声がきこえた。

 大男は茶運び人形を踏み潰す。

 そして、自分の首に手をやる。

 手首のあたりまで鮮やかな文様に彩られた太い腕がコードを引きちぎる。

 ビープ音のような耳障りな音が大男の首から聞こえてきた。


 「ああん、うるせ……」


 ポンッと音を立てて、大男の頭がはじけた。


 血と反吐と悲鳴が撒き散らされる中、再び笑い声がきこえる。

 二体目の茶運び人形がどこからともなく現れた。

 人形が「だから、外してはいけないって言ったのに。ボク忠告したよ!」と楽しそうな声をあげた。

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