ハイシン

黒石廉

01 プロローグ:推し

 深夜、少年は近くのコンビニエンスストアに向かう。

 彼の頬を赤くさせているのは寒風だけではない。

 興奮だ。

 暴力への渇望、性への羨望、血なまぐさい本能、様々なものが入り混じった興奮が少年の頬を赤くするのだ。

 コンビニエンスストアでプリペイドカードを買った。

 なけなしの小遣いをはたいてでも、観たい。

 なけなしの小遣いをはたいてでも、推しを見つけたい。

 推せる子を見つけたい。推したい。推しの活躍するところを見たい。

 もちろん、少年の払える金額では大したことはできないかもしれない。それでも、彼はこれから始まる熱狂の渦に飛び込みたいのだ。

 かじかむ手をポケットに入れる。プリペイドカードを握りしめる。

 親には内緒だ。そう考えると、少年の顔はますます紅潮する。

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