第3話 旅のレポートでポイントを稼ぐ!

「まずは、このポイントの稼ぎ方を考えないと……」


 そう思ってショップ内をくまなく見てみると「?」のマークを見つけた。

 サイト内にあるこういうマークは、大抵ヘルプページへ繋がっている。

 オレはそうであってくれと願いながら、「?」をクリックした。当たりだった。


 *****

 ◆ショップの使い方

 →ショップは【ポータブルハウス】内でのみ使用可能。

 専用のパソコンからアクセスし、商品を選んで購入します。

 支払いは現金不可。専用ポイントでお支払いください。


 ◆ポイントの稼ぎ方(旅人Ver.)

 →旅の記録をレポートにまとめ、メールで送信してください。

 *****


 トップページにあった「レポート」と「メール」はこれのためだったのか!

 でも旅の記録と言っても、今日はここにたどり着いたばかりで何もしてないし、書くことなんて……。


「――いや、無理矢理にでも書けば、少しくらいはポイントがもらえるかも」


 今はとにかく、1ポイントでも稼ぎたい。

 目指すは布団セットと、一番安いのでもいいからとにかく食料!!!

 オレは【ポータブルハウス】の中から始まった今日一日のことを思い出し、できる限り詳細に書き出して、レポートとして送信した。


「こ、これでいいのか……?」


 そわそわしながら反応を待っていると、数分後にはメールが帰ってきた。


 *****

 アサヒさん

 レポート受け取りました。ありがとうございます。

 報酬のポイントは、ショップ画面からご確認ください。

 それでは、引き続きよろしくお願いいたします。

 良い生を過ごせることを願っています。

 *****


 早速ショップを確認すると、先ほどまで3000Pだったのが4000Pに増えていた。

 先ほどのレポートの報酬は1000Pだったらしい。


「よし、4000Pあれば布団セットと弁当が買えるぞ。弁当Bも買えるけど、とりあえず今日は一番安いのにしておこう。何があるか分からないし」


 布団セットとお弁当Aをカートに入れて支払いを済ませると、部屋にダンボール箱が出現した。商品が届いたということだろう。

 中を確認すると、圧縮された状態の布団セット、それからのり弁らしき弁当が入っている。やったぞ!


 布団を引っ張り出して空気を含ませ、床に敷き、シーツや枕カバーをかけて寝られる状態まで整える。

 いたって普通の布団だが、新品なこともあってそこそこ快適に寝られそうだ。


「――そういや水がほしいな。水道の水って飲めるのか?」


 ここまで考えて気がついた。水を入れるグラスがない。ついでに箸もない。箸くらい、お弁当につけてくれてもいいのに!

 ショップを確認すると、ガラスのコップが一つ100P、箸が一膳100Pだったので、それを購入することにした。残り10P!

 お弁当Bにしてたら、手づかみか犬食いを余儀なくされるところだった。危ない。


 俺は布団の端に座り、お弁当A(のり弁)を食べる。

 ちなみに温かいなんてことはなく、普通の冷えた弁当だ。


「まあ、最初だしこんなもんだよな。むしろこれくらいの方が、旅の始まり感があってなんか燃える!」


 第二の人生では、崖っぷち貴族の家の三男として生まれ育ち、ひたすら勉学と魔王討伐のための訓練に励み、勝利を勝ち取った。

 女神にも「神谷旭さんが魔王を討伐しなければ世界が滅ぶ」と聞かされていたため、自分の人生でありながらルート選択の余地はなく、あらかじめ決められていた道を進んだ。そして毒に侵され、そのまま死んだ。


 ――だからこそ。

 この第三の人生では、自分で決めた道を、自分の力でゆっくり歩いていきたい。

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