ごほうび転生! ~第三の人生は、特典【ポータブルハウス】と【地図帳】で自由な旅を満喫します!~

ぼっち猫@「ラスボス料理屋」書籍発売

★プロローグ★

第0話 ~プロローグ~

「ここは……」

「ええとあなたは――そう、神谷旭かみやあさひさん! ――おっと違いましたね、もうライズさんなんでした。ライズさん、魔王討伐ありがとうございました!」


 気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。

 周囲には何もなく、影すら存在しない。

 このただただ白い世界に、今、俺はある人物(?)と二人きりだ。

 だがこの不可思議な状況に陥ったのは、今回が初めてではない。


「魔王を倒したのに、その半年後に死ぬってあんまりじゃないか? 普通もっとこう、悠々自適な生活を楽しむとか、輝かしい未来が待ってるとかさぁ」

「残念ながら、私たち神が下界に直接手を加えるのはご法度なんですよ~。だからこそのあなたたちなんです☆」

「そんな無責任な……」


 目の前にいる真っ白いワンピースを身にまとった金髪碧眼の女神・フィーナは、まったく悪びれる様子もなくサラッとそう言ってのける。

 ちなみに、俺がフィーナと会うのは二度目だ。

 一度目は、ブラック企業に勤めている日本人だった俺・神谷旭が、ナイフを持った男に襲われている少女を助けて死んだときだった。

 つまりこいつは、人の生死や転生を司る女神なのだ。多分。


「そんな嫌そうな顔しないでくださいよ~。それにしても魔王ともあろう者が、死に際にあんな強力な毒の呪いをかけるなんて。まったくなんて往生際の悪いっ!」


 フィーナはそう、口をとがらせてぐちぐちと文句を言う。

 文句を言いたいのは、その毒の呪いのせいで死んでしまった俺の方だ。


「でも、終わったことをいつまでも嘆いていても仕方がないので、その辺のあれこれは置いておきましょう。大丈夫です。魔王討伐のご褒美、そして死んでしまったお詫びに、なんと! 特別に! ごほうび転生をさせてあげます!」


フィーナは、「どうだ!」と言わんばかりのドヤ顔でそう言い放った。


 いや、大丈夫って何がだ。

 というか、ごほうび転生? 何だそれ??


「ライズさんは、来世はどんなことがしたいですか?」

「え、来世? ……そうだな、一度目の人生も二度目の人生も慌ただしかったし、今度はゆっくり自由気ままに旅でもできたらいいな」

「ふんふんなるほど、旅ですか。――あ、それならいい転生枠がありますよ!」


 そう言いながら、何やらタブレットのようなものを操作している。

 転生先の候補が載っているのだろう。


「ライズさんには、クレセント王国に転生してもらいましょう!」

「クレセント王国? どんなところなんだ?」

「それはついてからのお楽しみです☆ ごほうび転生ですし、今回の特典はとっても豪華ですよ~! レアスキル【神の援助】と【レイヤー透過】、それからレアアイテム【ポータブルハウス】【地図帳】【アイテムボックス】を授けます!」


 ――ええと?

 スキルもアイテムも、よく分からないものばかりだな。

 何となく【神の援助】はすごそうだけど、ほかは本当に豪華なのか……?


「ええと、それってどういう」

「あ、そうそう、着いてからしばらくのお金も必要ですよね。所持金も500万ボックルにしておきます。1ボックル=1円くらいの価値なので、元日本人のライズさんにぴったりです☆」

「お、おう。助かるよ。それで」

「ええとあとは……魔法適性は全属性持ちにしておきました。これはあなたがライズとして積み重ねてきたものを反映させた結果です。……って大変、もう就業時間を十分も過ぎてるじゃないですか! それじゃあライズさん、次こそは良い生を過ごせることを願っていますね☆」


 ホワイトな環境だな!

 ――じゃなくて! いや、それはいいことだけど!

 今はもうちょっと残業してくれええええええええええ!!!

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