第39話 『選択』

 すみません! 遅くなりましたm(_ _)m


 ◆ ◆ ◆


「タクミ……! あなたなら、やってくれると信じてたわ!」

「パパの仇を討ってくれて、ありがとタクミ。うぅ……ゴメン、やっぱ辛いわ」


「二人とも悪かったな。よく俺がいない間、堪えてくれた」


 抱き着きながら、涙ぐむ二人の頭を俺は優しく撫でた。


「タクミ・セナ、よくぞ『全ての元凶』たる闇竜を討ってくれました。ヴァンクリーフを代表して、礼を述べます」


「勿体ないお言葉です、女王陛下。俺は仲間を護る為、創作スキルを使ったまでです」


 底辺作家だった俺の『創作』スキルが、こんな風に役に立つとはな。


「タクミ。あなたの創作スキル、この世のものとは思えません。既に『神の領域』に達していると言ってもいいでしょう」


……それは、いくら何でも盛り過ぎでなのでは?


「故に今のあなたなら、望みが『一つだけ』叶うでしょう。私はそれを手助けする準備があります」


……『望み』が、一つだけ叶うって?


「タクミ、あなたの望みってまさか……」

「……………………」


 レティシアに俺は沈黙した。俺の望み、それはすなわち……


「タクミ……アンタは還りたいんでしょ? 『元の世界』へ……」

「アリシア……!」


 沈黙をて、アリシアが踏み込んだ。そうだ……俺の『目的』は、元の世界へ還ることだった。色々あって忘れてたが。


「タクミ、それが望みなら『今この場』で、すぐに叶えることが出来ます。我々の力を集結すれば、異なる世界へのみちが拓かれるでしょう。魔力がみなぎっている、この異界なら可能です」


「そんな大事なことを、今決めろって言うの……!?」


「残念ですが、異なる世界へ『任意』に渡航するとなると、膨大な魔力が必要となります。『一方的』な召還とは、訳が違います」


 女王に指摘され、アリシアは黙った。俺は決断きめなければならない。還るか『留まる』かを。


「タクミ……私はあなたの意思を尊重するわ。あなたには何度も助けられた。ワガママを言う資格があるわ」


「何よレティシア、タクミに還ってほしいのっ!?」


 アリシアに詰め寄られ、レティシアは「それは……」と言葉を濁した。


「……認めないから」


 アリシアは震えながら、言葉を絞り出した。


「こんなの認めないっ! タクミが還るなら、今度は私が『タクミの世界』に押し掛けてやるんだからっ! どんな手を行使つかっても、何年掛かってもね!」


「私だって……」


 レティシアが、溜まっていた感情を爆発させた。


「私だって、出来ればタクミにはずっといてほしいわ! けど、それはタクミの足枷となる……。最後くらい、彼を見送ってあげましょう。うぅ……」


 それが、我慢の限界だった。二人の皇女は揃って、ワンワンと子どものように泣きじゃくった。俺は目を瞑って、やがて答えた。



「二人とも。俺、還らないよ。ずっと二人といる」

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