100ファン魔術師 ~致命的失敗のち異世界生活~

かじきまろ

第1章 幼少期

プロローグ 致命的失敗

 「それでは戦闘開始です」

 こうして、このシナリオの山場、魔物「アンデッド・ボーン」の集団との最終決戦が幕を開けた。

 とはいえ、別に俺たちはマジで魔物たちと戦っているわけではない。

 これはTRPGだ。

 TRPGとは「テーブルトークロールプレイングゲーム」の略で、ロールプレイや会話を楽しみながら、探索をしたり、ときに戦闘をしたりするゲームのことを言う。いま俺たちがやっているのは、『クス伝説TRPG』というシステムに則った、迷宮探索のシナリオだ。我々PLプレイヤーが務める3人の探索者(PCプレイヤーキャラクター)が、「インペトロ」という地にある地下要塞を探索するという内容だ。

 俺はこの3人の探索者のうちの一人だ。ここで俺のPCの概要を示しておく。


名前:フォルト=シャルロ 性別:男

年齢:16歳 職業:魔術師 出身:遊牧地帯

基礎能力 体力:13/20 精神力:12/20 魔力:18/20

技能能力 攻撃力:14/20 俊敏性:8/20 教養:16/20

遊牧地帯出身の若き魔術師。戦士としては体力やスピードが劣るものの、その魔力の大きさや、魔術師としてのレベルの高さから、戦士として重宝される。幼いころから宮廷での仕事や冒険者を経験してきたため、教養のレベルもまあまあ高い。


 俺の概要はこんな感じだ。体力切れ(=死亡)、精神力切れ(=心神喪失)でロスト、魔力切れで戦闘不能に陥るわけだが、戦士としては体力や精神力が少し心もとない気がするものの、魔力が相当高い。ゆえに魔術師に据えるのが最善と考えたわけだ。

 ちなみにほかの二人はざっくりこんな感じ。


名前:インジュラ=ジョナー 性別:男(PLも男) 職業:剣士

お調子者で、女を見つけると絶対ナンパする。ただしその気前のよさから、割と周りから愛されている。剣士の腕前はなかなかのもの。あだ名は「ジュラ」。


名前:サナ=カルギュス 性別:女(PLは男)  職業:剣士

貴族出身の剣士。長くて美しい金髪、淡麗な容姿は誰もを魅了する。剣士の腕前もかなりのもの。ジュラには10回くらい告白されているが、毎回断っている。


 そしてKPキーパーの全部で4人だ。これらのキャラ作はセッション前にしていたわけだが、

 「お前出目いいな」

 「お前が出目クソなだけですよ」

 「俺戦う美少女にしーちゃお」

 「そいつにナンパしまくってやるか」

 「うーわ、きめぇ」

などと他愛もない会話をしながらやったものだ。そのボイスチャットには、そうした会話とダイスを転がす音がただただ響いていた。

 こうして我々はクライマックスを迎えたわけだが、敵は言うまでもなく強い。いや、というより数が多いな。こうしたときは広域攻撃の魔術でパーッとダメージを与えたほうがいいか。よし。そうしよう。

 「KP、広域攻撃魔術『巨大魔火岩』を使用して敵を蹴散らします」

 「いいでしょう。では、D100をどうぞ」

10面ダイスを2つ手に持つ。これで攻撃魔術・火属性の技能値を下回れば、成功だ。

 「ダイスロール、いきます」

ダイスを振る。カラコロと音を立てる。出た数字を見てみる。


 「00」「00」


えっ、100...


 「おいおい、このタイミングで!?」

 「お前、ダイスの運、キャラ作で使い果たしたな」


やってもうた。最悪の結末がやってくる。


 「致命的失敗ファンブルです」



こうしてKPが俺の100ファンを宣言した瞬間、何となく意識が遠のいた気がした。

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