薄い少女は、夢=妄想なんだろう。廃棄品ギルド員は、そう思っていた。

品画十帆

第1話 廃棄品ギルド

廃棄品ギルドに、今日の採集品を渡す。

チップが20個と、基盤きばんが10枚だ。


受付のアンドロイド嬢は、ニコリともしない。

機械的な動作で、俺に5百円を投げるように渡してきた。

この受付には、ろくなソフトしか入ってないんだろう。


5百円では、1日分の食事も、ままならない。

とてもDX屋台の飯には手が出ないな。

出るのは、最近よく出る鼻血ぐらいのもんだ。

制御不能になった家電の、討伐でもしなくてはじり貧になって行くだけだ。


街の外(はず)れにある、ねぐらへ、重い足を引きずり帰っていく。

途中の低級屋台で、朝の売れ残りの固いパンと。

得体(えたい)の知れない、何かの挽肉(ひきにく)を材料にした、肉煎餅(にくせんべい)を買った。


何かの肉か分かるとマズイので、挽肉にしてあるんだろう。

何かの肉は、味もマズイ。

固いパンと一緒に、ただの水で胃の中へ流し込む。


何だか疲れたし、やることも無いのでもう寝よう。

固い寝台と、やけに湿っている、シミだらけの布団がかなり匂(にお)うな。

自分の匂いだから、我慢できるが、他人にはとても無理だろう。

一回くらいは、外に干した方が良いんだろうな。


まあ、良いや。

それは、明日以降の話だ。

もう寝るとするか。

最近は良い夢が、見られるのですごく楽しみだ。

今の俺の、生きがいになりつつある。


寝台の横に、向こう側が透(す)けている少女が、忽然(こつぜん)と立っている。

10代半ばに見える少女だ。

桃色と青色の小花が散った、薄い黄色のドレスというのか、ワンピースを着ている。

襟(えり)と袖(そで)と裾(すそ)に、細かなレースがあしらわれている高そうな服だ。

ただ、目を凝(こ)らさないと見えないほど、すごく薄く透けている。


顔は、可愛い部類だろう。

目は大きく無いが、鼻と唇が小振(こぶ)りで上品な感じに見える。

髪は黒くストレートで、腰の辺りまである長い髪だ。

長い髪が肩に広がってから、お尻の方へ流れているのが何だか色っぽい。


少女はずっと立ったまま、俺を見ている。

俺は起きているのか、寝ているのか分からないが身体は動く。

夢なら実際には、動いては無い訳だが、たいして変わりは無い。


今までは、俺も、ただ見詰めているだけだった。

今日の俺は、少女に近づいてみる。


少女の髪を触ろうとしたら、手が少女の顔を、突き抜けてしまう。

少女は、悲しそうに目を、伏(ふ)せた気がした。

胸を触ろうとしても、手が突き抜けてしまう。

少女は慌てて胸を手で守ったが、その両手も、俺の手を突き抜けている。


あれ、動いたぞ。

少女は、目を見開いて、怒っているように見える。


ワンピースの裾(すそ)をめくろうとしても、突き抜けて裾が持てない。

少女は慌てて、裾を両手で固く握っているが、意味のない行動だ。


あれ、自分の手は、突き抜けないのか。

少女は、口を大きく開いて、怒鳴(どな)っているように見える。

声も聞こえないのか。


俺は、少女がいじらしい動作をするのがとても好きらしい。

少女が怒っているのを見て、ニヤけた笑い声を立ててしまう。

俺のねぐらで、俺一人だからな。

誰も聞いていないので、遠慮(えんりょ)する必要は無い。


胸を触ろうとすると、少女が慌てて両手で胸を守る。

その動作が、可愛いと思う。

恥じらうようすが、俺の嗜虐心(しぎゃくしん)をそそる。


俺は、また胸を触ろうとしたら、鼻血が出て少女へ飛んでしまった。

あれ、突き抜けないぞ。


少女は、悲鳴をあげたような感じで、フッと消えた。


久しぶりに、生きている実感がして、心を満たされた気がする。

興奮のあまり、鼻血も出たぐらいだ。

今夜は、良く寝られるぞ。



廃棄品ギルドに、今日の採集品を渡す。

チップが20個と、基盤が10枚に、吸魂(きゅうこん)する掃除機を討伐した。

少し魂を吸われたので、かなり疲れてしまったな。

受付の整(ととの)ったった顔のアンドロイド嬢が、事務的な動作で、俺に2千円と5百円を渡してくれる。

これだけ稼(かせ)げれば、かつかつながら、何とかやっていけるだろう。


少し前までは、俺も、もう少しは稼いでいたんだ。

でも、最近は全くやる気が出ない。


14歳の時に、世界が壊れてから、かなりの年数が経(た)っている。

最初は、少数の生き残りだと、やる気にもなったのだが、続かなかったんだ。

何年経っても、生活は良くならないし、誰一人仲間が出来なかった。


周りには誰も知り合いがいないし、知り合いになれそうな人もいない。

世界が壊れて、生き残った人達も、徐々に壊れていったんだ。

仲間になって貰(もら)えないし、なって欲しくもない。


生き残った人達は、人の話を全く聞かないで、自分がいかに可哀そうなのかを話したがる。

世界が壊れて、不幸な人だらけなのに全く意味が無いと思う。


やる気になっていた時に、コツコツ溜めたお金で住宅カーを買った。

ボロボロで動きもしないし、さらに事故車らしかったのだが、とても安いから決めたんだ。

停まっている場所は、街の外れの外れにある。

それも、安い原因だ。

今思うと、生き残った人達と 、出来るだけ関わり合いに、なりたく無かったのかも知れないな。


今日のご飯も、固いパンと肉煎餅だ。

何かの肉と固いパンを、水で流し込んでお楽しみの始まりだ。

臭い寝台に、モソモソと潜り込む。


今日の少女は、昨日より可愛くなった気がする。

思わず、声に出してしまった。


「昨日より可愛いぞ」


少女は、頬(ほほ)を少し赤らめた気がした。

あれ、声は聞こえるのか。


可愛くなった気がしたのは、少女が濃くなったからだ。

顔も手も足も、肌の色が濃くなって、瑞々(みずみず)しさが増(ま)している。

服の色も、鮮やかになった。


「黄色の服が、良く似合っているよ」


少女は、嬉しそうに笑った。


「その下には、何をいているのかな」


俺は、少女のワンピースの下に潜り込んで、下着を見ようとする。

少女は、慌ててしゃがみ込んで、覗(のぞ)かせないようにした。

俺は、少女の身体の中へ、頭を突っ込んだ体勢となっただけだ。


「その防ぎ方は、思いつかなかったよ。君は、頭が良いな」


少女は、胸を反(そ)らして得意げだ。


胸を触ろうとすると、少女は、慌てて胸を両手で守る。

触れないのに、どうしてだろう。

でも、この動作は興奮する。

今日も、少女を見ながら、ニヤニヤと笑ってしまう。


ワンピースの裾をめくろうとすると、少女は、慌てて裾を握る。

必死なので、もっと悪戯(いたずら)したくなってしまう。

何回も、少女に悪戯をしたら、また血が飛んでしまった。

僕の鼻から、血が飛び散って、少女の髪にかかっている。

昨日より、血の量が多いな。


少女は、髪をかきむしるようにしながら、フッと消えた。


今日も満足だ。

今夜も、良く寝られるぞ。


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