996 場所を間借りするので挨拶してみたら

 クラスメイトであるウッチーの実家の喫茶店で小人数制の受験勉強を始める筈だったのだが。

店に入った途端、眞子は自身の喫茶店の好みの話を想い浮かべてしまい。

勉強を開始する事無く、それを心の中で語っただけで終わってしまう(笑)


***


 ……そんな思いを無駄に馳せながら、店内をキョロキョロしていると……



「いらっっしゃい」


……っと、店のマスターであるウッチーのお父さんらしき人が、パイプを吸いながら声を掛けてくれた。


でも、あれだね。

本当に、こんな風にカウンターでパイプを咥えたマスターって居るもんなんだね。

あれは漫画の中にだけの存在するものだと思ったましたよ。


これは驚きに事実ですよ。


あぁそれはそうと、折角お声を掛けて下さってる所、非常に申し訳ないんですが、私は決してお客さんでは無いですね。



「あぁ、あの、すみません。私、お客さんじゃないんです」

「うん?……あぁ、その制服からして、雪子の友達かい?」

「はっ、はい、そうです。雪子さんのクラスメイトさせて頂いています、向井眞子と申します。雪子さん居られますか?」

「あぁ、君が噂の向井さんか。雪子なら……」


ちょっと待って。

ウッチーの居場所を教えて下さるのは良いんですが、その私の噂って……どんな噂ですかね?

またロクでもない噂が、巷に流れてるんじゃないでしょうね?


ウッチー……お父さんに何を言ったのかは知らないけど、あんまり変な事を吹き込まない様にね。


シバクよ。



「あぁ、向井さん、コッチ、コッチ。お父さんと話すると向井さんが穢れるから、話さなくて良いよ。無視して良いよ、無視して」


なんて思っていたら、お店の隅に席からウッチーを声を掛けて来てくれたんだけど。


あぁ~~~、出ましたねぇ、出ましたねぇ、コチラも出ちゃいましたねぇ。

この年代の女の子特有の感情が表に出ましたねぇ。

『照れから来る、お父さん嫌い』って言う、見せ掛けの感情がモロに出ちゃいましたね。


それに、この様子だと、ウッチーきっと『お母さん。お父さんのとは、洗濯物を、絶対別に洗ってね』とか言ってそうだね。


でもさぁ、手塩に掛けて育ててきた娘に、そう言う事を言われると、お父さん辛いだろうね。



「やかましいわ。オマエだけ、店から追い出すぞ雪子」

「……向井さん、コッチ、コッチ。早く早く」


うわっ……今度は、言葉を発したお父さんを一瞬睨んでから、顔を背けて無視したよ。


……酷い仕打ちだなぁ。


まぁまぁ、そうは言ってもね。

友達の前じゃあ、こんな感じを演出してても、家族揃って一家団欒をしてる時は、普通に会話をするんだろうけどね。

それ処か、こう言う子に限って、実はお父さんと凄く仲が良かったりするもんだもんね。


でも、結論的には、友達の前じゃ恥ずかしからこうなっちゃう。


まぁ、この目の前で起こってる現象を考察したら、そんな処なんでしょうね。



「あぁっと、ちょっと、待ってね、ウッチー。……あっ、あの、ウッチーのお父さん、お邪魔させて頂いて宜しいですか?お店の邪魔になりませんかね?」

「おや。噂通り、今時の子にしては、礼儀の正しい子だな」


あれ?これって、そんなに礼儀正しいかな?

人の家にお邪魔するんだから、当たり前じゃない?


しかもですよ。

営業中のお店の一角を間借りするんだから、尚更こう言う事をキッチリするのは当たり前じゃない?



「あぁ、いえいえ、そんなそんな。店を営業されている時間帯なのに、お仕事の邪魔になっちゃいけないなぁって思いまして。本当に場所をお借りして良いんですか?」

「ハハッ、まぁウチは、年がら年中暇な店だから、その辺は心配は御無用だ。気にせず、好きなだけ、ゆっくり勉強をして行きなさい。頑張ってる様だったら、後で、人数分の飲み物を持て行ってあげるから」

「あぁそんな、そんな。場所を提供して頂いてるだけでも、ご迷惑をお掛けしてるのに、そこまで甘えさせて頂く訳には」


あらら、なんか優しいお父さんだね。


良いねウッチー。


あぁでもね。

私の、お母さんも最高なんだよ♪


静流さんお母さん、世界一最高♪



「向井さん!!お父さんは無視して良いって言ってるでしょ。早くコッチ、コッチ!!」

「ハァ~~~、店には他のお客さんも居ると言うのに、女の子がデカイ声で、なんてハシタナイ娘だ。……あぁ、向井さんだっけ。ウチの馬鹿娘が呼んでるみたいだから行ってやって。これ以上、店の中で騒がれちゃ、それこそ迷惑だからな」

「あぁ、すみません。じゃあ、少しお邪魔させて頂きますね」


優しいお父さんには、スマイル、スマイル♪


けどウッチーって、あれだね。

運動部なだけに、声が本当に大きいね。



「向井さ~~~ん!!もぉお父さんに構ってないで、早く勉強しよぉよ。解らない所が一杯有るんだから!!ゆっくりしてる時間なんて無いって!!」

「あぁゴメン、ゴメン。今行くね。それじゃあ、お邪魔します」


此処で再度、笑顔笑顔。


人との付き合いで、笑顔は好感度アップを計れる最大の武器。

これを使わない手はないですからねぇ。

だって誰であろうと、好印象を持って貰った方がなにかと得なんだも~~ん♪


因みにですけど、こんな私を見て性悪だとか思わない様に……


まぁ、言わずと知れた性悪なんですけどね……



「どこの娘さんかは知らんが、ウチの馬鹿娘と交換してくれないかな……」


なんか言いましたか、ウッチーパパ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


一見すると今回のお話は、なんの意味も無い様に見えるかもしれませんが。

こう言う細かい部分から人間関係を築き上げて行けば、より相手の好感度を得れると言う例として挙げさせて頂きました♪


人間関係は、こう言う部分蓄積があればこそ成り立ちますし。

なにより、相手の両親から好感度を得たら、今後はウェルカムモードで迎えて貰えますしね(笑)


さてさて、そんな中。

漸く次回からは勉強モードに入って行きたいと思いますので。

また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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