空洞一家の日常

ノーネーム

第1話 インフィニティ・シスター

朝、私は目覚める。外では、盛んに鳥が鳴いている。

今日も一日の始まりだ。部屋を出て、階下に向かう。

洗面所で顔を洗ってうがいをする。台所に行く。

「おはよう」

私は家族に声をかける。

「おはよう」

母が答える。

「おお、おはよう」

父が答える。

さぁ、席につ…

「おはよう」

その時…見知らぬ誰かが、私の挨拶に答えた。

背後を振り返る。そこには、見知らぬ顔の女の子が立っていた。

「誰…?」

「?、何言ってんの、お姉ちゃん。」

「お姉ちゃん?」

…私に妹はいないはずだが。

「お母さん、この子誰?」

母に問う。すると母は、

「あんた何言ってんの、貴子じゃない。妹の、貴子。」

「貴子?」

「おい、寝ぼけてるんじゃないか?ちゃんと顔洗ったか?」

父が言う。いや、そんな馬鹿な。

「ほら、二人とも席についた。早くご飯食べちゃいなさい。」

「は~い。」

はい、じゃない…!誰なのあんたは!?

しかし、大人しく席につく。

「いただきまーす。」

「いただき、ます。」

食事が始まる。私は食べながら‘‘妹‘‘の顔を観察する。

両親と似ているようで似ていない、しかし、その逆でもある。

なんとも捉えどころのない顔。私は妹に質問をしてみる。

「貴子、一昨日、家族でどこ行ったか覚えてる?」

「うん。覚えてるよ。○○水族館!」

「…そうだよ。」

なぜ、それを知っている。こんな子と行った覚えはない。

「アザラシ、かわいかったよね。」

「…うん。」

その後、ご飯を終えた私は、いつものように中学に登校する。

中学にて。

「おはよー、貴子。」

「おっはよー!恵ちゃん!」

「おはよう、おはよう、おはよう」

妹の周りには、人だかりが出来ている。妹はクラスの人気者のようだ。

「…」

階段を登る。私に声を掛ける人間は一人もいない。…私は唇を噛んだ。

放課後。体育館裏。昼休みに、放課後、ここに来いと私は後輩に呼び出されていた。

「用って何?」

私は、密かに心を躍らせていた。この後輩に惹かれるものはなかったが、

この私が告白される…かも。と、思うと。

「先輩、」

胸が高鳴る。

「これ、先輩から貴子ちゃんに渡してもらえませんか?」

「は?」

それは、恋文だった。

「…」

ひと時、静寂が流れる。

「あんたが直接渡したら?」

「え?」

「こんなくだらないことで呼び出さないで。じゃっ。」

私は踵を返した。頭の中は怒りで満ちている。

グラウンドを横切って帰ると、妹がラケットを振って、高くスマッシュを放っていた。

周囲からは歓声が上がっている。

自宅に帰る。

「おかえりなさい。」

「おかえりー。」

母が答える。妹のいない、今のうちに聞いておかねば。

「ねぇ、お母さん。私に妹がいるなんて、なんかの冗談だよね。

朝からみんなで私を騙してるんでしょ?」

「…」

と、母の顔が硬直した。台所で料理をしている母の目が、虚空を見つめだす。

「お母、さん…?」

「貴子はいるんです。その事実は火を見るよりも明らかなんです。」

「…!?」

その時、玄関が開いた。

「おかえり~。お母さん、なんか飲み物ないー?疲れた~。」

「おかえり。手、洗ってからね。」

「あ…あ…」

私はなにか空恐ろしくなって、部屋へ駆け込んだ。

夜。夕食の時間になっても、私は降りない。

「なに、あんた夕飯いらないの~?」

「うん、お腹空いてないから、いい…ごめんね」

「そう。」

階下では、両親と妹の賑やかな談笑が聞こえる。

「そうか、またテストの結果、学校一位か~。お祝いしなくちゃな。ははは。」

「私、頑張ったんだよ~。」

「えらいえらい。」

…なんなのだ、あいつは。しばらくして、父は風呂に入り、

母は夕食の片付けをしている頃。

二階へ上がってくる足音が聞こえてきた。

「ひっ…!」

部屋のドアが僅かに開かれる。オレンジ色の光が、部屋に差し込む。

「お姉ちゃん。」

「なに、なんなのあんた。」

私は震えている。‘‘妹‘‘はくすり、と笑うと、

「馬鹿で愚図で無能なお姉ちゃん。」

と一言だけ放って扉を閉めた。私はカッとなって、妹を追いかけた。

振り返る妹の首に手を回し…

────鳥の鳴き声。

朝、私は目覚める。今日も一日の始まりだ。部屋を出て、階下に向かう。

洗面所で顔を洗ってうがいをする。台所に行く。

「おはよう」

私は家族に声をかける。

「おはよう」

母が答える。

「おお、おはよう」

父が答える。

嗚呼、やはり夢だったんだ。席につ…

「おはよう」

その時…見知らぬ誰かが、私の挨拶に答えた。

背後を振り返る。そこには、見知らぬ顔の女の子が立っていた。

「誰…?」

「?、何言ってんの、お姉ちゃん。」

「お姉ちゃん?」

…私に妹はいない。いないいないいない。

「お母さん、この子誰?」

母に問う。すると母は、

「あんた何言ってんの、妹の、‘‘咲子‘‘じゃない。」

私は卒倒した。

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