第12話 5人目の守護者

「あの…どちら様ですか?」


 本当の意味で尋ねる。

ここまで私はゲームでプレイしていない為に隠しキャラの名前は知らない。

フラグの立て方ももちろん知らない。

 基本的にゲームをする時は、攻略本などは見ないタイプの人間だからだ。


「あぁ、すまない。阿南智和と言う。守護者でアンタと同い年だ。」

「そうでしたか。自己紹介は省いても?」

「良い。神々から聞いている。」


 年齢層、主人公よりも高い人達ばかりだったんだなと思う。

…もう、その主人公もお役目御免になってしまったけど。

いや待て。あの子、修行らしきことしていただんだろうか。

 感傷に浸ろうとしたところで思い直す。

修行している身だからこそわかるのだが、多分していなかった。

 したところで霊力が戻るわけでもないとは思うけど。

あの子は、努力の方向性を間違えたんだろうな。

あまり同情はできないけれど、自分はそうならないようにしないと。

 そう自分を律した。


「あまり嬉しそうじゃないな。俺たちが守護するというのに。」

「これで嬉しかったら人格破綻していませんか。」

「それもそうか。俺の家は分家だからあまり顔を出さないのが通例なんだがな。翔吾の奴が守護者として使えない以上、出てくるしかなかった。」

「そんな事情があったのですか。」

「あぁ。南雲家の分家に当たる。」


 阿南って名前からして南雲家に関係しているとは思っていたが、そうだったらしい。

ゲームをしていた時から気がついていたことだが、守護者の苗字は東西南北を指している。

その理由まではプレイ出来ていなかったのでわからない。

 これから知っていくのだと思う。

いや、知らなくてはならないだろう。

神代の巫女として。


「改めてご挨拶すると思いますが、皆さんにはお世話になります。」

「…最初から、もみじじゃなくてアンタが来てくれれば良かったのにな。なら、翔吾もあんな風になることはなかっただろうに。」

「それはあり得ないことですよ。」


 あの謎の助けてと言う懇願する声はきっと。

世界そのものか、それか本物のもみじちゃんの声だったのだろう。

私はそれに導かれて来た。

 彼の言うような風には出来ない。


「余所者なのに現実主義者か。」

「そうですよ。気に障りましたか?」

「いいや。いっそ見ていて清々しい。」


 そう言って彼は微笑を浮かべた。

少しだけ頬が熱くなるのがわかる。

別に恋に落ちたわけでもなく、顔が良すぎて。

 それを意識しているのか分からないけど、存分に活かして笑うものだから。

特筆特徴のない私には刺激が強すぎた。

イケメンってある意味罪なのかもしれない。

 私は一つ学習をした。


「ここは冷える。早く屋敷に戻れよ、我が主。」


そう言い残して、彼はその場を去った。

その後ろ姿がどうしてか、凛としているように私には見えた。




 彼の言う通り、私は屋敷の与えられた自室に戻ることにした。

まだ、北山くんは居るらしいがもう関係のないことだ。

 赤い鳥の神様が私を待っていた。


「あ奴ら、終わったのう。」

「まるで人生終了みたいに言うんですね。」

「そうだろう。翔吾は守護者の資格を剥奪され、もみじの本性は暴かれたのだからな。」

「剥奪ですか。」

「そうだ。北山家としては恥ずべきことだな。」


 彼ら、守護者の過去は知らないけど家に縛られていたことはわかる。

その家の者から批判されるのは辛いことだろう。

でも、それを引き起こしたのは彼ら。

 同情の余地はない。


「明日から忙しくなるぞ。神代の巫女よ。」

「そうですか。自分のできることをするだけですよ。」


 時間を見ればもう夕食の時間が過ぎていた。

修行はかなりハードなのでしっかり食事を摂らねば持たない。

私は厨へお手伝いさんに声をかけに行った。

 彼女たちはもう夕食を済ませていたようで、後は私たち3人だけだったようだ。

作ってもらっていた夕食を頂くことにした。

 久しぶりに食べた自分ではない人の手間暇がかかったご飯は、とても美味しいものだった。




翌日。


神代神社には守護者たちが集まっていた。

北山くんを除いてだ。


「我ら守護者、小鳥遊紅葉様に仕える所存にございます。」


リーダーである南雲さんが代表してそう私に言った。

守護者達にも認められた私は晴れてと言うべきなのか。


『神代の巫女』になった。


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