元から霊感がある私が乙女ゲームに異世界転移してしまった

天羽ヒフミ

プロローグ


 幼い頃から私は幽霊が見えたりする体質だった。他にも様々なことを感じ取れたりするんだけど割愛。

 それを霊感だと知ったのは母にそのことを言ってから。

母親も実は視える体質の人間でそれを受け継いだらしい。


『決して誰にも言ってはいけないよ。』


今でもその言葉を忠実に守り続けている。





 私が好きなものはゲーム。ジャンルは乙女ゲームだ。

和風ものが1番の好み。もう和風だったらパケ買いしてしまうくらいに好きなジャンルだ。

 社会人となって数年。自分のストレス発散方法はこの乙女ゲームをやりこむということだった。

 色々なジャンルを試してみたけど、1番自分には和風が合っているみたいで季節が秋なんてゲームは最高だと思ってる。

 紅葉は好きだ。その中でも特に好きなのがもみじ。

あの独特な緋色が秋そのものの季節を示しているかのようでとても綺麗だと思う。

 だから毎年、紅葉スポットに観に行くのが恒例行事になっている。


「あれ、新作出てるじゃん。」


 明日はようやくの休み。雑誌でゲーム情報はチェックしていたのだがこのゲームのことは書かれていなかったと思う。

 仕事帰り、ゲームショップに寄ってみると見たことがない乙女ゲームが販売されていた。


タイトル『神代神社の巫女』


 手にとってパッケージを眺めてみる。主人公ならび、攻略キャラと思われるイケメン男子たちはモロ好みだった。

そして何より季節が秋という私好みの和風っぽいゲームだ。

 説明も何も見ていないけどこれはパケ買いかな!

そう興奮しながら買い物かごにサンプルを入れた。

 他にも目ぼしいものがないか、しばらくの間店の中で物色することにした。


 30分くらいは滞在していただろうか。最初にパケ買いすることにしたゲーム以外に目ぼしいものはなかった。

パッケージの裏に書いてあるであろう内容の説明はまだ見ていない。

 ちょっと適当に買いすぎたかもしれない。

そんなことを思ったが自分が稼いだお金だしいいや、と半ば開き直ることにした。

 アパートに帰宅すると、着替えてサクッと食べれる夕食を作ることにする。

 早く買ってきたゲームをプレイしたいからだ。ガッツリのものなんて食べている余裕はない。

簡単に作った物を食してから洗い物を全て済ませて、お風呂もついでに済ませてしまおうと考えた。

 後は寝るだけと身なりを整えて、楽しみにしていたゲームをゲーム機にソフトを入れて起動させた。

 タイトルを見ながらパッケージに書いてあるゲームの説明をここに来て初めて見てみる。

こんなことが書かれていた。長いので簡単にまとめるとこんな説明だ。



『伊吹童子を遥か昔から祀る村、伊吹村にはこんな伝説があった。

1000年後に世界を滅ぼす最悪の神『怨鬼神』が復活するという恐ろしい伝説が。

それを回避するためには先祖代々鍛えてきた巫女の守護者の力、そして神を鎮めることの出来る強力な巫女の力である。これはその守護者と突然世界を救う巫女にされながらも逃げずに戦うことを決めた少女と守護者との物語』


(思ってたよりも壮大なストーリーで少し戸惑っている。これ長いゲームかな。基本、乙女ゲームって長いけど。)


これは徹夜確定だな。

そう確信めいたものを感じながらプレイをスタートした。




 それから1週間は経った。

だが、まだゲームはクリア出来ていない。

 仕事があるからというのもあるが、ゲームの内容が説明よりもかなり濃いものに仕上がっているのだ。

 なのでクリアに苦戦している。だが、面白い内容ということは間違いないので仕事にも負けずにクリアを目指したいと思う。

 そう思いながらようやくの休みをもぎ取った私は今日もアパートに帰宅。

もはやルーティンと化しているゲームへの準備を整えていざ現実世界とおさらば。

 内容も濃い故に長いゲームだが、ストレス発散にはもってこい。

今日も徹夜してゲームをする。だが、画面が突然固まった。


(あれ?コントローラー、操作できない。進まないんだけど。)


もしやここに来てゲーム機が故障か?と真っ青な顔になったがどうにも違うらしい。

セーブはしていないので電源を落とすことは躊躇われる。

どうしようか。そう思い悩んでいると、画面から声が聞こえた。



「助けて。」



そんな、懇願する声がしたかと思った次の瞬間──。

私は謎の光に包まれて、眩しくて目を閉じた。




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