第4話
そして花火が見えそうなところに向かうが、どこに行っても人人人でどこもそう簡単には見えそうにない。そんな状況にうんざりしながら、探していると、どんっ、とひときわ大きい音が鳴った。
「あ、花火始まっちゃった」
「あっちのほうで見えるよ!」
そういってまなが興奮気味に走り出す。そんな様子を見て、すごく好感を持つ。花火を見てここまではしゃいでくれる子と一緒にいるのはとても楽しい。純粋にすれていない子供の無邪気さを感じられる子はとてもいい子だと思う。
「すごい、きれいだね」
「確かにすごいね、でもちょっと見にくいね」
「あそこ人いるけど見えるのかなあ」
「前まで行くか」
「行きたいな」
そうして人が集まっているところに向かっていき、人の中に突っ込むことにする。後ろをみてついてくることが出来ているのを確認して少しずつ前へと進んでいく。たぶん迷惑なことをしているのだろうし、マナー違反なのだろうが、そもそもただの歩道で見るの自体がだめなことだし、仕方ないと納得させどんどん前に進んでいく。そうして進んだ先では先ほどまでよりかはかなりきれいに花火が見えたが、まだまだビルで遮られてしまっていて見えない花火も多くあった。
「結構さっきよりはきれいに見えるけどちょっとビル邪魔やね」
「確かにそうだね、もうちょっと見えるとこないかな」
「このビルどれか勝手に登れるんじゃない?」
「行ってみようよ」
立ち並ぶビル群の中のビルのうち誰でも入れるものの中で花火が見えそうな位置にあるものを考えて登ることにした。しかし、そのためにはもう一度人混みの中をつっきらないといけないことに気づく。花火の時間も半分近くが過ぎ、かなり人が集まってきており動くのも難しいという状況なのではぐれずに出るのは難しいと思い、まなの手を握りそ進むことにした。
「じゃあこの中つっきるよ」
「わかった」
そう声をかけさっと手を握る。そのまま人の中をすいません、と言いながらどんどん進んでいく。人混みが嫌いなので1分にも満たない時間dbなのだろうが、かなり長く感じる時間が過ぎ、やっと抜け出すことができた。
「じゃああのあたりのビルの方向かおうか」
「そうだね」
とだけ返事が返ってき、そのまま歩みを進める。そうしてエスカレーターに辿り着きた止まっていると、後ろから
「汗やばいから」
と声が聞こえてくる。そこで、少しだけ手を引っ張るつもりが人混みを出た後も手を握ってしまっていたことに気付く。少し恥ずかしいのでまなは自分の汗を気にしているのだろうということに気付いたが、
「あ、ごめん汗拭くわ」
と言い自分の手を服に擦る。すると、私の汗が、と返ってくるので全然汗かいてないkということを伝える。すると、恥ずかしそうに、よかった、とこぼす。
そうして少し変な雰囲気になってしまったのを誤魔化すように僕は上を見上げ、このビルから見えるかなあと独り言のように言う。そしてエレベーターに入りそのまま最上階のおご飯屋が入っているフロアへと向かう。そして最上階まで着くが、大学生には相応しくないようなおしゃれな雰囲気の高そうな店ばかりで、入る時は躊躇われる。幾らか僕みたいな庶民でも入ることができるような店はあったが、花火が見える方向ではないので諦めることにする。
そして、最上階から微かに見える花火と、音と夜景を楽しみながら記念に写真を撮ることにした。僕は写真が嫌いなのだが、女の子は写真が好きだということは知っているので文句を言わずに付き合う。
写真は嫌いだが、まなが自分とのデートを思い出として写真に残そうとしていることはうれしい。本人がどう思っているのかわからないことではあるが、少なからずよく思っている人ではないとそんな風に二人の写真を残したりしないだろう。
「自撮りとか普段からするの?」
「よくするよー、まあ女子だからねえ」
「女子ほんとによく写真撮るよねえ、僕ほんとにスマホを取り出すという脳みそすらない」
「見てたらわかるよ、ご飯の写真撮ったり撮らなかったりだもんね」
「ばれた? 僕も写真残したいけどつい食べちゃうんだよね」
写真をとった勢いで写真の話をしていると、自分が写真を全くとらないのがばれてしまう。どうやらご飯の写真も撮らないことに気づかれてしまったようで、少し恥ずかしさを覚える。それと同時に人のことをよく観察しているんだなということに気づき、面白さを感じる。まだ、二回目のデートでご飯を食べたのも数えるほどしかないにもかかわらず、そこに気づくのもすごいが、僕もよくそこまで写真を撮らなかったものだ。
そうこうしているうちに花火がクライマックスを迎えているのか花火が上がるペースが一気に上がる。
「あ、たぶん花火終わりやな」
「確かに終わりっぽい雰囲気出てるね、クライマックスって感じ」
「でも花火ってクライマックスかなと思ったらそっからもう一回みたいなあるよね、サビかと思ったらサビじゃなかったみたいなやつ」
「あーわかる、ちょっとうれしいやつ」
そんなことを話していたが、結局花火はそのままクライマックスを迎え、終わってしまったようだ。
「ほんとにおわっちゃったー」
「んね、結局全然花火見てないなあ」
「そうだね、一応花火見に来たはずなのに」
「都会だと花火見るのにも一苦労だねえ、アニメみたいに穴場あるんだよって山登るとかないもんね、山ないし」
「あれちょっとあこがれるんだよね、したことある?」
「ないよ、実際田舎って言ってもみたいなところあるしなあ、がんばって探せばあるんじゃないかなあ、僕はそもそもそんなとこ探さなくても見えたから」
「ここもこの辺のホテルとかレストラン予約したら見えるのだろうね」
「どんくらいすんのやろうな、僕には払えんぐらい高そうなことだけはわかる」
「大学生お金ないもんね」
花火の話をしていたはずなのにすぐに話が逸れているのが僕たちらしいと思う。普段のメッセージのやり取りも全然真っ直ぐには会話は進まない上に、関係ない話をたくさんしているせいで話題が5、6個あるまま何回も別の話題についてのメッセージを送っている。一気に5個や10個もメッセージがくるので、まるで連絡しまくるメンヘラ彼女と付き合っている気分になる。
そんなことを考えながらも会話は続く。結局花火を見に来たにもかかわらず、ほとんど見ることはできず、関係のない漫画の話をしている。そして、会話が落ち着いたタイミングで前回から気になっていたことを聞いてみることにした。
「全然男とデートとかしたことないって言ってたけどデートしてみてどう?」
「え、それいうの恥ずかしいんだけど、あとでラインで言うからそれでいい?」
「確かに感想言うの恥ずかしいか、じゃあ教えてねー」
「そっちこそどうなん?」
「僕はめっちゃ楽しんでるよ。話も面白いし、ネットで人と会うのちょっとびびってたけどすごいいい子だしね。この言い方よくないけど全然顔かわいいしね」
「う、すごいはっきり言うね。私もめっちゃびびってたなあ。顔かわいいって言ってんの純だけだよ、変だねえ」
デートの感想が気になっていたが、おそらく思ったより高評価な雰囲気があるので、よかった。このまま次のデートぐらいで告白をしようと考える。
結局集合が遅かったこともあり、適当な話をしているといい時間になったので帰ることにする。お互いが分かれる駅が近いのですぐに向かっていると、別の駅のほうが便利じゃないかと聞かれる。確かに、少しだけ離れた駅を使うと乗り換えの場所が変わり便利だが、
「一緒に居たいし大して変わんないからこっちつかうよー」
とだけ言ってそのまま歩き出す。そして改札内に入ると、僕が使う電車がちょうどきていたので、あわただしく、あれに乗りたいから帰ることと、今日は楽しかったということ、そしてありがとうとだけ伝え電車のほうへと向かう。
そのまま電車に乗ると、すぐに電車は発車し、少し車両を移るとなんとか座れそうだったので座り、もう一度楽しかったと連絡をする。そうして適当に音楽を聴きながらネット記事を見たり、連絡の返信をしたりして時間をつぶす。そのまま家につき、適当に家事など作業を終わらせる。そうしていると、帰りが遅かったこともあり日付を超えてしまっている。スマホを見ると、まなから連絡が来ている。
「今日は楽しかったー、会ってくれてありがとー、遠かったでしょ?」
「こちらこそ楽しかった!ありがとねー、ぜんぜん遠いのはいいんだよ暇だから」
「ならよかったー」
「あ、そうそうデートはどうでしたか?」
「あ、覚えてたんだ、それ聞いちゃうかあ」
「気になるのでおしえてつかーさい」
正直自分は方向音痴なので、きれいにエスコートできていたわけではないので、よく思っているのか気になる。話は絶えずできていたし、雰囲気も悪くなかったので評価は低くはないだろうが、高いのだろうかと思い緊張しながら見ていると既読がつく。そのまま数秒待つと、返信が返ってくる。
「えーと、前の時もそうだけど緊張したし、どきどきしました」
「うれしいな、どういうときどきどきするの?」
「えーそれ聞いちゃう?恥ずかしいんだけど」
「教えてほしいなあ」
「手つないでくれた時です」
「あーあれかあ、僕もめっちゃ緊張したなあ」
「その割に慣れてそうだったけど?笑」
「あんな少女漫画みたいなこと慣れてる奴いたらやばいだろ」
そう軽口をたたくが、内心あそこまで恥ずかしいことをしたおかげでどきどきさせられたことを喜ぶ。正直のたうち回りたいぐらいには恥ずかしいが、その甲斐はあったといっていいだろう。
「確かに笑 でもいろんな人にあんなことしてるのかなっておもっちゃったみんな勘違いしちゃうよ」
勘違いしてくれるのならうれしいが、僕がしても嫌われることはあれ、勘違いされることは少ないと思うので、あまり浮かれずに平静を心がける。
「したことないよ笑 さすがに恥ずかしすぎだよ笑 それに僕がしても誰も勘違いしないさ」
「えーほんとかなあ 勘違いするんだってよくないよ」
「ほんとだってば 勘違いなら僕したことあるなあ」
「それ勘違いじゃないよ」
「いや勘違いだったよ、その子彼氏いたし」
「ん、私のことじゃないのね」
「ちがうよー」
これはどういう意味なのだろうか。あまりにも自然な流れだったが、これはもはや告白なのではないだろうか。さすがに僕自身ここまでされて自分のことを好きじゃないと思うのも難しいので、まなも自分のことを好きなことを自覚する。そうして動揺をしている間にも時間は経っているので、そろそろ寝るとの連絡が来る。それに対し、おやすみと返し、眠りにつく。自分のことをおそらくすいてくれているのだろうという幸福感に包まれながら、人混みにた疲労もあり、すぐに眠りに落ちた。
そうして二回目のデートが終わった。
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