第3話

 デートが終わり、目が覚めると昨日寝る前に恥ずかしい質問をしてしまったことに気づく。いくら楽しかったとはいえがっつきすぎたかもしれない。もし微妙な反応だった場合あきらめるしかないと思いスマホを見る。

 「結構予定埋まっちゃってるしテストもあるから今月は厳しいけど来月とかならいける」

 まあ悪くはない反応なのかもしれない。僕も今回大学に入って初めてテストなのもあり、正直勉強する時間を取りたいから、今月会わないというのは賢明な判断かもしれない。なので、テスト終わりにある花火大会に行かないかと誘うことにする。すると、かなり早く返事が来る。

 「花火行きたい!一緒に行こ」

 そうして花火大会に行くことが決まった。マッチングアプリで出会った人とはいえ一度は会っており、少しずつお互いのこともわかり始めている状態で、花火大会はかなりいいデートプランなのではないかと思う。僕が地元ではほとんど人混みというのがなかったので、人混みがかなり苦手なことを我慢すればうまくやればかなりいいデートになると思う。

 「僕の地元ではふらーっといけば花火見えるところあったんだけどこの辺だとどういうのが正解なんかね?

東京なら隅田川とかでめちゃんこ人来る花火大会してるよね?」

 「うーん、とりあえず駅集合でそのあと考えよ。たぶん人多すぎて朝から場所取りとかしないと無理だから普通に行くのはあきらめたほうがいい」 

 「そうなんね、地元では考えられなかったわ、まじで始まる10分前とかにふらっと空き地行って見るか家で見るので十分行けた。二階建てなのに全然見えたね」

 「こっちでは絶対無理だねえ」

 今日大学で休み時間などに少しずつ連絡をしているとこんな風に次回のデートが決まった。とてもギャップを感じるが、予想通りの状況になるということがわかったので、改めて都会の人の多さに辟易する。

 今日はそんな風にデートの予定が大体決まったところで大学が終わった。僕は少し特殊な学部でほとんど自分で時間割を選べないので今日みたいに5限まである日ができてしまう。正直今から自分で料理をするのはめんどくさいので、適当に友達を誘って学食に行くことにする。そう思って友達に声をかけようとすると、すでに学食に行こうとしていたようだ。そのまま僕も行くわ、とだけ言って一緒に行くことにする。適当にあまり変わり映えしないメニューを注文し、昼間ほど人がいない学食では大人数が座れるスペースもすぐに見つかりそこへと向かう。そこで、テストがやばい、という話から始まり、夏休み何をするのか、という話などいろいろな話に花を咲かせる。バイトをしている人とサークルに行く人がどうにも多いようだ。

 そうしていると、またもまなから連絡が来る。人数が多く、また食べるのが早い自分だけが食べ終わっている状況なので、少しスマホを見て確認すると、いつも通りのくだらない話だった。デートは時間と集合場所が完全に決まっているので、またこうしてくだらない話が再開したのだ。正直この時間を楽しみにしてる自分がいるので、デートした後も続いてくれてよかったと思っている。そうして、さすがにすぐに返すのは気持ち悪がられるかと思い、少しあけることにする。そんな風に話をしているといい時間になり、帰ることにした。そして家に帰り一息ついた後連絡を返す。ふと思い、僕がかなり返信が早いが合わせて遅くしたほうがいいか尋ねることにした。そうすると、

 「純と話すの楽しいからはやくていいよー」

 そう返ってきた。かなりうれしいことを言ってくれるが、今よりも早いので少し心配になり再度、

 「今よりもっと早いよ、返信の八割は一分以内に返せる」

 と異常な速度なことを伝えると、少しして

 「楽しいからいいけど心配だからデジタルデトックスしたほうがいいよ笑」

 そう返ってきた。そんなことは自分でもわかっているので暇人だから仕方ないねとだけ返し、今日大学であった出来事などを共有する。お互い一人暮らしなせいで家事などしなければならず、色々しているともう日付を超えてしまっていた。そろそろ寝ないとな、と考えていると明日が一限だから寝ると連絡が来る。ちょうどいいタイミングなのでおやすみとだけ送り僕も寝ることにした。

 そこからは少しだけ遊んだりしながら勉強や課題をしてテストまでの期間を過ごすこととなった。その間も連絡は取っていたが、頻繁に遊びに行っていて少し心配になる。ただ、僕が理系でまなが文系なことを考えると、そうなることも必然なのかもしれない。おそらく単位は取るだろうと思い、勉強しなくていいの、と聞いてみる程度にとどめる。

 そして迎えたテスト期間、僕は一つだけかなり重いテストがあり、それに勉強時間のほとんどを費やしていたので、それ以外のテストは一夜漬けか、一切勉強していない状況だ。

 しかし、周りの人間もそんな奴らばかりで、

 「いけそう?」

 「なにもやってない」

 というような話をよくしている。しかし、この大学は全国の勉強をしてきた学生が集まる大学なのだ。高校時代にもよくいるような、勉強していないといって実はしているというようなことを、勉強を本当にしていないと勘違いしている人の集まりなのだ。まなは高校時代受験勉強も高3の遅くから始めていたみたいだが、そんな人間は僕の周りにはまれで、高校時代は自称進学校だったこともあり、勉強している人間ばかりだったし、大学に入ってからもかなり勉強してきていた人間が多い。そんな人間のしてないはあてにならないと思いながら全力を尽くす。

 そうして一週間テストを受け終わった後の感覚として、単位は落としていないが、GPAは高くないだろうと思わされるような出来だった。とりあえず落単や、追試の心配はほとんどしなくてよさそうなので、安心して花火大会に向かうことにする。お互い、浴衣は持っていないので私服で行くことになったが、少しシルエットが浴衣に見えるようなオーバーサイズの薄い上着を薄手のシャツの上に羽織ることに決めた。また、せっかくなので、近々行く予定だった美容院の予約をこのデートの前に合わせて取り、髪の毛を染め直すことにした。彼女は青が好きなので、ブルーブラウンという暗めの青にそめて向かうことにする。

 この辺りでしている花火大会はまなの住む県なので、再びそちらへ向かうことになる。40分ぐらいでいけるのは本当に楽だ。電車内でどうするか多少連絡をし、待ち合わせ場所や、その後どこに行くかなどを決める。

 そして、駅について電車を降り待ち合わせ場所に向かおうとするが、案の定迷子になってしまう。もともと地元にいた時から方向音痴ではあったが、こちらにきて駅が複雑になった影響で迷子になることが増えた。しかし、18年間も田舎ですら迷子になっていた男が今さらどうこうできるとも思えないので、ひとまずマップを見ながら時間には間に合うように急いで向かう。幸い、性格的な問題でいつも20分前にはつくように出発しているので、今日も時間には余裕がある、そうしてぎりぎり間に合い向かうことができた。

 数分待つと、時間通りにまながきているのが見えた。イヤホンを外しながら、久しぶり、と声をかける。そして花火が始まるまで時間があるので先にご飯を食べることにする。夜なので、値段がかなり上がるか、居酒屋かという二択になるので少しだけおしゃれなチェーン店を選び入ることにする。僕は地元になかったので、行ったことはないが存在は知っている程度だったが、彼女は存在も知らなかったらしい。

 「結構おしゃれなとこなんやね」

 「ほんとに知らなかった、なかったって言ってたのに何で知ってるの?」

 「なんでなんだろ、なんか全国チェーンでちょっと高めのちょいおしゃれな感じらしい的な、むしろ東京なんて無限にあるでしょうに何で知らないのさ」

 「カフェか回転ずししかいかなかったからさ」 

 「表参道のカフェとか馬鹿みたいに高くて震えるわ、絶対いかれへん、地元だったらカフェなんて1000円札握りしめていったらそれで飲み物プラス軽食食えるのに」

 「そういう世界で生きてきたからね、東京に戻りたいとは思わんかな、住めば都だけどね」

 「住めば都も何もすまなくても都なんだけどね、首都だし」

 「確かに言われてみれば都だね」

 そうして話をしながら何を注文するか決め、決まったか尋ねる。ちょっと待ってといわれてから少しして決まったといったので、店員さんを呼ぶことにした。そして店員さんに伝え、話を再開する。

 「テストどうやった?」

 「まあたぶん行けるんじゃないかな、というかまだテスト残ってるしね」

 「え、そうなん?それ遊んで大丈夫なん?」

 「まあ夜だけだし、一コマだからね」

 「まあ一コマなら余裕か、テスト出席さえすれば点とれるやつもあるしね、僕もテスト重かったわ」

 「そういえば言ってたね、一つめっちゃ重いやつがあるって、大丈夫だったの?」

 「まあたぶん単位を落としてはないかな、それにたぶん下駄履かせてくれるだろうし大丈夫大丈夫」

 「よかった」

 「というかそっちのほうが心配だわ、よく遊びに行って」

 「いやいや、そっちこそ一週間前とかに遊びにってたじゃん」

 「だって祭り行きたかったんだもん」

 そんな風に近況の報告をして食べていると、またもまなが僕がしゃべる間手を止めていることに気づく。

 「しゃべってる間手を止めてまでこっち見て聞いてくれるのうれしいけど、気にせんでええから食べや、僕だけ終わってまうて」

 「そういわれても癖なんだもん」

 そうして少ししてまながご飯を食べ終わり、花火がもうすぐ始まる時間帯になったので、外に出て、花火が見える場所を探すことにした。

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