昏き世界の物語

ろぶんすた=森

第1話 闇

 この世界には闇だけが広がっていた。

 この世界は二つの闇王が支配していた。

 一つは、深淵の闇、もう一つは混沌の闇。各々の闇は自身の闇を広げるため多くの争いを起こした。また、闇の勢力とは別に8つの種族がこの大地には住んでいるが、闇の前にはなす術もなく、闇から逃げ隠れするしかなかった。


 双方の闇の軍勢は拮抗し、深淵の闇と混沌の闇の一騎打ちにより勝敗を決める流れとなった。

 しかし、それは原初の闇を呼び起こしてしまった。原初の闇、それはあるもの達にとっての希望…、あるもの達にとっての絶望。


 「久しいの…深淵の闇よ。」

 「あぁ、生まれし時…以来か。」

 「そろそろ、決着をつけようか。どちらの闇がより暗いか。」

 「混沌に勝る闇は無い事を証明しよう。」


 二つの闇の塊は自身の闇から作り出した武器を構える。闇を刈り取る大鎌、闇を切り裂く大斧、双方の武器は一度傷を受ければ致命的な威力になる事は明白であった。


 「フェアに行こう。小狡い手など我々には似合わんからな。」

 「元よりその気だ。この大斧でその闇を切り裂いてやろう。」


 二つの闇は武器を振りかざした。暴と暴のぶつかり合い、ほとばしる強大な闇の残滓は大地に降り注ぐ。

 あまりにも強大な闇の残滓は弱き者を豹変させた。より凶暴により凶悪に。そして、時には命を奪った。


 「心地よい。心地よいな、混沌よ。」

 「そろそろ、決着をつけようか、深淵よ。」


 二人の武器に自身の闇をさらに纏わせる。終わりの時は近いようだ。闇の残滓が燦々と降り注ぎ、大地を蝕む。

 お互いの力を放出するかの様に闇が脈動する。そして、ひとときの静寂が訪れた時、二つの力がぶつかり合った。


 その力は一つの塊となり大きな力を生み出した。空間を蝕み、融和させる…。闇を飲み込み、虚無を生み出す。


 原初の闇…とてつもない力の塊が大地に落ちる。

 

 「あれは…なんだ…。我が力が…増大する。」

 「我にもわからない。なんなのだあの眩い力は。」


 その原初の闇はこの大地に一つの光をもたらした。

 二人の闇王はその力になす術がなかった。その力は二人の力を強める一方でその力は二人の存在を否定する。


 「深淵よ、我々は生み出してしまったのだ…原初の闇を。」

 「我らが生まれる前に存在した…あの伝承に残る光か…。」


 二人はその存在の厄介さを理解していた。闇は光から生まれ、光あるところには必ず闇がある、その伝承を今目の当たりににしているのだ。そして、光は闇の支配を受けない…。


 二人の闇王はその光に各々の力の限りをぶつけた。二人の闇王の力が枯れ果てるころ、その光は八つの力の残滓となり大地に降り注がれた。


 深淵と混沌の二人の闇王は力を使い果たし、一つの闇となり、闇の世界は統一された。


 しかし、光の残滓達は闇の支配を拒否した。

 

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